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第九話:冒険者ギルドとよくある展開

場所は戻り、ユグドル国 冒険者の街ビャルカン。



「着いたよ!ここが冒険者ギルドさ!」


エバに案内された大きな酒場のドアを開ければ三雲は目を輝かせた



活気づく店内。笑い声や軽快な楽器の音色。


行き交う人々や壁に張り出された依頼の数々



「はい。依頼達成ですね!こちらが報酬金になります!」


「うーん、どの依頼受けようかな・・・」


「お!キリングベア討伐依頼が出てる!いっちょやるか!」



漫画やアニメ、ライトノベルやゲームで見た光景が今目の前に広がっている事実に三雲は内心感動していた。


祖父母の元で暮らし始めた時、誕生日に祖父が買ってくれたRPGゲームの世界観をまさか自分が体験できる日が来ようとは夢にも思っておらず、握られた拳に力が隠り更に目を輝かせながら自分の首にだらりと巻き付いた三郎(※エバから人型だとややこしくなると言われたため蛇の姿に化けている。)に興奮気味に声をかけた



「三郎どうしよう。ヤバイ。RPGでよくある世界観だ。スゲェわくわくしてきた。」 


「嫁御殿が楽しそうならなによりさぁ・・・小さい頃、よく鉄の箱と睨めっこしながら遊んでいたものねぇ」


子供のように話す三雲に三郎は笑みを浮かべるとエバが背中を軽く押してきた


「さぁさ、こんな所で立ったままだと邪魔になるから!冒険者登録しちまいな!」


「冒険者登録・・・・・・冒険者登録ぅ!?」


「だってアンタ行くアテ無いんだろう?だったらとりあえず冒険者登録しちまえば収入面は困らないし・・宿代をケチりたいならしばらく拠点はウチの部屋を使ってもらっても構わないからねぇ!」


にかっ、と笑みを浮かべるエバの懐の広さに三雲は感動を覚える。


「み、見ず知らずの若造相手に優しすぎるこの女将・・・」


「頑張ってる子は応援したくなっちまうからねぇ!ほらほら、受付はあそこ!」


ぐいぐいと背中を押されながら受付まで歩みを進めれば中に待機していた一人の受付嬢がにこりと笑みを浮かべ会釈をした


「いらっしゃいませ!冒険者ギルドにようこ・・・・あら?エバさん?」



「コイツはティナ。ここのベテラン受付嬢さね。ティナ、この子はミクモ。ちょいと訳ありでしばらくアタシらが面倒見ることになったんだ。」


「まぁ、そうだったんですねぇ!・・・はじめまして!受付嬢をしているティナと申します!」


「ミクモです。あの、冒険者登録をお願いしたくて」


「冒険者登録ですね!承知しました!」


三雲の言葉にティナはごそごそと一枚の書類を取り出し羽根ペンを手渡してきた


「ではこちらにまずお名前と出身地、年齢・・・特記事項などあればご記入ください。」


「はいはい、名前と出身・・・・・あ」


出身地、と聞かれ三雲は少し考え込む。


「(・・・い、異世界から来たんだよなぁ。ど、どうするか・・・普通に日本とか書いたら不味いだろうし)」


どうしたものかと思案しているとふいに三郎が羽根ペンを咥えれば勝手にさらさらと文字を書き始めた



名前:ミクモ・サワラビ


年齢:24歳


出身地:ヤマトの村


特記事項:剣に自信あり。



「ちょ!!!おまッ!!なに勝手に!!」


慌てて捕まえればこちらの気持ちを察してか三郎はにんまりと目を弧にしてちろちろと舌を出した。


「ヤマトの村?」


書類を手に取り首を傾げるティナにどう説明すべきかと慌てているとその様子を見ていたエバが声をかけてきた



「おやまぁ、なんだか〝旧アシハラ国〟にありそうな村の名前じゃないか」


「??・・・あしはら??」


「あ!本当ですねぇ!・・・もしかしてアシハラの生き残りさんが作った隠れ里から来られたんですか?」


「・・・・・そ、ソウデゴザル」


二人の反応に咄嗟にそう返すとティナは「なるほどそうだったんですねぇ」と深く事情は聞かず書類を受け取り、今度は一枚の鉄プレートと水晶玉を取り出し目の前に置いた。


「ギルドカード!」


「はい、その通りです!こちらがミクモさんのギルドカードになります。最初は一番低いEランクからのスタートですが経験や実績を積み重ねていけばランクも上がっていきますので頑張ってくださいね。」


「よっしゃ!!頑張ります!・・・と、この水晶玉は?」


「はい、こちらは魔力量と光、闇属性を抜きにした火、土、水、風の四属性の適正をチェックする物になります。・・御手数ですが血を一滴、こちらの水晶玉とプレートに垂らして頂けますか?」


ティナの言葉に三雲は人差し指を三郎の口元に近づけると三郎もその行動の意味を察したらしくかぷりと指を噛めば、そこから血が溢れだした。


「まずはプレートに」


ぽたり、とプレートに血を垂らすと一瞬魔方陣が浮かび上がると自分の名前などがプレートに刻まれていた


「で、次が水晶玉・・・」


ぽたり、と水晶玉に血が付着すればじわじわと文字が浮かび上がってきた



ミクモ・サワラビ


魔力量:測定不可


適正属性:雷



「・・・・・・・・・・・おん??」


「あ、あれぇ??・・・・」



まさかの異常事態にティナは困った様子で水晶玉を覗き込んだりぺちぺちと叩いたりしたが文字に変化は見られなかった



「・・・・あっ、なるほど!魔力が無いって訳か!」


測定不可と書かれた文字を自分の中でそう解釈しウンウンと三雲が頷いていると三郎がひそひそと耳打ちをしてきた


「嫁御殿。不可って言うのは魔力が無いじゃなくて・・・魔力がありすぎて測定するのが不可能って意味じゃあないのかな?」


「だまらっしゃい!!!現実逃避してんだこっちは!!」


「み、ミクモさん?ペットの蛇に八つ当たりは・・・」


「え!?あ、あぁ、すみませんつい・・・ワハハハ」


ティナの心配そうな声に三雲は乾いた笑みで返すがティナの表情はさらに困った様子に変わっていく


「魔力量が測定不可って言うのもレアケースなんですけど・・・それよりも・・・・」


「・・・・適正属性が説明に無かったソレなんですけども」


適正属性:雷


先ほどティナから大まかに説明されたそのどれにも当てはまらない属性に三雲は複雑そうな表情を浮かべる


対するティナもしばらくうーん、と腕を組み考え込むと


「・・・・この件なんですけど、〝ちょっとギルマス〟に相談してみます。」


「シニタクナイデスユルシテクダサイ。」


「物騒なこと言わないでくださいよぅ!!・・こほん!うちのギルマスはそんな冷たい人じゃありません!きっとなんとかしてくれますから!」


「・・・ソウダトイインデスケドネ」


「ほ、ほらほら!元気出してください!はい!ギルドカード!無くさないように大切に持っていてくださいね!再発行には500ゴールドかかりますから!」


どんよりとした空気を発している三雲の肩をばしばしと叩きながらティナはギルドカードをしっかり握らせる。


その時だった


「か、返してください!!」


「??」


突然聞こえた大きな声に振り向けば一人の若い剣士が小さな少女から手乗りサイズの麻袋を取り上げているのが三雲の目に飛び込んできた



「(おぉ!よくあるトラブル展開って奴か!)」


「(悪い顔になってるよぉ嫁御殿・・・)」



剣士はおそらく三雲より年下、16くらいだろうか。着ている鎧や雰囲気、少女を見下したような目つきからして良いところの坊ちゃんなのだろう。その証拠に美しい装飾が施された剣を腰に携えている


かたや困った様子の少女はおそらく10歳くらいだろうか。白銀の髪にサファイア色の瞳が不安げに揺れている。しかしその服装はまるで喪服のようなゴシックドレスで片方の手には日傘が握られていた



「返してください!大事な依頼金なんです!」


「ふん・・・大事な依頼金と言ったけれどこの金貨は我々が普段使ってる物よりも遙か昔に作られた古代金貨じゃあないか。どうして君のような少女がこんな物を持っている?」


「うっ・・・お、お兄さんには関係ないやんか!!とにかく返してください!」


「いいやダメだね。おまけにその見た目・・・・」


「な、なんやの!ウチみたいな髪の色や目の色した子なんて仰山おるやんか!」


「ほぉ?・・・しかし、〝やけに尖った牙や病気的に白い肌〟の女なんて中々居ないんじゃあないかな?」


「!!」


はっとした少女に剣士はついに腰に携えた剣を引き抜けば切っ先を少女につきつけた


「貴様・・・・あの〝語るにもおぞましい種族〟の者だな?」


「ひっ!?」


「丁度良い・・・僕の輝かしいSランク冒険者への道を飾る華々しい武勇伝の一つになってもらおうか!」


怯える少女に剣士は握られた剣をそのまま突き立てようとしたが


その前に先ほどまで様子を見ていた三雲の背後からのドロップキックをもろに受け剣士はそのまま壁に激突したのだった



「げぶふぅ!!!?」


「おいコラ。無抵抗の幼女相手に何してんだボンボンが」


中々当たり所が悪かったらしく顔を押さえながらゴロゴロと床を転がる剣士を無視し三雲は少女に声をかける



「大丈夫かい?はい、取られたサイフ。」


「あ、ありがとうございます!」


小さな手に取られた麻袋を乗せると少女はぺこぺこと頭を下げた


「お姉さん強いんやねぇ・・・ウチびっくりしたわ・・・」


「ついさっき冒険者登録したぺーぺーだけどねぇ。・・・あ、私は三雲。この蛇が三郎」


「助けてくれてほんまありがとう・・・ウチはエトワール言います。」


幼女、エトワールはそう言うとまた深々と三雲たちに頭を下げた


「と言うかエトワールはこんな所で何をしてたんだね?」


「それは・・・・」


首を傾げる三雲にエトワールが不安そうな表情で話を切り出そうとした時、先ほどまで床を転がっていた剣士がガバッ!と起き上がったかと思えば左手で鼻を押さえながら剣を三雲に突きつけてきた



「お、おいお前!!!無礼すぎるぞ!!この僕にあんな野蛮な行為を・・・それでも剣士か!?騎士道精神はないのか!?」


「あ。なんだまだ居たのかボンボン」


「ボンボン!?・・・ぐっ、ぐぎぎぎぎ・・・どこまでも僕を侮辱してくるとは生意気な新参者が!!」


三雲の態度に地団駄を踏みながら更に剣士は声を荒げる



「このシャルマーニュ家次期当主であるこの僕、アルベリヒ・シャルマーニュに対する無礼な行いの数々・・・今この場で後悔させてやる!!」


「・・・・へぇ?」


剣を突きつけてきた剣士、アルベリヒに三雲はニヤリと不適な笑みを浮かべる。その様子にどうやら他の冒険者達も気がついたらしく二人の周りにはいつのまにやら野次馬が出来ていた


「ここじゃギルドに迷惑かかる。表に出なボンボン」


「ふん!!良いだろう・・・その減らず口今すぐに後悔させてやる!」



ギルドの外に出れば他の冒険者たちもぞろぞろと外に出て様子を伺い始める



「(せっかくの機会だ・・・腕試しがてらその喧嘩買ってやるよお坊ちゃん!!)」


心の中でそう吐き捨てれば三雲は羽々斬りを構えてアルベリヒを見据えた。




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