特異
どうもみなさんスマイルさんです。
今回から新シリーズ『おかしい世界で一人だけ。』という小説を書かせていただきます!
よろしければ読んでいってくださいませ!!
おかしい世界で一人だけ。
◇■□◆特異◇■□◆
僕―――葉先粒子が違和感に気づいたのは、つい2ヶ月前のことだ。
いや、具体的に言えと言われれば、全くと言っていいほど、僕自身にも全くわからない。でも、何か、違う。
「なにか、おかしくありません?」
僕は、ちょっとしたことで知り合った、ちょっと変わった先輩に訊いた。
「何がおかしいのかしら? 具体的にどこがどうおかしいのかを言ってみなさいな」
具体的にと言われた。前述の通り、具体的にと言われても、僕にもわからない。
「いえ、具体的にはわかりませんが、何かがおかしくありませんか?」
僕は曖昧に、しかし、今できる極力の表現で言ってみた。
「私は特におかしいとは思わないわね。けれど、あなたが言うのなら、それはあながち間違ってはいないかもしれないわね」
相変わらず、変なことを言う先輩である。
今更ではあるが、先輩の名前は岬麗奈という。知り合ったきっかけは、ただ先輩がハンカチを落としていったので、僕が届けたことだ。それから、よく一緒にお話をすることがある。昼食を一緒に食べたりする。
違和感は消えないが、特に代わり映えのない日々を送っていたのは、つい3日ほど前までだ。
僕は3日前に、違和感の正体を知った。
3日前、とある人と知り合った。
その人は、とても不思議な人だった。職業は不明だが、僕がたまたま通った道に立っていた。見た目は、普通だった。どこまでも普通だった。ジーパンに白シャツという、ラフな格好だった。
「おいお前、気づいているだろう?」
開口一番、その人は僕にそう言った。心当たりはあったが、知らない人に迂闊に関わっちゃいけないと親から聞かされている。……普通に怖かった。
「なんの話でしょう?」
僕はできる限り平静を装い、問い返す。
「お前、『違和感』を抱いているだろう? しかしそれはなにがどうおかしいのかわからない、モヤモヤしたもの」
「知っているんですか?」
「あぁ」
興味深い。僕は訊いてみる。
「この『違和感』の正体を知っていますか?」
「知っている」
あっさりと答えた。これは教えてもらう意外、道はない。
「教えてください、『違和感』の正体を」
その人は、少し悩んだようだった。数秒後、
「いや、教えられない」
そう言った。
「なぜですか?」
「……今は教えられない」
今は。……つまり、時が来れば教えてくれるということだろう。しかし、僕は待てなかった。
「教えてください」
僕は凄む。しかし、その人は臆することなくこう言った。
「今お前が知ってしまうのはいけない。話しかけてしまったのは俺のミスだ。すまない、この話は忘れろ」
そんなことを言われても無理だ。
「いいから教えてください!」
「だからダメだと言っているだろう」
「なぜですか!?」
理由がわからないことには、引き下がれない。僕はもう3ヶ月ほど、悩んでいるのだ。ようやく見つけた手がかりなのだ。そう簡単には引き下がらない。
「なぜか……。俺は確かに、お前にその答えを教えるための存在だが、今はダメだ」
だが、とつなげて、
「どうしても今知りたいのなら、ヒントをやる」
今すぐ教えろ。
「岬麗奈」
「先輩がどうしたんですか?」
先輩が関係しているとは思えない。いや、でも、先輩と知り合ってからだった気がする。
「岬麗奈と、そして君自身」
僕自身? 何を言っているんだこの人は?
「まあ、どうしても早く聴きたければ、俺を探せばいい。面倒なら、自分で探れ。どちらにしろ、待っていれば俺は勝手にお前に教える」
勝手に教えてくれる? どういうつもりだ?
「待ってください、これだけ教えてください」
「ん? なんだ」
「あなたは誰ですか?」
当然だ。僕のことは相手に知れているのに僕が相手のことを知らないのは不公平だろう。
「今教えるとおかしなことになるから、ギリギリのラインで答えるぞ」
なんでもいいから早く教えろ。
「俺は―――俺たちは、お前の見方だ」
それだけでいい。それで僕は安心できた。まあ、時間をかければ解決するらしい。
「あ、あともう一つ」
その人は、顔の表情を少し暗くして、こう言った。
「あまり、時間がない。けど、急げばいいってものじゃない。慌てずに、ゆっくりと問題を解決させていくんだ」
今までの会話の全体を通して、意味がわからないが、それでいい。どうせ知る事になるなら、焦らずともよいだろう。
違和感の正体がわかったと前述したが、この時点ではまだ検討もついていなかった。ただ漠然と、僕と岬先輩が関係しているんだな程度だったが、あの人と会って数時間後、それは確信になった。
僕が自分の部屋でくつろいでいると、先輩からLINEが来た。
『今から少し会えないかしら?』
今から会う。まあ、できないこともないが、一度親に言わねばならないだろうか? まあ、言っておこう。
「どこでですか?」
『そうね、私の家に来てくれないかしら?』
「いいですよ」
僕はそれだけ送って、準備をする。カバンにいろいろ入れる。
夏真っ盛りなので、夜でも結構暑い。
親に一言だけ断ってから家を出る。
先輩の家は割と近いところにあるので、自転車で数分で着いた。
インターホンを鳴らす。先輩はすぐに出てくれた。
「あ、葉先です」
『あら葉先くん、早かったのね。どうぞ上がってくれてよろしくてよ』
お言葉に甘えて。
先輩の部屋には何度も入ったことはあるが、正直綺麗とは言えない。性格や言葉遣いは綺麗そのものだというのに、部屋はお世辞にも綺麗とは言えなかった。なんでも、片付けというものができないらしい。
「相変わらずですねぇ……。今日も片付けましょうか?」
僕がここに来る度、いつも片付けている。
一般男子から見たら、この光景は羨ましい限りなんだろうが、僕は特に何とも思わない。先輩、ちょっと、……どころか、すごく変わっている人だから。
「ええ、片付けてちょうだい。あなたが片付けている間に、用件を話すとするわ」
先輩は片付けを僕に全部押し付け、「私は手伝わないわよ」と言わんばかりにベッドに鎮座する。
僕は床に散らかった本を片付けることから手をつけ、
「それで、用件とは?」
単刀直入に訊く。別に無駄に溜める必要はない。
「そうね、私も単刀直入に言おうと思っていたわ」
先輩はそう言って、僕の顔を覗き込む。
「……なんですか?」
「いえ、あなた、前に何かおかしくないかと訊いてきたわね」
「そうですね、訊きましたね」
「そのおかしいものの正体まではわからないけれど、それらしきものを感じたわ」
奇遇だ。僕も今、それを感じた。
「あなたを今ここに読んだのは、それを言いたかったの。……ついでに片付けもしてもらおうと思っていたけれど、あなたが率先してやってくれるというじゃない。なんという優しく優秀な後輩なのかしら」
「……どうせ頼まれると思っただけなんですが」
まあ、どうだっていい。違和感を感じたのなら、それは聞いておきたい。
「単刀直入に言って、葉先くん、あなたと会ったとき―――あなたと一緒にいる時間に、違和感を感じたわ。なんというか……、よくわからないけれど」
「僕も同じです」
先輩と会っている時間だけ、違和感を覚える。その違和感が、何なのかわからないのだが。
「先輩、実は僕、数時間前に、ある人にこう言われました。『僕と先輩が一緒にいることによってその違和感が発生する』と。ただ、その人の名前はわかりませんし、今どこにいるのかもわかりません。ただ、僕の味方ではあるようですが。……あと、僕の味方は複数人いるみたいです」
『俺は―――俺たちは、お前の見方だ』
『俺たちは』つまり、その人は単体で動いているのではなく、複数で動いていることになる。
「待って、その人たちは、あなただけの味方であって、私の見方ではないということかしら?」
「多分、そういうことでしょう。あの人は―――あの人たちは、僕と先輩の両方を知っていたのですから、僕だけに限定して言ったということは、僕だけの味方ということになりますね」
おそらくは、そういうことだろう。
「その人たちは、何かを知っているようね」
「そうでしょうね」
僕と先輩は、しばらく逡巡した。
やはり、答えは出てこない。こうしている今も、僕と先輩の二人は、違和感を感じ続けている。もしかしたら、僕たち二人だけではないかもしれない。
そう考えた直後だった。
いきなり、先輩の近くにあった窓ガラスが、『外側からの衝撃で』粉砕された。
「先輩ッ!」
僕は先輩の腕を引き、窓から遠ざける。
ところで、先輩はエロイキャミソール姿だった。……どうでもよいが。
「手ェ上げろォッ!!」
外から、男の怒号が聞こえた。同時に、金属がぶつかり合うような音も聞こえた。
驚愕の色を貼り付けた先輩の視線は、窓を凝視していた。
僕も窓を見てみる。すると、懐中電灯がこちらを向いているのが目に入った。
「危ないっ!」
慌てて先輩の目元を覆い隠す。しかし、僕は間抜けにもバランスを崩して先輩の方へなだれ込んでしまった。
しかし、そんな状況に陥ったとしても、先輩は驚きはするものの、悲鳴は上げない。
自然と僕が先輩に覆いかぶさる形になってしまったが、わけのわからない状況で、そこまで意識できなかった。
「クソッ! よりにもよってここかよッ!?」
窓から飛び出した懐中電灯が点灯したとき、その後ろからもうひとりの男の声が聞こえた。どこかで、聞いたことのある声だ。
「下がってろ二人ともッ!」
声が聞こえたので、僕はそのまま先輩にかぶさるように、押し倒す姿勢から完全に仰向けに寝転ぶ。
直後、銃声とともに、「ゴアァッ!?」という、絶叫が聞こえた。
「大丈夫かッ!?」
この声、あの人か……?
割れた窓から、ぬっと顔を出したのは、予想通り、数時間前に会った、僕の味方であるあの人だった。
「どういうことですか、説明してください! いや、説明しろ!」
僕は珍しく、声を荒らげた。……ついでに口調も。
「まあ待て、説明する」
かくして、その人から告げられた事実は……。
「これは、未来から来た」
……ぶっ飛んでいると思ったが、どうやら事実のようだった。
どうもみなさんスマイルさんです。
今回から新シリーズ『おかしい世界で一人だけ。』という小説を書かせていただきます!
正直、戦闘ものを書きたかったのですが、私には才がないのでしょうか? まあ、それはどうだっていいのですが。今回のキーワードは『特異』なのですが、これはタイトルの『おかしい世界』っていう意味ではなく、『おかしな先輩』という意味です。正直ごめんなさい。おかしな先輩って、めちゃくちゃ書きたかったんです。私、そういう系のキャラって、妹キャラぐらい好きなんです。じゃあ妹キャラ出せって思うでしょう? でも戦闘ものが書きたいんです! ここから戦闘に繋げます。このシリーズが終わるまで、お付き合いいただけると幸いです。
それでは、このあたりで目を休ませてあげてください。
戦闘って、想像する分には簡単だけど、そもそもそこにたどり着くまでの物語が難しいです。