二十一話:壬生狼の三段突き
「・・・・・・何だと?」
三雲の発言にガルムの表情に嫌悪の色が見える
「おうよ。この目で見て体に食らって・・・解決策が見えたんでねぇ」
「ッ・・・・巫山戯た事を抜かすな人間!!、貴様は既に満身創痍・・それに左腕ももはや使い物にならぬはずだ!!その状態で黒き巨狼の惨殺狩猟を突破するだと!?馬鹿にするのも大概にしろ!!」
「馬鹿になんてしちゃいないさ・・・・それともアレか?技を破られるのが怖いか?」
「貴様・・・・・」
挑発的に笑いながら居合いの構えを取る三雲にガルムは牙を剥き出しにすると地面を蹴り上げまた一瞬で姿を消した
「あぁっ!!またあの技!!」
「に、逃げるである!!指揮官殿!!」
地面や岩肌を蹴り上げる音が周囲に響き渡る。三雲は深く息を吸い込みゆっくり吐き出し目を閉じた
「(・・・・・集中しろ)」
右手を羽々斬の柄に置いたまま気配を探る。
「目を閉じたままで何が出来る!!!次は外さん!!確実にこの一撃でケリをつけてやる!!」
ガルムが分身と共に現れ一斉に襲いかかる。
「黒き巨狼の惨殺狩・・・・・」
「ーーー お前だな?本体」
「!?」
しかし、鋭い爪や蹴りが迫る前に三雲は羽々斬を抜き放ち刃の峰を外向きにすると背後に迫るガルムの脇腹に一閃を食らわせる
「ぐあぁ!?」
「・・・私の世界の剣術に、三つの病があると伝えた人が居るんだ。」
曰く、危ながる心。打ちたい心。防ぎたい心。
この心を防ぎ、相手の心理を読み後手の技を繰り出す。
体の働きが陽であるならば、心とは即ち影である。
「・・・よく言ったモンだよ。だからこそ〝最強の剣豪〟として名を連ねたんだろうぜ」
「っ、貴様・・・なぜ、俺の位置を見抜いて・・・」
脇腹を押さえながら唸るガルムに三雲は冷静に答えを返す
「・・・・お前の技は確かに凄いよ。努力の賜物と言っても過言じゃあない。だが・・・・・」
そこまで言い終えて三雲はにやりと笑う
「・・・・殺気を隠しきれてないぜ。」
「っ!!」
「どうする?絶技を破られたからって終わりじゃないだろう?」
刃を向け笑う三雲にガルムは怒りの表情を浮かべもう一度地面を蹴り上げ姿を消した
「舐めるな!!!一度技を見破られただけで俺の牙は折れはせん!!」
先ほどよりもスピードを更に上げ、目にも止まらぬ速さで三雲に襲いかかる
「・・・・よく言った。だったらこっちもそれなりに対応しなきゃ失礼に値するな。」
「!!」
もう一度背後を取り鋭い爪でその柔肌を引き裂いてやろうとしたガルムだったが三雲は冷静に羽々斬を右手で持ち左手を前に出した
「・・・・上手くできるかわからんが。今回はギフトに頼るとしよう。」
幕末の時代に生み出された流派。平突きから繰り出されるは高速の突き
「ーーー 平正眼・三段突き。」
目にも止まらぬ高速の突きが人狼の体を貫きその体を地に伏せさせる
「がッ・・・・あ、ァ゛・・・・」
月下の下。猛者同士の争いは三雲の勝利で幕を閉じたのであった
「・・・・どうだい?幕末に生きた狼の牙の威力はさ。」