めがみさまのにっき
☆月♪日 ☀︎
きょうはわたしのたんじょうびです。
プレゼントにわたしは「ちいさなおほしさま」をもらいました。
とてもかわいいです。
でもパパはいちばんやすいのにいいの?っていってました。
わたしはそれにチキュウとなまえをつけてあげました。
ジクをつけるときにすこしゆがんでしまってママにわらわれました。
さっそくおみずをあげるととてもよろこんでいるみたいでした。
わたしはチキュウにたまったおみずをウミとなづけました。
でもあつかったのでわたしのあせもまじっていてすこししおからかったです。
☆月○日 ☀︎
よくみるとチキュウにはちいさなおほしさまがついていました。
わたしはその子にツキとなまえをつけてあげました。
ツキはよろこんでチキュウのまわりをくるくるとまわりました。
☆月*日 ☀︎
おどろきです。
チキュウの色がかわりました。
きれいなみどりいろです。
おおきくなったっていうことかな。
☆月★日 ☁︎
チキュウにいきものがうまれました。
ママはおほしさまにいきものがうまれたらイチニンマエっていわれました。
イチニンマエってなんだろ。
☆月☆日 ☂
チキュウのいきものがおおきくなりました。
ママはそんなにおおきないきものはみたことがないらしいです。
てれびにしゃしんをとうこうしたら、りょこうけんをもらいました。
こんど、ユグロラシルってところにあそびにいきます。
☆月♠︎日 ☂
チキュウのおせわをわすれてたら、いつのまにかおおきないきものがいなくなってました。
かなしくてないていると、かわりにちいさないきものがうまれてました。
わたしはそのいきものにニンゲンとなまえをつけました。
こんどはしっぱいしないようにするからね。ニンゲン。
☆月❇︎日 ☀︎
いきなりじけんです。
わたしのいえのえあこんがこわれました。
あつくてチキュウがしんぱいだったので、れいぞうこでひなんさせてあげました。
これでだいじょぶだね。
☆月♬日 ☂
たいへんです。
まちがってチキュウをこおりのほうのれいぞうこにいれてしまってウミがこおってしまいました。
しんぱいになってチキュウをしらべてみるとニンゲンはぶじでした。
ほっとするとまたないてしまいました。
☆月▼日 ☀︎
ニンゲンがけんかをはじめました。わたしにはよくわかりません。
どうしておなじニンゲンなのにたたかうのかな。
パパもママもふしぎそうでした。
………………
………
✳︎月◎日 ☀︎
チキュウを育てはじめてからすっかり変わりました。
なので少し成長のスピードを遅らせることにしました。
チキュウは変わらず丸くて、かたむきながらクルクル回ってます。ツキもいっしょです。
ニンゲンはケーザイやシャカイをつくりました。でもあいかわらずおつむがよわいです。
あとよくわたしにおねがいをするニンゲンがふえました。「たからくじをあててほしい」「テストにごうかくさせてほしい」……どれもこれもおかねがかかるのでいやです。
とくによくわからないのは「好きなひととむすばれたい」でした。
好きがわたしにはよくわかりません。
✳︎月♣︎日 ☁︎
わたしはパパにたのんでチキュウにいかせてもらうことにしました。
いけるのはわたしだけだけど、キケンかもしれないのであんぜんなニホンというところにいくことにしました。
チキュウにつくとすこしへんなにおいがしました。それにとてもニンゲンからみられていました。
わたしはニンゲンと女神のふくがらちがうことにきがつくと、チキュウのふくやさんでかいものをしました。
とてもごわごわしていてへんなかんじでした。
✳︎月∇日 ☀︎
きょうもチキュウをさんぽしているとコウエンでエミという女の子に会いました。
みためはわたしよりもおねえさんだけど、もちろんわたしのほうがとてもおねえさんです。えっへん。
エミと仲良くなって、お話をきくと好きな人がいるっていってました。
わたしはエミに好きってなにってきくと笑顔でナデナデされました。やっぱりニンゲンはよくわからないです。
チキュウのことについてパパにきくと、いきものをつくるシステムがすこしダメになっていて、かんじょうがふあんていになっているらしいです。だから好きとかケンカとかしてたのかな。
✳︎月☆日 ☀︎
わたしがまたチキュウにいくと、女の子が大人になっていました。わたしと会うとエミはおどろいていました。女神っていうともっとおどろいてました。
げんきがないのでどうしたのってきくと好きな人にはことわられて、ひとりでオシゴトをしているらしいです。
だいじょうぶかきくと、まえと同じように笑顔でナデナデされました。ニンゲンはおもったよりもすごいいきものなのかもしれないです。
✳︎月◇日 ☀︎
わたしはまたチキュウにあそびにいきました。
…………
……
「んー、今日もいい天気だなー」
わたしはいつものこうえんにむかうと、そこにはこうえんはありませんでした。
「……んー?」
わたしがふしぎそうにしていると、エミがつえをもってこうえんだった場所をみていました。
「エミ! ひさしぶり!」
「!……女神ちゃん、ひさしぶりね」
「エミ、こうえんは?」
「……なくなっちゃった。かなしいけどしかたないね……」
エミのシワだらけの目はよくわからなかったけど、なんだか遠くを見てるようでした。
「女神ちゃん、少し散歩に付き合ってくれる?」
「いいよ!」
わたしはエミに連れられて、別のおおきなこうえんにいきました。
わたしはそこでエミに「クレープ」という食べ物をプレゼントしてもらいました。それはわたしの世界では食べられないとてもおいしいオヤツでした。
「……女神ちゃん、人間の作ったものだけど口に合うかな」
「うん! おいひい!」
するとエミはハンカチを取り出すとわたしの口についたクリームをふき取ってくれました。
「……えへへ」
笑ってみせるとエミは笑顔を返してくれました。
「……それにしてもなんでだろうね……。わたし、女神ちゃんと三回しか会ってないのにずっと一緒にいた気がするよ……」
「だって一緒にいたもん。ずっと見てたんだよ」
「あ、そっか。女神ちゃんは女神なんだったね」
そういうとエミは少し作ったような笑顔を見せた。
「ねえエミ。わたしニンゲンのことでよくわからないことがあるんだけど……いい?」
「……女神ちゃんの質問に答えられるかなぁ?」
「……エミ、ニンゲンってどうして同じニンゲンなのにケンカするの?」
「……そうねぇ」
エミはすこし考えると小さく口を開いた。
「……自分の方が強い、偉いって相手に見せつけたいからじゃないかな? そして勝って相手を自分の下にさせたいんだと思う」
「……それだけなの? 自分のためだけ?」
「……他の人のためにする人もいるけど……ほとんどはそうね」
「……ワガママ。こどもみたい」
わたしがそういうとエミは優しくポンポンと頭を叩いた。
「……あと一ついい?」
「なにかな?」
「あのね。好きってなに?」
するとエミはさっきよりも長く考えた。
「……そうね。女神ちゃんは地球をどうおもう?」
「おバカだけどかわいい」
エミはクスクスと笑うと、「たしかにバカかもね」とうなずいた。
「わたしはね。好きっていうのは口で説明できるものじゃないと思うの。……女神ちゃんの方がお姉さんなんだから、地球と一緒にいればすぐに分かると思うわ」
「……ふーん」
やっぱよくわかんないや。
わたしがクレープをちょうど食べおえたとき、白い服を着た女の人がこちらにむかってきた。
「佐倉さん! もう休んでてっていっしょったじゃないですか……」
「あららみつかっちゃった」
「……?」
わたしがなにもわからなくて、キョトンとしているとエミはやさしくおしえてくれた。
「……ごめんね。じつはわたしもう長くないの」
「……?」
長くない……? よくわかんない。
「なにが長くないの?」
わたしがきくとエミはほはえむだけでなにも言わなかった。
でもなんだかイヤな予感がしたので、わたしはさいごにいいたかったことをエミにはなした。
「エミ……。チキュウのこと今までちゃんとできなくてごめんなさい」
エミはキョトンとした顔になるとわたしの頭をなでながら笑顔で話しはじめた。
「……女神ちゃん。不安定な感情で作られるのはケンカだけじゃないよ。人のことを好きだと思う感情だって不安定だからこそ生まれるもの。 それに地球の軸が少し傾いてるおかげで季節が生まれた。わたしはこの星の神様に感謝してるよ。……じゃあわたし戻らないといけないからバイバイ」
「……バイバイ」
わたしは白い服の女性に連れられるエミを見送ると、へやにもどった。
✳︎月♪日 ☂
エミがチキュウからいなくなった。
わたしはないた。
すごくかなしくなって、
くるしくなって、
つらくてないた。
わたしは、エミが『好き』だった。
そして、このチキュウがとても『好き』だった。
わたしの感情も不安定だったんだね、エミ。
…………
……
☆月♪日 ☀︎
今日は私の誕生日。
せっかくなので地球の散歩に出かけることにした。
あまりえこひいきはよくないけど、エミのお墓参りも忘れないようにね。
やっぱり地球は欠陥だらけだし、ニンゲンもバカだけどとても愛おしいと思う。
そういえば今年も旅行券が当たった。今年はせっかくだし京都にでも行こうかな?
ps.
公園で女の子と仲良くなった。名前はサクラというらしい。
私と見た目は変わらないけど、私の方がおねえさんだからね!