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第八話:円卓会議

時は遡り、一時間前。


騎士帝国アルヴァロン王都、キャメロット城



「・・・そうか。転移位置までは把握できなんだか」


「申し訳ございません。アグラヴェイン騎士団長殿」


「構わん。今我々が成すべきは残りの勇者候補達を鍛え上げる事・・・彼の者の動向は見つけ次第討伐する物と皆に伝えてくれ。」


「はっ!!」


キャメロット城内にあるペンドラゴン騎士団の騎士達が入室を許される部屋、通称円卓の間にて騎士団長であるアグラヴェインは偵察に出した兵士から報告を受け下がらせるとテーブルに両肘をつき集まった騎士達に目線をうつす。



「良いのかね?団長殿・・・あの〝災竜〟を放置しておいて」


同じく円卓に座った一人の騎士がアグラヴェインに問いかける。


銀の鎧姿に絹のような黄金色の髪を後ろに束ね、その容姿は見目麗しく多くの女性を虜にしてきただろうと一目でわかるだろう。


しかし、彼の手にした鋼鉄の弓や彼の発する覇気から歴然の猛者であると言うことは言うまでもなかった。



ペンドラゴン騎士団副団長、トリスタン・ゴドフリード


アグラヴェインと同じく王都を護る要の騎士であり女神より授かりし〝聖風弓フェイルノート〟と共に多くの武功を立ててきた男だ。


「・・・奴もギフトがあるとは言え、この世界の状況をまだ何も把握できていないだろう。・・そのまま魔物に食われるか野垂れ死ぬ確率もなきにしもあらずだからな」


「それは確かにそうだが・・・あれほどの大立ち回りをしてみせた相手がそう簡単にやられてしまうとは思えないのだがね・・・」


「だからこそ我々は勇者候補・・・いや、正確にはヨル殿を立派な聖剣の担い手として育て上げる義務があるのだ。・・〝今は亡き王子殿下〟と同じ才能を秘めたあの者ならば・・必ず魔竜王を討伐し大陸に安寧をもたらしてくださるだろう」


アグラヴェインの返答に「そうだな」とトリスタンは笑みを浮かべながらフェイルノートを優しく撫でる。すると先ほどまで会話を聞いていた一人の騎士が疑問を投げかけた。


「しかし何故あのような災厄の存在までも召喚されたのでしょうか・・・今までの勇者召喚ではそのような事は一度も起きなかったのに」


短い栗色の髪にトリスタンとは対をなす黄金の鎧を身に纏い、その腰には女神より授かりし聖剣ガラティーンが携えられている。


ペンドラゴン騎士団もう一人の副団長。ガヴェイン・ガングランは顎に手を当てて不思議そうに呟いたが、隣に座っていた一人の騎士が人懐っこい笑みを浮かべて言葉を返した


「まぁ、イレギュラーな事もたまにはあるだろうさ。そう深く考えるなよ義兄上殿。」


「モルドレッド卿、またそんな事を・・・」


ため息をつくガヴェインに赤髪の騎士はにやりと意地悪げな笑みを浮かべてさらに話を続ける。


ペンドラゴン騎士団100人長。モルドレッド・ヴァルカ


ペンドラゴン騎士団にて20代という若さで100人長にまで上り詰めたたたき上げであり〝クラレント〟と名付けた愛剣と共に戦場を駆け抜けてきた若き風。そしてガヴェインや団長であるアグラヴェインとは義兄弟の契りを交わした仲でもあった。


「兄じ・・・・団長殿も言ってたじゃねぇか。今最優先にする事はあの勇者様を聖剣の担い手として立派に育て上げる事ってよ。」


「しかし・・・かの災厄がまた我々に牙をむくやもしれないのですよ?」


「はっ、そん時はこのモルドレッド様がぶっ潰してやるまでだ。ウチの兵卒共相手に幾分かやるようだったが所詮は戦を知らない凡人・・・いつでも叩き潰してやるぜ」


「フッ・・・頼もしい言葉だな。モルドレッドよ」


モルドレッドの言葉にアグラヴェインは小さく笑みを零す


「・・・お前が一番ヨル殿とは年齢も近い。色々と手助けをしてやってくれ。」


「任せとけよ団長殿。新しく出来た妹分の面倒はきっちり見てやるって!・・・あ、飴役は俺がやるからその分鞭役は任せるぜ?兄者」


「モルドレッド!」


「あーうっせぇなあ!堅苦しい空気は苦手なんだよ俺は・・・」


不遜な態度を諫めようと立ち上がり睨むランスロットにモルドレッドは舌打ちをして睨み返す。険悪なムードが流れ始めるがアグラヴェインが大きく咳をすればソレはすぐに打ち消され騎士達は皆真剣な面持ちでアグラヴェインを見た



「・・異常事態が起きてしまったが、無事に勇者召喚は執り行われた。我々ペンドラゴン騎士団は来るべき戦いに向けて勇者候補達を立派に鍛え上げる。各々、魔竜王を討伐し大陸に平穏を取り戻すため死力を尽くしてほしい。期待して居るぞ」



「はっ!!!」



皆の返答にアグラヴェインは満足げに頷くと円卓の窓から見える空を見上げたのだった




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