第一話:災厄
オカルト板とかによく、神様に魅入られたとかやべぇのが取り憑いてる人の話などが乗っているのを貴方は知ってるだろうか。
私、早蕨三雲もソレに分類される。
六歳の頃に神隠しに合いかけて、小さな龍神信仰をしている神社の神主をしている祖父や親戚一同の力によりなんとか現世に留まることは出来たが
「・・・完全に、三雲ちゃんに憑いてるモノを払うことは出来なんだ。」
「そ、そんな・・・」
ーーー 私に憑いていた【ヤツ】はとてつもない執着心の持ち主で
私を早くあちら側に引きずり込みたいからなのかは知らないが・・・
まず、私の両親が突然の事故により急逝。
「三雲・・心配するな。じいちゃん達と暮らそう。お前の事は、絶対にじいちゃんとばあちゃんが守ってやるからな」
祖父の家に住むことになった私は、祖父直々に色々と手ほどきを受けていった
剣道、神事の事
「お前だってじいちゃんの孫なんだ。いずれ、じいちゃん越える奴になれるぞ!」
そんなじいちゃんの言葉に
「みぃちゃんが笑って暮らせることが、ばあちゃんたちの幸せなんだから」
厳しくも優しい祖母の愛に、私は救われた
そして、祖父母の家から少し離れた大学にも通い、心通わせる仲間も出来た
【ーーー 安心できるなんて、思ってるのかな】
そうだ。だからこそ負けるわけにはいかない
【ーーー 僕のしつこさは君が一番わかってるだろう?】
コイツには、絶対に
【ーーー 君を僕の物にするまで、ずーっと離れないからね。・・愛しい嫁御殿】
お前だけには、絶対に
「・・・・・なんて思ってたのになんだこの状況」
先ほどまで自分の生い立ちを思い出しながら現在目の前で行われている状況整理に三雲は頭を痛めた
たしか自分は大学後、友人や可愛い後輩達とともにカラオケにでも行こう!と外に出たはず。
たしかに、講義室のドアを開けたはずだったのだがそこにあったのはいつもの廊下では無く豪華な装飾が施された部屋と複数人の見知らぬ人々だった
「お、おぉ!!転移門が開かれた!」
王族や貴族の服装を身に纏った人々の言葉にわけもわからず呆けていると目の前にある玉座らしき椅子に腰掛けた一人の女性が声を上げた
「ようこそお越しくださいました・・・異世界の勇者様方・・・私はハイランディア大陸、騎士帝国アルヴァロン女王のギネヴィア・フォン・アルヴァロンと申します・・・」
「(漫画やらアニメである異世界トリップ系!!?)」
目の前の女王、ギネヴィアの言葉に三雲は思わず自分の頬をひっぱたく。しかし直ぐに返ってきた頬の痛みからコレが現実の物であると理解せざるをえなかった
「皆様を召喚したのは他でも御座いません・・・この大陸を魔竜王から救っていただきたいのです」
ギネヴィアの言葉に三雲の後ろに居た濡れ羽色の髪に澄んだ青い瞳をした女子が手を上げた
「あの・・・いきなり連れてこられたあげくそんな事言われましても・・・」
「夜ちゃん・・・」
「それに、私達ただの一般人ですし・・・家に帰らせてもらえないでしょうか。」
名前、天原夜
三雲の一つ下の後輩であり同じ剣道部所属の彼女は冷静に周りを見、適切な判断を下せる姿勢やその中性的な立ち振る舞いからして【王子】的存在として常に多くの人に好かれていた
「(流石夜ちゃん・・頼れる後輩!こんな状況でも冷静に対処できるとは先輩は嬉しいぞ!)」
ウンウン、と後ろで腕を組み頷く三雲を他所に夜の問いかけを聞いたギネヴィアは静かに語り出した
「わかっています・・・何も知らぬ皆様をいきなりこのような状況に置いてしまった事、本当に申し訳なく思っております・・・ですが、ですがそれでも!皆様のお力が必要なのです!どうか・・・どうかこの大陸をお助けくださいっ・・・」
頭を下げるギネヴィアに今度は三雲の側に居た一人が声を上げた
「あの〜・・・これが世に言う異世界トリップだとしてよ?ちゃんと補正って言うの?・・・チートスキル的な・・・バフ的なアレって貰えたりします?」
「六実・・・お前さんねぇ・・・」
「いやいや!だってこれが俗に言う異世界モノだとしたら定番も定番っしょ?それにアタシ楽しみ過ぎるし」
名前、橘六実
三雲とは同級生であり腐れ縁・・・悪友と言える存在である。将来は地元にある温泉施設を継ぐ未来の若女将でもありムードメーカー的な存在でもあった
「とりあえずえーっと?女王様だっけか!その、魔竜王だっけ?・・・なんだって私達がこんな事に合わなきゃならなくなったのか説明して貰えるかな」
「そうですね・・・仰るとおりです・・・」
六実の言葉にギネヴィアは少し目を伏せると静かに語り出した
今から遥か昔。この大陸の底から闇が吹き出し、その闇の穴から邪悪な炎を纏った恐ろしいドラゴンが現れたのだそうだ。
そのドラゴンの力は凄まじく、大陸に生きる皆が力を合わせても歯が立たなかった。
このままでは大陸の危機であると感じた先代の王族は〝女神〟に祈った。すると別の世界とを繋ぐ門が現れ、その門から勇者が現れ邪悪な竜を討伐し大陸を救ったのだ。
勇者は最期に自分の力を水晶玉に込め、竜を倒した聖剣を帝国の要として奉納した後元の世界に帰ったのだそうだ
「なるほどなるほど〜?・・・あれ?じゃあその魔竜王とかって倒されたんじゃないの?」
話を聞いていた六実が訪ねるとギネヴィアは深刻そうな顔をした
「・・・今から一週間前、魔物達の動きが活発になってきたのです」
「魔物の動きが、ねぇ」
「そして・・・大陸の北東にある廃墟となったガラハット城から正体不明の闇の穴が現れたと報告がありました」
ギネヴィアの言葉に三雲はしばらく傍観していたが状況を理解した
「・・・つまり、魔竜王が復活したんじゃないか?って話か」
「その通りです・・・もはや一刻の猶予もございません!皆様の力をお貸しください!」
そう言うとギネヴィアは手に持っていた水晶玉を中央に用意された台座に設置すれば一同を見た
「これより、皆様の状態と神より授けられたギフトスキルを示す儀式を行います・・・何方か、この水晶玉に手を」
ギネヴィアの言葉に皆は顔を見合わせ困惑すると一人、先ほどまで静かに話を聞いていた夜が前に出た
「・・・・私が先に行きます。」
そう言って夜が静かに水晶玉に手を翳すと眩い光が水晶玉から吹き出し始める
そして目の前にRPGでもよく見るメニュー表示のような文字が浮かび上がった
天原夜~ YORU AMAHARA ~
レベル50
体力S 俊敏S 魔力S 防御S 幸運S
ギフトスキル:騎士の恩恵 聖剣の加護
「・・・・これ、は」
「な、なんと言うことでしょうか!適正ランクS!?そ、それにこのギフトスキルは・・・」
ギネヴィアや響めく貴族や兵士達を他所に水晶玉から眩い光が零れ落ちた。それは夜の手のひらに収まったかと思うと一振りの剣に姿を変えた
「・・・剣?」
「聖剣マルミアドワーズ!!やはりそうなのですね!・・・天原夜様!貴女さまこそ勇者の素質がある御方!」
ギネヴィアの言葉に辺りから歓声が上がるが夜は困惑したように剣を握ったまま静かに俯いていた
「これは良い幸先です・・・さあ、他の皆様もどうぞ!」
笑みを零したギネヴィアの言葉に次々と皆手を翳してゆく
花谷萌々乃~ MOMONO HANATANI ~
レベル50
体力C 俊敏B 魔力S 防御B 幸運A
ギフトスキル:治癒師の心得、妖精の加護
音森陽葵~ HIMARI OTOMORI ~
レベル50
体力C 俊敏A 魔力D 防御B 幸運A+
ギフトスキル:鷹の目 奇術師
橘六実~ MUTUMI TATIBANA ~
レベル50
体力A 俊敏B 魔力A 防御B 幸運A
ギフトスキル:天性の魔女 詠唱破棄
「では次の方・・・」
「お、私だね」
ギネヴィアの言葉に三雲は立ち上がり水晶玉に手を翳した
すると、水晶玉が先ほどとは違い禍々しい光を放ちだすと皆と同じくメニュー表示のような文字が浮かび上がった
早蕨三雲~ MIKUMO SAWARABI~
レベル50
体力A 俊敏C 魔力C 防御B 幸運E---変じて悪運S+
ギフトスキル:剣豪 祟り龍の呪い
イレギュラー: 呪詛値S
「・・・・・・・おん?」
「・・・・こ、これ、は・・・・」
表示された文字にギネヴィアや周りの貴族達の顔や兵士達の顔が青ざめていく
そして水晶玉から禍々しい黒い光が現れたかと思うと一振りの刀が三雲の前に現れた
「おー!日本刀!すっごいかっこいい!王妃様この刀は名前なんーーーー」
刀を握りしめ三雲がギネヴィアを見た瞬間、
「この者を殺しなさい!!!」
「・・・・・は???」
顔を青ざめ怯えたように叫ぶギネヴィアの言葉に武装した兵士達が槍を構えて取り囲んだ。
初作品になります。よろしくお願いします。