表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

【第2話】お気に召すまま -中編ー

なんか収まりきらず「中編」^^; すみません・・・

サクラサク



咲いたかどうかはともかく、私は県立S高校に無事入学、

入学するやいなや入学式もそこそこ


HRももどかしく、早速入部届けを出した。



どこに?


言わずもがな、「演劇部」に、だ。



まだ顔も名前も覚えていない担任に。

まだ顔も名前も覚えられていない担任に。



「うーん、演劇部かぁ。でもね」


貴女の意見は聞いていない。

私は自分の道を行くだけだ。


そして、入部届けが受理されるかどうかももう待ってるのももどかしく、

私は放課後、演劇部が活動している教室:視聴覚室(下調べ済み)へと足を走らせた。


ある程度覚悟はしていたが、がらりと教室のドアを開けるとそこには、


4人の先輩方。


4人、だけ。



まぁ、所謂「弱小演劇部」・・・

敬愛する島本和彦先生なら、


「逆境だぁああああ~!!!!!」


と叫んだろうが、



いやしかしそんなけいおん!チックな状況も私には関係ない。


でも、


4人の先輩(もちろん皆女性)・・・2年生2人、3年生2人の、

なんとも屈託のない笑顔を浮かべた可愛らしい先輩方は、


「入ってくれてありがとう!どんなジャンルの芝居が好きなの?」

「誰に影響受けた? つか?オリザ?野田??」

「とりあえず、あめんぼと外郎売ういろううりはできるよね?」

「スタニフラフスキー演劇メソッドって、今でも有効だと思う?」


と、


・・・え、すみません、日本語でお願いします。



まぁ、そんな【演劇オラオララッシュ】になんとかめげず、

この場の空気を凍りつかせるであろう次の言葉を

私はなんとか搾り出した。



「すみません!演劇は全く知りません、ど素人です!!でもでも・・・

大道具になりたいんです!! 大道具の仕事を・・・させてください!!」






え?






う、うーん。


やっぱり無茶振りだったかな。


普通なら役者さんを目指して入るし、先輩もなんちゃら演劇論なんて飛ばして


「ほら、マヤ!(仮名) そんなことでは姫川さん(仮名)には勝てませんことよ!!」


とかやりたかったんだろうな。



と、


お互い顔を見合す先輩方。


ふいっと

皆、口角が上がって、


ぷ、

ぷぷ、


ぷぅううぁわはっはっは~!!!!



・・・え?



「んとね、まぁ分かってるどうかはともかく」

「鎮香ちゃん、だっけ? 演劇・・・お芝居っていうのはね」

「役者だけでは当然できない作れない。大道具さんや」

「音響・照明・受付・制作・・・たくさんの裏方さんがいてこそ」

「いきなり裏方志望ってのは初めてだったけど」

「嬉しい。ほんと嬉しい」

「舞台のことはなんにも知らないって言ったけど」

「ううん、貴女はもう充分に知ってくれているみたい。だから」


【ようこそ!S校演劇部へ!!!】




は、

はは、


なんともどうだか、

私はとても・・・ありがたい位にとても、


この、なんちゃら演劇論とか分からないこと言う先輩方に

歓迎されてしまったらしい。


後で聞くところによると、

当然(?)ながら先輩方も、役者をやりながら


・音響:選曲、またその編集・SE(効果音)の選定

・照明:演出プランに則した明かり作り。それに伴う機材の選定、吊り込みの仕込み図作成。カラーフィルターの選別。

・その他、衣装作成、小道具製作、制作(宣伝チラシや当日パンフの作成。客席の組み方など)に加え、


もちろん、

「大道具」も。



全部、ぜーんぶ、この先輩方は役者もやりながら並行して分担してやっているのだ。



「す、すごいですね・・・てか、めちゃ大変ですよね」

「ん~~でも、好きでやってるし。好きじゃなきゃできないよw」


この「w」は、安っぽいつぶやきやSNSでよく見る「かっこわらい」ではなく、

私にとっては、本当に心から楽しんでる先輩方の気持ちが詰まった「w」だった。



「でも、私たちもまぁ所謂セット・・・大道具?てのは、作品によっては作ることもあるけど」

「うん、見ての通り弱小部だし予算もないし」

「ただ、ありがたいことにうちの部に支援してくれる、奇特な方がいらっしゃって」

「鎮香ちゃんも、大道具のことを習いたいなら、その人に聞くのが一番早いかも」


ほう、なんだその奇特な素敵な御仁は。


「この近所の、小さいけど結構有名な大道具の製作会社の社長さんで」

「なにかにつけて、うちの部に」



うらっしゃ~~っ!!!!!



と、突然!


勢い高く獣のようなうなり声と共に、

ぎゃぎゃぎゃ!と、

トラックが急ブレーキを踏む音が校内に響いた。


何事かと教室の窓から外を覗いてみれば、

ちょうどこの視聴覚教室の真下:教務員用駐車場に、


4t平ボディの、なんだか舞台セット(でも見た目は廃棄?てな様相)を満載にしたトラックが、ドリフトで(イニシャルはDではなかった)横付けされたところだった。


???という私の疑問をよそに、先輩方は嬉々として窓際に駆け寄り、

そのトラックの運転席から顔を出したおっさん・・・ うん、ほんとおっさん。


彼に向かって黄色い声を上げておのおのぶんぶんと手を振って歓迎の挨拶をした。


そして、そのトラックの運転席から銜えタバコでタオル鉢巻をした角刈りのおっさん、


いや、もとい、


いやもとわず、おっさんが顔を出して、こちらに満面の笑みを浮かべてこう叫んだのだ。



「まいど! 元気か?!娘っこ達よ!!!」


それに応えて、先輩方が笑顔で叫び返す。


「待ってました! 父ちゃん社長~~!!!」




これが、

このおっさん・・・父ちゃん社長との出会いが、


私にとっての


「神に祝福された」出会いだったのだ。




(予想以上に長くなったので、まだ続くw)


次回からここに、「舞台あるある」とかコネタを書こうかと思ってます。


例)

スケジュールがタイトで飯休憩もろくに取れなさそうなのでオニギリとか買い込んで臨んだ現場に限って。

制作「主催者さんからお弁当出てま~す!」


・・・先に言え。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ