ツンデレっ娘
ツンデレっ娘のバレンタインが執筆したかっただけです!
とある高校の2年5組の放課後。帰りのHRが終わり生徒の大方が帰りの支度をしている。そんな中でただ一人、まだ帰りの支度をしていない男子がいた。
「あんた、帰らないの?」
窓側の一番後ろと言う絶好のポジションに座り窓の外を遠い目で見ている男子、藤塚 雅也に声を掛けたのは隣の席に座る黒髪ツインテールが特徴の高瀬 真帆。雅也と真帆は家が隣同士で昔から家族ぐるみの付き合いでとても気がしれている間柄だ。
「…帰るよ……帰るともさ」
「何その投げやりな感じは?」
窓の外を見ていた雅也は視線を真帆に戻す。そして、虚ろな目で真帆を見上げた。その姿を見た真帆は長い付き合いで一体何が彼に起こったのかが分かった。ついでに加えるなら今日と言う日は『バレンタイン』。
「はぁ〜。チョコの1つ、貰えなかったくらいで、そんなに落ち込む?どうせ、家に帰ればお母さんとお姉ちゃんから貰うんでしょ?ほら今ので2個もらえた」
「そんなの嫌だ!毎年、親チョコって悲しいじゃん」
子供のように駄々をこねる雅也に真帆はため息をつく。雅也は特に顔が悪いわけじゃないが良くもない、いわゆる普通だ。クラスの中を見回してみると女子からモテる男子が紙袋いっぱいにチョコを貰っていて『食べきれないよ』と笑いながら友達に話している所を真帆は見た。
「義理でも良いからさ」
「男って悲しい生き物なのね」
「真帆はもう友達に全部配り終えたんだろ?」
ほんの少しの希望があると思ったのか、全部という単語を強調して雅也は言う。そして、顔を机に突っ伏してしまった。そんな雅也に真帆は追い打ちをかけるように真実を話す。
「そうだね、ちゃんと配ったよ」
雅也の周りの空気が一瞬にして重くなった。そんな雅也を見下ろしたまま真帆は肩から下げていたサブバックの中から可愛くラッピングした生チョコを雅也の頭の隣に置く。
ーーコトッ
聞きなれない音が近くで聞こえた雅也は突っ伏していた顔を上げてラッピングした生チョコを見る。
「えっ!」
勢い良く、ラッピングした生チョコを手に取ると目を大きく見開いて口をパクパクさせながら真帆を見た。
「べ、別にあんたのために作った訳じゃないんだからねっ!義理よ、義理チョコ。本命と勘違いしないでよね」
それでも、雅也は嬉しかったのか椅子から立ち上がると真帆に純粋な笑みで礼を述べた。
「真帆っ義理でもありがとうな!ホワイトデーは楽しみにしとけよっ」
そのまま雅也は素早く帰りの支度をすると、軽い足取りで帰ってしまった。雅也が校門を出た所まで窓から見ていた真帆は誰にも聞かれないような声で呟く。
「本命だっての。バーカ」
その時の真帆の顔は恋する乙女のようにほんのりと紅く染まっていた。