駆け抜けた通学路。
「はぁっ・・・はぁ・・・疲れた・・はぁ・・はぁ!」
桜実崎高校 一年 春
俺の名前は小谷海人。今、わけあって激走しているのだがそのわけは・・・・
学校に遅刻しかけている!
登校時間は8時まで。
俺が家を出たのは7時30分。
当然、登校時間まで30分も時間があるのだから遅れるはずがない。
でも学校に遅刻しかけている!
なぜなら、英語の提出物を家に忘れてしまったのだ。
10分前
俺の前を歩いていた同じ学校の女子生徒二人が何気ない会話をしていた。
部活、恋愛、テレビ、勉強などを話していた。
(その会話を後ろで盗み聞きしていた俺はすごく気持ちが悪いのだが・・・・・)
それはさておき、一方の女子生徒が呟いた。
「英語の勉強できた?」
「難しかったよ。でも前林先生、提出物出さなかったらすごく怒るから一応最後まで問題は解いたけどけど・・・」
その会話を聞いて俺は思った。
(えっ。俺英語の提出物持ってきたよね。)
俺はそっとカバンを開け恐る恐カバンの中を見る。
「オーマイガ〜〜!!」
思わず英語で言ってしまった。
顔が真っ青になった。
そう英語の提出物を忘れたのだ。
(別に提出物なんてわすれてもいいじゃん)
と思う人もいるだろうが、英語担当の先生の前林先生は
すごく怖い!
また、体はもはやゴリラなんじゃね、と思うくらいゴリゴリで頭は坊主・・・
完全な日本男児なのに英語の先生。
怒ると教卓を叩き、または黒板を叩き大きな声で
「あぁ!いまなんつった!?提出物を忘れただと!お前が今日出さないせいで、明日俺がお前の提出物をチェックしないといけなくなり、俺の仕事が増えるだろうが!!!」
と、いつも同じ台詞で言い、挙句の果てには軽い悪口まで説教の中にぶっこんでくる。
当然、言葉の暴力を言われた生徒は号泣してしまう。
(それって先生としてどうなんだ?笑)
それほど怖いんだ。
俺はすごく焦る。
そして
俺は体を反転させて家に向かって走り出した。
(俺の後ろを歩いていた生徒の目線がすごく気になるのだが……)
ようやく家に着き時間を見ると、
7時44分。
自分の部屋に入り英語のワークをカバンに入れ、ちょうど机の上にあった腕時計を手に取り靴を履いて再び学校まで走り出した。
7時53分。
俺が英語のワークを忘れたのを気づいた場所を通り過ぎた。
そこから学校までは約1200メートル。
俺は倒れそうになりながらも全速力で走る。
7時58分。
校門が見えてきた。
そして学校に入り、生徒玄関に靴を適当に入れ、二階にある教室まで駆け抜けた。
そして教室のドアを開けるとみんなが視線を送ってくる。
静寂
教室に入ると俺以外の生徒はほとんど座っていた。
俺も自分の席に座りてに持っていた腕時計を見ると、
7時59分。
「ふぅ〜。」
ギリギリ間に合った。
8時になってチャイムが鳴り、少しすると先生が来た。
その先生は前林先生ではなく、市岡先生だった。
そして市岡先生が教卓の前に立ち
「今日一日、前林先生は急病で休みになりました。なので今日は私が担任をやらせてもらいます。」
・・・・・・・・・・・・
「は?」
思わず声に出してしまった。
(前林しぃいいいぃいいいいいいぃいぃいいぃいぃぃぃ!!!!ふざけんなよてめぇこの野郎!俺が倒れそうになりながらも走ったあの時間を返せ!!!)
こうして小谷海人にとって初めての高校の春は満開に咲く桜と共に幕を開けた。