危うい少女
佐知が諦めたので白はそれ以上何も言わなかった。
隣を歩く佐知は村を振り返りながら何かを考えているようだ。
どうせ、またくだらない事を考えているんだろう。
考えたところでわかるわけもない。人が人から奪うことに意味などないのだから。
人の中には自身の欲望を知ったうえで、身を任す者もいるが、大抵の人間は何も考えずに反射的な欲望で動く。
無駄なことだと白は割り切っている。
それでも考えるのが人間として自然なことなのだろうか。
白と違って佐知は人間だ。同族を知りたいと思うのは当然かもしれない。
ただ何が理由であっても、起こったことが変わるわけではない。
佐知の過去に起こったことも、変わらない。
無理に知ろうとすれば、さらなる危険を招き寄せる。さっきの佐知のように、逃げるべき時に留まろうとして、危険に近づいてしまう。
止めさせようと白が口を出しても、佐知は迷う。
考えてもわからない疑問なんて捨ててしまえばいい。そう思っていても白は強制的に止めたりはしない。言いなりにしたい訳ではないから。
どのみち、白が傍にいるかぎり佐知が危険な目に遭うなんてありえない。
いざとなれば周りの全てを排除してでも白は佐知を守ると決めていた。




