1.女神に冷たく当たったら、とんでもスキルを押しつけられました
俺の名前は――いや、もうどうでもいいか。とにかく、これは“死んでからの俺”の話だ。
「は? なんでそんなに偉そうなの?」
目の前に浮かぶ、神々しい――のに、どこかムカつく顔をした少女。金髪でティアラみたいなのを付けて、いかにも「私が女神です!」って感じのドヤ顔。
「あなたね、一応生き返らせてあげようって言ってるのに、その態度はないんじゃない?」
「別に頼んでないし。そっちが勝手に転生させようとしてるだけだろ?」
事故で死んだ俺は、目を覚ますとこの“天界”なる場所にいた。そして、この幼児体型の女神――名をリュミエルとか言ったか――が、何やら俺に転生のチャンスを与えると言ってきたわけだが。
「うーん……ムカつく!」
女神はぷくっと頬を膨らませ、空中でくるくると回る。なんかアニメで見たような動きだ。神ってこんなに子供っぽいのか。
「わかったわ、あなたには“素敵なスキル”を授けてあげましょう。名前は――《フェロモン》。説明は……ふふふ、異世界に行ってからのお楽しみ♪」
「おい、ちょっと待て。ちゃんと内容――」
言い終わる前に、足元が光に包まれた。無慈悲な女神の笑い声が遠ざかっていく。
「ふふん、せいぜいモテモテ地獄を楽しみなさい!」
「地獄てなんだよ!!」
こうして、俺は――
訳もわからず、異世界に落とされた。
◇
「……うわっ、ちょ、近い近い近いっ!」
目を開けた瞬間、俺の顔に猫がすり寄ってきた。しかも、その後ろから犬、鳥、さらには馬まで近づいてくる。いや、なんでだよ。馬ってメスか? どうでもいいけど顔舐めんな!!
……あ。まさか、これが。
《フェロモン》:半径5メートル以内の女性に絶対的好意を抱かせる常時発動型スキル。
「…………は?」
ステータス画面らしきものを開いたら、そこにはそう書かれていた。しかも“女性”って……動物も入るのかよ!? 俺、猫にもモテんの? 最悪だ。
こうして――
女嫌いな俺の、モテ地獄(異世界生活)が始まった。