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薬商人  作者: 草花 薫
8/10

クライマックスです。よろしければ、お読みください。

「検査の結果。軽いパニックを起こしたようです」

「パニック……」

 入院して次の日、咲子は主治医の診察を受けていた。

「はい。おそらく何かを見て、それが発端となって過剰反応を引き起こしたと考えられます」

「……」

 何かを見た。

 というが、咲子はいまいち医師の言葉を飲み込めずにいた。

 あのときの状況を思い返してみる。

 私はどこにいた?

ショッピングモールだ。

 でもいったいどこを歩いていた?

 ……

 ……

 ブライダルショップの前だった。

 咲子はブライダルショップの前で遥香が呼んだので駆け寄ったのだ。

 そこでパニックが起こった。

 間違いない。

 でもいったいなぜ?

 今まで何度かブライダルショップの前を通ったことはあるが、何もなかったはずだ。

 そうだ。そうに違いない。

 と言うことは、別の要因が絡まっているということだ。

 それは何だ。

 咲子は頭の中で考えてみたが、何もわからなかった。

 それはとりあえず置いておくしかない。わからないのだから、よけいに考えすぎることでさらに複雑になるかもしれないからだ。

 そしてそうだ。明のこともだ。

 遥香に状況はだいたい聞いた。自分は無性に彼のことを求めていたという。

「先生。私はいったいどうなったのでしょうか」

「……そうですね。わからないと言うしかない状況ですね。現段階では。ただ検査の中で、ドーパミンが異常分泌していた、という結果が出ました。これがどういう意味なのかはわかりませんが……」

 やはりわからないか。

 もとより期待していたわけでないないが、少し意外だった。結局また振り出しということか……。

 気になるのはブライダルショップだった。これが何かの意味を隠していることは間違いないはずだ。突発的にパニックに襲われたという場合も考えられるが、おそらくこのことは深く関わっているとみた方が自然だ。

 それによく思い出してみると、嫌な記憶が引き出されてきた。

 

 凜の記憶だった。


 昔、凜と近くの店にあったウェディングドレスをよく見に行っていたのだ。

 それが今回の件と結びついているとは限らないが、咲子はこれ以外に思い当たることはなく、おそらくはそういうことだろう。

 けれど、もしそうだとしてもまだ腑に落ちない。咲子自身何度かウェディングドレスを見たことはあるのだ。もちろん高校に入ってからだ。

 ここが謎だ。

 どうしてその時は発作が起こらなかったのか。

 咲子はそれがわからなかった。

 もちろん医師もそんなことはつゆ知らず、だろう。

 咲子は答えが出ぬまま診察室を後にした。

 いったいどうなっているのだろうか。咲子は病室に戻る道すがら、遥香のことを思い出した。

 ――いったい今、遥香は何をしているのだろうか。


ありがとうございました。

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