第二十二話:手がかり
地に伏したガルムを見ながら三雲は羽々斬を鞘に収めるがその体はぐらりと後ろに傾いていく
「おっ、と・・・・大丈夫かい?嫁御殿」
「・・・いまに、なって、いしきとび、そう」
三郎に抱えられ朦朧とした状態の三雲にエトワールが慌てて駆け寄ると
「り、リバイブキュアラー!!!」
三雲の体が紫の光に包まれ、あっという間に傷が癒えてしまった
「・・・・っは!!?し、死ぬかと思った!!」
「よ、よかった・・・闇魔法唯一の治癒魔法なんよ・・本来は人間に効果無いはずなんやけど・・」
「俺が憑いてるせいか効果てきめんだったんだねぇ~」
三郎はそうへらりと笑うと荷車から出発前にエバから渡されたハイポーションを取り出しそれをガルムにかけた。
「っ、・・・・う、・・・・なさけ、を・・」
「情けもなにも・・・お前をこれからどうするかは嫁御殿の判断だからねぇ」
よろよろと立ち上がりながらガルムはゆっくり三雲に歩み寄ると片膝をついた
「・・・・負けを認めよう。見事な武勇だった」
「いや、ギフトやスキルがあったからこそだよ。でなきゃ私は確実に死んでた。・・・お前はやっぱり強いよガルム」
そこまで言い終えれば三雲はガルムに手を差し伸べる
「・・・・だからこそ。ウチのパーティーに加わってほしいんだ。」
「!・・・・俺を、パーティーに・・」
「お前が入ってくれると心強い。・・・どうだい?ガルム」
首を傾げる三雲にガルムは穏やかな笑みを浮かべるとその手を強く握り立ち上がった
「・・・お前は俺を打ち負かした。・・・そのお前が欲するなら、この力存分に使ってくれ。」
「よっしゃ!!・・・・・よろしくな。ガルム。」
こうして、三雲のパーティーに新たな戦力として人狼族の戦士、ガルム・リカントロープが仲間に加わったのであった。
「おぉ!!新たなパーティーメンバーでありますな!指揮官殿!」
「な、なんかよくわからんけど・・・よかったん、よね?」
成り行きを見守っていたギブソンとエトワールが笑みを浮かべていると
「お嬢様!!」
突然、空の彼方から無数の蝙蝠が現れソレは一瞬で人型に変化してエトワールに駆け寄ってきた
「爺や!!」
「じいや??」
「エトワールお嬢様!!ご無事で御座いましたか・・あぁ、よかった本当に・・・・おや?この方々は・・・」
エトワールを抱きしめふとこちらを見つめてきた執事服姿の50代くらいの男性は眉間にしわを寄せ敵意を向けてくる。それを見てエトワールが慌てて説明した
「ウチをジュラの村まで護衛してくれた人なんよ!ミクモさんや!」
「なるほど・・・お嬢様がずいぶんお世話になりましたようで・・・このブルベールムーン家執事セバスチアン・クロフォード、深くお礼を申し上げます。」
「(なんか執事キャラ定番の名前が合体してきたな・・・)」
そんな事をぽつりと考えていればエトワールがセバスチアンに声をかけた
「爺や、ミクモさんにお礼をしてあげたいんやけど・・・」
「確かに・・・お嬢様の命を助けて頂いた御方を手ぶらで帰すわけには参りませんな・・・ミクモ様。なにかご所望の物はございますか?」
恭しく頭を下げるセバスチアンに三雲は少し考え込むとあることを閃いた
「・・・・龍神信仰について、何か知ってます?」
「・・・何ですと?」
「実は私、ちょっと訳ありでして・・・元の世界に友人達と帰るためには〝龍の痕跡〟を辿れとアドバイスされたんです。」
三雲がそう説明するとセバスチアンは少し考え込み
「・・・・方法ならば御座います。」
「!!・・・そ、それは!?」
「六龍神のみ使えるとされる秘技、送還術ならば或いは・・・」
そこまで呟くとセバスチアンは三雲達を見て切り出す
「・・・一度、ジュラの村までご同行頂けますか?詳しい話はそこでいたしましょう。」
「・・・・わかりました。」
セバスチアンに三雲はそう返答し、新たに仲間になったガルム、ギブソン、そして三郎と共にジュラの町に歩みを進めるのであった