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6.幕間② 稚い頃の出会い

「……公主閣下。またこれは凄い書類の山ですな……」

 将軍であるブランデンブルグ卿が、決裁すべき書類の山に埋もれているアルベルトのもとへ、これまた分厚い書類を持って訪れた。

「そう見えるなら、お前もこれを手伝ってくれ」

「私は、ちまちまとした書類仕事に向きません。なんでしたら、旧知のバーデン卿でも連れてきますが?」

 その名前を聞いて、アルベルトがピクリと反応する。

「ああ、確かに彼は適任かもしれない」

「……といいますと?」

「ほら、これを見てみろ」

 そういって、アルベルトはブランデンブルグ卿に、一枚の申請書をぴらっと渡してみせた。

「この書類になにか?」

「なにかじゃないよ。全く。これはね、巧妙に計算違いを紛れこませて、申請金額をかさまししているんだ。……こんなのまで公主自らが見ないといけないなんて」

 とぼやいてみるが、どこかの派閥の息がかかった貴族に移譲しようにも、それはそれでまずいことになるので、結局公主自らが確認している。

 では、誰の息もかかっていない役人に任せてみようにも、その書類は巧妙に計算のズレを紛れ込ませてあって、容易に任せられないのだ。

「いっそお前の提案のままに、バーデン卿を私専属の書記官にしてしまおうか」

「それも良いかもしれません。ああ、そういえば閣下に仕事を増やして申し訳ないのですが、ここにバーデン卿からの面白い具申がありますよ」

「バーデン卿からか?」

「いえ、正確にはその令嬢のアンネリーゼ嬢からです」

「バーデン家のアンネリーゼ嬢。確か、『バーデン家の青い宝石』と謳われる程の美貌と才知を備えた姫だと評判の姫か」

「はい、そのアンネリーゼ嬢です。なんでも、婚約者である彼の国の王太子の想い人に酷い仕打ちをしたとかしないとかで、婚約破棄と彼女の追放をいい渡されたのだそうです」

「想い人? 婚約者がいるのにか?」

「はい、おっしゃるとおりで。そもそもがおかしな話なのです」

「で、バーデン家はその待遇の抗議として、家族全員で我が国に移住してきました。……閣下には以前打診しましたよね?」

「ああ、聞いたね。そして、諸手を挙げて賛成した。あの国の国政は全て女王アレクサンドラ自らが決めるもの。それが、その婚約破棄に限って、彼女が不在のときに宣言されたのだというし。その上、婚約破棄のいい分も、彼の国の王太子からの一方的なものだというのだろう? 私もちょっとおかしいと思ったからね。万が一姫が本当にやらかしたのだとしても、宰相として国に引き込んだバルタザールまで出て行くことを許すのは、どうにもおかしい」

 アルベルトは、顔を寄せろと、ブランデンブルグ卿に指先でジェスチャーする。

「お前は女王アレクサンドラにもバルタザールにも顔が利く。ちょっと調べてみてもらえないか」

 ふたりの間にしか聞こえない声で囁き合う。

「承知しました。騎士団の中の特殊部隊、暗部のものに調べさせましょう」

「そうしてくれ」


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