表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

キャラが立つということ

作者: ごはん

はるかは、ずっと「役に立たなければ、生きている意味がない」と思い込んでいた。


誰かの手伝いをする。頼まれたら断らない。自分の気持ちよりも、相手がどう思うかを優先する。

だからこそ、遥は「いい人」だった。でも、心の奥は、いつも少し空っぽだった。


ある日、職場でのプロジェクトでチームを組むことになった。リーダーは後輩のミナ。遥よりも年下で、ちょっと天然で、でもやたらと明るくて、周囲を巻き込む力があった。


ミナは言った。


「遥さん、すごく優しいけど、本当の意見を聞きたいんです。遥さんの“キャラ”、もっと知りたいなあって思ってて」


キャラ?

遥の中で、その言葉が引っかかった。


──私は“キャラ”なんてない。ただ、人に合わせて、役に立てるようにしてきただけ。


けれどその日、ミナが笑って言った言葉が、遥のなかで何かを崩した。


「私、実はめちゃくちゃ不器用なんです。だから遥さんがフォローしてくれて、本当にありがたくて。でも、遥さん自身のことも知りたいんです。“支える人”じゃなくて、“そのままの遥さん”を、見たいです」


不器用でもいい。天然でもいい。明るすぎても、間が抜けていても。

ミナは、ただ“自分のまま”で、ちゃんと人の役に立っていた。


そうか。

役に立つって、無理して誰かの土台になることじゃないんだ。


それは、自分らしく“立つ”こと。

自分の輪郭がはっきりして、その存在そのものが、誰かの光になること。


それに気づいた日から、遥は少しずつ、自分の色を出すようになった。意見を言う。弱音も少し吐く。変だと思っていた自分の癖も、意外とチームの雰囲気を和ませていた。


「遥さんのコメント、さりげなくてツボなんです」

「今日も遥さんの声が落ち着く~」

「そういう視点、すごく助かる!」


誰かの“役に立つ”って、こういうことかもしれない。

誰かの期待に合わせることじゃなくて、自分の“立ち方”を見つけること。


遥はようやく、自分の足で、ちゃんと“立って”いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ