エピローグ
「──こうして、公爵さまと令嬢は、『真実の愛』を叶えましたとさ。めでたしめでたし」
ふう、と私は肩を下ろす。ペンを置いて、少し疲れた肩を揉む。
「それは私たちの話かい? それにしても、こんなときにまで執筆かい?」
アルベルトが座っている私の背後に立って、私に代わって、肩の凝りをもみほぐしてくれる。
「ええ、そうよ。私たちの話。そして、いつかやってくる私たちの子供に聞かせる絵本になるの」
それを聞いて、アルベルトがクスクスと笑う。
「私たちの子は、こののろけを聞かされて育つのかい?」
「だって、私たちのように幸せな結婚をしてほしいもの」
「婚約破棄から始まる、めでたし、めでたし、ねえ……」
アルベルトがぼやく傍らで、私は立ち上がってくるりとアルベルトの方に向き直る。
「そこまでは書かないわ。私とあなたの、素敵な愛のお話だけに焦点をあてているもの」
「素敵な愛、ね……」
そういうと、アルベルトは私の顔を覆う花嫁のヴェールを一時めくりあげる。
「ああ、美しいよ、我が青き宝石。……私はなんて幸せなんだ」
真っ白なウエディングドレスに身を包んだ私を、アルベルトが眩しそうに見てから賞賛する。
そして、そっと唇をあわせた。
それが済むと、アルベルトがヴェールを元に戻し、私に肘を曲げて差し出した。
「さあ、そろそろ行こう。みんなが主役の登場を待っている」
私はそのエスコートに応え、肘に腕を通す。
「アンネリーゼ、世界で一番幸せにするよ」
「だって、あのお話を、『めでたし、めでたし』にしていただかないと困りますもの」
そうこの世界は綺麗なお姫様の現実のお話。
私はクスクスと笑う。
「これは責任重大だ」
アルベルトが笑う。
「それでは」
と教会のシスターが扉を開けようとした。
「「お願いします」」
私たちは揃って答える。
扉を開くと、眩しい結婚式の教会の会場と光と、未来が待っていた。




