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第1話…黄色いアイツ

連載スタート!!

 


ぴ〇ちゅ~。ぴ〇ちゅ~。ぴっぴ〇ちゅー!!


 

 目が覚めると、胸の上には先日くじ引きで手に入れた某人気キャラクターの目覚まし時計が乗っかっていた。


 

 上目づかいでこちらを見つめるその姿はかわいらしくもあり、憎憎しくもる。全体的に黄色いくて大きい目は愛くるしい。黄色いそいつは俺のことを起こす気などさらさらないのか知らないが、ささやくような鳴き声で毎日起こそうとする。


 

 そんな鳴き声では俺を起こすことはおろか名前すら覚えてもらえないだろう。手に入ってから毎朝、そうやっていって聞かせているのだが反省の色はまったくない。


 

 ゴトゴトゴト、ゴン!


 

 痛い!!


 

 しかしなぜか鳴きながらすさまじい勢いで身を震わせるので、決まって最後は俺の頭の上におちてくる。

 

 こいつはこいつで与えられた仕事をまっとうしようとしているのかもしれない。まったくけなげなもんだ。名前は知らんけど。


 

 いつもはまだ眠っている俺だが名前のわからないそいつのがんばりに免じて起きてやることにした。今日は用事もあることだし。


 

 上体を起こすと反対側のベットには同室者たちが眠っている。起こすのもかわいそうだと思ってゆっくりとドアから出た。


 

 廊下に出るとまだ8時なので誰もいない。寮に住む者たちにとっては、変化のない毎日を変化のない友人たちと過ごすより眠りこそ快楽なのである。

 

 きっと今もアラビアンナイトに宇宙旅行、はたまた熱湯我慢大会の夢をみていることだろう。山賊と戦ったり宇宙人と戦ったり自分自身と戦ったり、もうわけもわからないくらい戦いまくっているだろう。そんなの知ったことではないが、顔を合わせるのも億劫なので忍び足で歩いた。


 

 そろりそろりと廊下を進み、やっと洗面所にたどりついた。中に入っても誰もいなかった。

 

 朝日を受けてピカピカに光る鏡。センサー付の便器の群れ。大理石の手洗い場。不必要までに金がかかったこの空間は見ただけで、便意のないものまで入りたくなってしまう。そんな理想の機能空間を一人で使えるとは私は贅沢なやつだ。


 ジャブジャブ顔を洗って頭を上げると俺の顔が鏡に映し出された。

 

 きりりと引き締まった顔はなんとも男らしい。しゃべらなくても女子に人気のある俺はたぶん端から見ればイケ面なのであろう。だが、問題は中身がこの俺だということである。

 

 

 クールと陰気は紙一重、俺はまともに女子と話すことすらできない。それともう一つ、私は自分のことを私と言ったり、俺と言ったりする。未熟者の私(俺)には生き方のハウツーなんてまだない。


したがって、自分の呼び方さえ定まっていないのだ。  


他人が使えばなかなか便利であるはずの体だが、俺にはさっぱり使い方がわからない。なので17歳の俺に彼女はいない。できたことすらない。


 


 部屋に戻り一通り準備を整えると俺は早速出発することにした。自分のベットには俺の代わりに黄色いキャラクターが眠り、反対側の同室者は夢の中で熱湯に耐え忍び、俺のほかに起きているものは誰もいない。 

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