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3話

次の日、ダスクと紅茶を飲みに行くことになったので、私はうさぎのぬいぐるみを抱えていった。


「あっ…」


ダスクはぬいぐるみをみて、小さくそう言った。


「これって…ダスクの?」


「元々はそうだったよ。けど、フーリに贈ったんだ。どうやって思い出してくれたの…?」


「思い出したんじゃないのよ。最近の出来事を思い返して、そうなんじゃないかなって思ったの」


「なるほど。フーリは相変わらず頭がいいなあ」


「昔の私は、頭が良かったの?」


「かなり良かったね。幼馴染の僕は比べられて大変だったよ」


「そうなんだ…」


「ちなみに、なんかちょっとだけ記憶に残ってることとか、あったりする?」


「そうねえ…、なんかこのぬいぐるみを久しぶりに見つけた時、私に悪いことをした人に、ばちが当たる気がしたの」


「それは本当? ああ、やっぱり僕の未熟さは、簡単には消えないんだな」


「え、どういうこと?」


不思議がっている私に、ダスクは昔の話をしてくれた。


昔、私はいつも一人でてくてくと宮殿を歩いていたらしい。


ダスクは私より一つ年上で、唯一、私と歳が近い子供だったんだって。


だから私たちはよく遊んでいて、だけど私は明らかに親から見放されていた。それなのに政治的には利用される流れがあり、幼いながらダスクはそれを分かっていたという。


一方、私は親からのネグレクトがあまりにもひどいので、メイドさんに育てられ始めた。


私は環境の変化の激しさとストレスから、人とあまり関わらなくなり、後々、親に育てられていた頃の記憶が抜け落ちてしまったみたいだった。


ダスクはその時、各国を旅して交易発展に務めることが決まっていた。


だから出発する前の日に…。


「僕はフーリにぬいぐるみを渡したんだ。少しでもフーリを励まそうと思ってね」


「そうだったんだ…。ありがとう」


「けど、僕は渡す時のセリフを間違えた。当時の僕はまだ未熟だったんだよ」


「未熟…」


「うん。だから僕はあの時言ったんだ。うさぎのぬいぐるみを持ってると、フーリに悪さをする人にばちが当たるよって」


「…ほんとは、なんて言いたかったの?」


「僕は…うさぎのぬいぐるみを持ってると、フーリは幸せになるって言いたかったんだ。だって僕は、誰かの不幸を願ってたわけじゃないからね」


「なるほど。ダスク、優しいんだね」


「いやいや、そんなことはないよ」


「あ、でもなんか、私がうさぎのぬいぐるみと再会してから、カイトの悪事が一気に暴かれた気がするのよね」


「それは、カイトがフーリの婚約者な間は、フーリの両親がカイトの悪事を権力で隠蔽していたからだと思うよ」


「た、確かに私の親はそういうことをする人ね。じゃあ、うさぎのぬいぐるみの効果とかではないんだ」


「そりゃそうだよ」


「じゃあ、ダスクが最近帰ってきたのは…?」


「そっちはうさぎのぬいぐるみ関係なく僕が望んだことなんだ。だって、僕は…どこに行っても君よりも好きな人なんて見つからなかったんだから」


「えっ」


「フーリは覚えてないかも。けれど僕は小さい頃のたくさんの思い出があるんだ。フーリとのね」


「うん」


「だからずっと好きだったんだよ」


「で、でも私、本気の恋愛したことないから…だ、だけど」


「うん」


「私、あなたと一緒に幸せになりたいってすごく思うの」


「…あれだね、どうしてフーリはそんなドキッとするセリフを言えるんだろう。かつてセリフを間違えた僕からしたら羨ましいよ」


そう笑うダスクを見て…。



ダスクの笑顔をこれからは私が一番たくさん見たいと強く思った。



☆ ◯ ☆



僕はおままごとが嫌いだ。


なぜって、つまらない。


女の子は好きなんだろうなあって思うけど、僕は絶対好きにならないね。


本当に王子様とお姫さまなわけでもないのに、それになりきるなんて…。



だけど、なぜか僕は、彼女とのおままごとを、断れずにいた。


彼女が唯一の年が近い友達だから…?


いや、そういうことじゃないと思う。




彼女は今お姫さま役で、僕は王子様役をしている。


僕にはなぜか…彼女が本当のお姫さまに見えるのだ。


だって、彼女は一つ年下なはずなのに、少し大人びていて。


お姫さまになって、こんなことを言う。


「私、あなたと一緒に幸せになりたいってすごく思うの」


お読みいただきありがとうございます。


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