第二話 ハティへの昇格
この作品に興味を持っていただきありがとうございます。
序章『3つの伝説』を読むことで、本編への理解がより一層深まると思います。
楽しんで読んでいただけたら幸いです。
さぁ、次の伝説を語ろうか。
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二つ目の伝説はハティだ。
ハティはスコルと同じく元々はレッサーウルフだ。
もちろん一つ目の伝説「スコルの誕生」に出てきたあのクマたちより小さい。
だが、ハティは通常のレッサーウルフよりも一回り小さい個体だった。
今回は彼女と呼ぼうか。
彼女、そして彼女の仲間たちは、
ある山の麓の光が届かないとされる洞窟に住んでいた。
彼女たちの他にはトカゲやコウモリ、ブラックドラゴンまでも住んでいた。
洞窟の中の生き物たちには互いに害がないように暮らす暗黙のルールがあった。
しかし、外は違う。外の生き物たちは住処や餌を探しに度々入ってきた。
まぁ、ほとんどはブラックドラゴンに追い出されていた。
ある日、突然変異のクマが近隣の山に住み着いたらしい。
ただ、彼女たちが住んでいる山とは違う山だったので、
彼女たちは気にせず住んでいた。
しかし、ある明け方森中が騒がしくなった。
なんとあのクマと狼たちが全面戦争を始めたそうだ。
その影響で様々な動物たちが逃げてきた。
始めは、弱い生き物たちが。
次は、少し強い生き物たちが。
徐々に逃げてきた。
逃げてくる生き物が増えてきて、森が生き物だらけだ。
ついには洞窟にも影響がでてきた。
様々な動物が住処を求め洞窟にやってきた。
しかも、強い生き物たちまでもだ。
洞窟の生き物たちとは違ってよそ者はもちろん暗黙のルールを知らない。
だんだんと洞窟にいた生き物たちは洞窟から離れていった、
コウモリなどの弱い生き物たちはよそ者に食べられたものもいるという。
何日も、何日も、何日も。
洞窟から完全にいなくなる生き物たちまでもが出てきた。
洞窟にすんでいた仲間たちがいなくなり、
普段は温厚なはずのブラックドラゴンたちが怒り始めた。
ブラックドラゴンたちはよそ者を次から次へと、洞窟から追い払った。
だが、ブラックドラゴンたちが動いた影響で洞窟が壊れ始めた。
洞窟で土砂崩れが起こったり、巨大な穴ぼこが出てきたりと
洞窟の至る所で洞窟の形が変貌した。
生き物たちも無傷なわけがない。
洞窟のあらゆる場所で死体がころがり、一部の死体は腐っていた。
彼女の仲間たちも無事には済まなかった。
様々な理由で死んでいき、ついに両手で数えれるほどまでに減少していった。
一度怒ったブラックドラゴンたちは静まることがなかった。
そんなある日、洞窟の外の空から、燃え盛る物体が降ってくるのが見えた。
彼女たちは不思議そうにそこに集まった。
彼女は神がくれたものだと無意識に思った。
普段から神を信じない彼女がそう思うほどに、精神が衰弱していた。
彼女は直感で感じた。
これは、食べれるものだろうと。
食べなければならないものだろうと。
そして、彼女は食べた。空から降ってきた物体を。
彼女は地面に転がり苦しみはじめた。
辛かったのだろうか。悲鳴さえも聞こえた。
数分後、彼女は動きを止めた。
仲間たちは不安そうに彼女を中心に集まった。
一向に起きようとしない。
仲間たちは彼女が死んだと判断し、その場に背を向け移動しようとした。
中には泣く仲間もいた。
突然、後ろから音がした。
仲間たちはブラックドラゴンたちが来たかもしれないと恐る恐る後ろを振り返る。
仲間たちは驚いた。
彼女が起き上がったのだ。
仲間たちは彼女を凝視した。
彼女は仲間たちの反応を不思議に思い、仲間たちが見ている自分を見た。
彼女も驚いた。
ただのレッサーウルフの自分が
ドラゴンたちと並ぶ...いや、それ以上の圧倒的なオーラを放っていたのだ。
不思議なほどに彼女の体には力が湧いた。
彼女はブラックドラゴンを静めようと決心した。
彼女は仲間を連れて、ブラックドラゴンたちがいる場所まで移動した。
そして、ブラックドラゴンたちの前に立った。
その瞬間、仲間たちは驚いた。
怒り狂っていたはずのブラックドラゴンたちが彼女にひれ伏していたのだ。
ドラゴンたちは神以上の存在ではないとひれ伏さない。それが常識だ。
しかし、レッサーウルフの彼女にブラックドラゴンたちがひれ伏している。
仲間たちは理解した。
彼女が、ブラックドラゴンたちがひれ伏すほどの存在
神同然の存在になっただと。
月が昇る、暗闇の夜。
月の光を、太陽の光を通さない洞窟。
そんな洞窟で、彼女は、、、
夜を司る狼 初代ハティへと昇格した。
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こらが2つ目の伝説「ハティへの昇格」だ。
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