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孤独

作者: りのす屋

孤独って言われて腹が立った。

なぜ?

図星だったからよ。なんで隠してたのにわかったの?親だから?

わかったんじゃなくただ言ってみただけ?

嫌がらせ?

私には子どもも孫もいる。

仕事も趣味もたくさんある。友達もいる。

孤独なはずないじゃないか。

孤独なのはあなたでしょ?お母さん。


わたし?わたしはこのマンション中、友達だらけよ。孤独だなんて思った事ないわ。みんな1人。1人者同志仲良くやってる。

焼肉屋でランチしてお肉おかわりしてたくさん話して次は珈琲店で豆を挽いておいしい珈琲を淹れてもらってお喋りしながら頂くの。

香りが素晴らしくて。たまにクッキーをつまむの。

合うのよ。とっても。

その後スーパーで夕食を買うの。もちろんお野菜中心よ。みんな食べ物には気をつかってるわ。

外は雨…

傘ないし杖だしタクシーで帰るのよ。

タオルが2枚座席に置いてあって自由に使っていいのよ。マンション前で下車。一滴も濡れないわ。

雨の日の外出もOKよ。

何処が孤独だって言うの?

食事会、カラオケ、手芸に勉強会。

毎日何かしらあって忙しくて。

孤独?なんて言ってる暇ないわよ!

あーそうですか。

お互い歳を重ねてもバタバタで良かったわね。

はい。そうですね。その通り!

ピッ!


ねぇ大ちゃん、ばぁばに会いたい?

今、会ってるよ。

うん。ずーっと毎日会いたい?

うん!会いたい!

じゃあママにばぁばに会いたい会いたい!って言ってね。

うん!わかった。

ばぁばも毎日大ちゃんに会いたいわ。

ばぁば、寂しいの?孤独なの?

孤独?寂しい?誰がそんな事言ったの?孤独じゃない!寂しくもない!

あ!ごめんね。大ちゃん…ばぁばの事、嫌いにならないでね…


その後、娘からは全く連絡なし。

保育園が決まる迄の1年半、週3回働きながらしんどくても早朝から満員電車で行き帰りは帰宅ラッシュ

の中座れず1時間!

朝食のおにぎり。昼食、夕食まで持って行った。

離乳食期は作った。

一緒に遊ぶおもちゃや絵本もたくさん持って行った。

思い出すと悲しくなる…いや、切なくなる…

胸が締め付けられる…

大ちゃんに会いたい!

あの柔らかな笑顔、お手手、足、髪、ほっぺ。

抱っこしてゆらゆらしないと寝てくれなかった時期。やっと寝てベッドにそーっとおろすやいなや泣き出してしまって又抱っこ。トイレにも行けなかった。うんちやおしっこも変えてきれいに拭いて。

ちょっと泣きそうな日もあったけど元気に通えた日々。

あれだけ頑張って頑張ったのに!

いったい、何だったんだろう。

4月、保育園に通い出した途端全くの連絡なし!

一切なし…

悲しいを通りこして呆れてしまう。

こんな手のひら返しがあるのか?

しかも今は私は仕事を辞めて家にいると知ってるのに。

しびれを切らして2人がいる土曜日にラインをした。少しだけ遊びに言ってもいい?と遠慮がちに。

今、買物に出てるから!

何時位に帰るの?


???返信なし?

とうとうその日は行けなかった…

バカみたいにずっとラインを見てた私。かわいそう…

返信なし…こなくていいって事?だよね…

あまりに切なくて自分がかわいそ過ぎた…

なんて奴!

私は仕事だって土曜日休みのとこを探してる。日曜日はパパがいるから会える日が土曜日しかない。

会いたくて会いたくて仕方ない気持ちなんか知るよしもないのか…

わかってくれない!会わせてくれない!

わかったよ。


決行!

こうするしかない。

娘がやってるSNSから情報を集めた。毎金曜日、保育園が終わってからピアノを習ってるらしい。

幼子にピアノ?かわいそう…

レッスン後、先生とママ達はお話しを。

その時子ども達は…入口の待合室で遊んでる。

今だ!

入口扉を少し開けて…

大ちゃん…と呼ぶが来ない。お菓子を見せても来ない。

クッソォー!と、中に入り棒付き飴を大ちゃんの口にほりこみかかえて外へ。

待ってもらってたタクシーに乗ると

出して!早く!急げ!出せ!


すぐには帰らずいったんモールへ。

大ちゃんは泣かなかったので運ちゃんもすんなり走ってくれた。が、一言…

ヤバいことしてるんじゃないですよね?


モールでアイスを食べてから家までは大好きなバス。大ちゃんは私の顔を覚えててくれた。

ばぁば、ばぁばと。

涙、涙、涙…

家に着くとすぐに2人でお風呂。

おもちゃもたくさん浮かべてある。

風呂上がりに冷えた水をゴクリ。

すでに作っておいた物を並べてさぁどうぞ。

いただきます!

大ちゃんは大喜びでパクパク〜

おいしい〜

嬉しい!ありがとう!と又涙、涙、涙…

スイカも食べて涼しいお部屋でサラサラの布団に潜り込む。

そこでやっと、ママは?

ママはね、今夜は用事があってね。ばぁばの家に大ちゃん1人でお泊まり出来るかな?

出来る!おやすみばぁば。

凄いねーおやすみ〜

ぎゅーっと抱きしめる。

娘からは夜に電話、ラインがあった。大ちゃんがいなくなったと。泣いて大騒ぎ。

もちろん、

知らないわよ。と、一言返した。


あんたが悪いのよ。


翌朝大ちゃんは機嫌良く飛び起きた。

用意してあった服を着ておにぎり、味噌汁食べて。

さぁ!出発!

新幹線に乗って遊びに行こう!

ちんかんせん!わ〜い!行こう!

車窓の景色に大はしゃぎ。

遊園地ではたくさん遊んで笑って食べて転んで又遊んで。

私は残りの人生分遊んで笑って食べて抱きしめた。

大好きなにゃんこちゃんホテルに宿泊。

子ども用ベッドの上にはネコだらけ。

小さなイス、テーブル、おもちゃ、お菓子、服に靴まで必要な物は全てある。


大きなお風呂に一緒に入って頭を洗ってる時

ばぁばーずーっとここにいたい

ママがいなくてもいいの?

ママも一緒がいい

泡あわの湯舟につかりながら

大ちゃん、ずーっとは無理かなぁ。これから小学校、中学校に行ってたくさんのお友達と遊ばなきゃ。

今だけ。小さな小さな大ちゃんがばぁば大好き!抱っこして!って言ってくれる今だけ。


レストランで楽しい夕食。

久しぶりに声をあげて笑っての食事はとってもおいしい。

食後は大きなまぁるい花火がドン!って重厚な音とともに夜空へ。

体中に響きわたる音。

ピューパチパチパチ!パラパラパラ…そして匂い。

大ちゃんを見ると横顔がピンク色に輝いて元気いっぱいではつらつとした驚きの声をあげた。

キャーッ!凄い!おっきい!キレイ!

そのキラッキラの笑顔が私に向けられた。

あー

もうその笑顔を見れただけで充分だったのに

ばぁばありがとう!

ってそのかわいい口で声で言ってくれた。

世界一、宇宙一幸せだった。

神さまステキな素晴らしい夜をありがとうございます。もう充分です。

その手はギュッと大ちゃんの手を握ってた。


ママ!!

大ちゃん!!


娘がいきなり私を突き飛ばし大ちゃんを抱きしめた。

倒れた瞬間、大空にまんまる花火がドドン!と咲いた。

さようなら。


私は幸せだった。

こんなにも誰より何より素晴らしい大ちゃんに出会えた。ギュウッーって何度も何度も抱っこ出来た。ばぁばばぁばと呼んでくれておまけに大好きって言ってくれた。

まぁるいふわふわの小さな手で私の手を握りしめて一緒に歩いた。

虫が飛んで来るとその小さな手でしがみついてくれた。

もう全てが愛おしい。

この子の為ならなんだって出来る。


それなのにこの数ヶ月一度も会えず、会いたい、抱っこしたい、話したい、笑顔を泣き顔を見たい。

孤独だった。

ずっと孤独だった。

もう空っぽだった。

もうだめだと自分でわかった。

こんな事になるなら何故大ちゃんに会わせたの?

会わなければもう少し生きて寿命を真っ当出来たのにね。

娘への恨み。そして感謝が入り混じる。

涙が三筋流れた。

涙、涙、涙。


お母さん、孤独だったのはあなたじゃなく私だったね。

大当たり!

ありがとう、お母さん。

よく気づいてくれたね。

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