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【第4話】じゃじゃ馬ならし -⑥ー

うーん、なかなか「じゃじゃ馬」が出てこないなw

もく


もくもくもく、と、



現場の空気は重いに重い。


横転した「ローリングタワー」の立て起こしと、破損したセットの復旧・手直しをする演出部の方々。


それとは、全く違う空間にでもなってるであろう、各セクション長の方々の


ミーティング



持ち込みスタッフ側からは、(当然)舞台監督さんと当事者の照明「なんなら」チーフさま。

当、そよかぜホールからは、舞台管理(機構操作)チーフの進行さんと、照明チーフの襟矢さん。


すごく、すごーーーく、重たい空気の中、


ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ



と、なんかしらの言葉が交わされている。


当然、今日きたばかりのひよっ子管理スタッフである、私:袖中静香(さりげに自己紹介)としては、


ただ、見守るしかない。待つしかない。


いつも寡黙な(予測)中入さんはともかく、流石のハイテンションクォリティ:出来さんまでもが


くーーー


っと、口を真一文字に結んで黙って見守っておられる。



あ、そうそう。


迷いに迷ったレセプショニストのモギー先輩は、客席近くにいた別のレセプショニストさんに無事に救出されて(?)ロビーへと帰っていきました。

心なしか、先輩は首根っこ捕まれてたように見えたのは気のせいか?



ともあれ、


舞台現場での「事故」というのは、本当にやっかいだ。


もちろん、人身でなかったことは幸いだ。

物損も軽微なら、持ち直せる。


これが、もし、


人身事故


または


物損(大破)


となると、最悪、



公演中止



という事態となる。



公演を提供する座組は元より、我々ホールサイドも、


いや、なによりこの公演を楽しみにしてチケットを買ってくれたお客様に対して


なんとも申し開きができない、残念で最悪な結果になってしまうのだ。



もくもくもく


重い重い重い



この、そよかぜホールの中ホールにいる、全ての「黒いヤツら」が、陰陰滅滅となっているなか、



と-とつに、


場違いなトーンの声が割り込んだ。



「おーおー! どした?! やってるかー!!」


そこにいた、黒いヤツらの全員の目がその声の方向に向く。



「真中統括・・・」


と、少し驚きつつも安堵の気持ちも篭った呟きをしたのが、進行チーフだった。



真中・・・  ああ!! 私を朝、置いてけぼりにした張本人!! むぐー



という、子供じみた恨みは一瞬だけにし(一瞬だけね)、私はこの、エコーズact3フリーズにやられた位に重た過ぎてどうしようもない空気を、一瞬にして変えたこの人に興味津々だった。


なぜなら、彼:真中統括さまが来た瞬間、進行チーフはじめ、管理スタッフ・・・出来さんや中入さんは元より、襟矢照明チーフにまでも


安堵


の空気が漂ったのだ。



真中心まなか しん舞台統括部長。


この「そよかぜホール」の、管理・技術スタッフを、それこそ「統括」する閣下。


しかし


ぱっと見た目も口調も、そんな「エライサン」な雰囲気は微塵も感じられない御仁だった。



ラフなチノパンにノータイのシャツ、ただ、上着はもちろん


ホールスタッフの証


「SOYOKAZE HALL」


のロゴの入った黒いジャンパーを羽織っておられる。



その、真中統括の


ゆるーい


口調が、現場の空気を「和らげた」のは、統括の天然の性格からか、さてもや「作戦」なのか



「ん~~、とりあえずやっちゃったね! ははは! まーやっちゃったもんは仕方ないね。で、どうなの?」


各セクションチーフが、各々現状報告をする。


にこにこと、恵比寿顔でそれを聞き入る真中統括。



(ひとり・聖おにいさんかよ!)



と心でツッコミながら、でも


この人ならば、なんとかしてくれるかもしれない



という、妙な期待感をもつようになって



「ん、では、舞台監督さん。いけるんだよね?」



と、柔らかくもぴしっとした今後の対応を確認する。さすが。



どんな仕事のどんな状況でも


ミスはあるものだし、ミスがあった場合に


それをとことん責めて貶めるのは、もうただのパワハラでしかない。


限られた時間、限られた空間、限られた資材で


何があっても、本番の


「幕をあけなければならない」


のが、私たち舞台スタッフの仕事だ。



そして、ここにおいてこの真中統括は


なにより建設的で前向きで、そして



ここにいる黒いヤツらのマイナスの空気を一気にプラスのモチベーションへと変えてしまったのだ!



そうか、これが父ちゃんが滅多に褒めない「漢:おとこ」、


真中統括さまであったか。



元々、大道具上がりの、バリバリの現場叩き上げの人であるとは聞いていた。



しかし


なんとも懐の深い人物であることか。


そうか、なので、


こんな過酷な現場でも、常に飄々としている進行チーフはじめここのスタッフも、


『トップにこの人がいるから!!』


という信頼と安心感で、生き生きと仕事が出来てるんだなぁ、と


納得



「さ、んじゃ、みんなよろしく頑張って! ご安全に!」


と言って、ふわっとジャンパーを翻してホールを去る真中統括。



ふわー、かーっこいいなぁ。



感慨に耽ってもせんない。すぐさま、今後の舞台復旧やスケジュール変更・・・

やることは山積みだ。


「さ、進行チーフ!! 私たちもやれることをやりましょう!!」


と、振り返ってみれば



チーフはじめ、スタッフ全員



【号泣】




・・・ジャンプかよ!!
















風呂敷を広げ過ぎてる様な気がしますが、

大丈夫


ちゃんと回収しますよ、たぶんw



【舞台あるある】

「客席と舞台の間には、目に見えない<ATフィールドがある>」


というのは、僕ら舞台スタッフの認識なのですが、一般利用者さまにはそれがないらしく

・本番中に客が勝手に舞台に上がる

・  ヾ 出演者が勝手に客席に下りる

これらの行為は、あんたらはなんも思わないでしょうが、僕らスタッフには

「とてつもなく恥ずかしい行為」なんです。

例えるなら、

まっぱで舞台に上がってる、位の認識ですよ。

ATフィールド、感じてください。

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