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猟銃免許を取る人が増えていた

作者: xoo

 近年、日本全国で熊(ヒグマ、ツキノワグマ)出没のニュースが多く報じられた。報道の文脈の中で「ハンターが高齢化している」というものがあり、「困った時の自衛隊頼みか、でもいろいろな意味で無理だろうな」とつらつら考えていたのだが。



 ある日、お客さん(農家)から「地区の若い農家が猟銃の免許を取った」「30代40代の農家の人が、数人まとまって受験した」「全員合格した」と聞かされた。

 その地区は若い(30代40代の)新規就農者が何世帯もいるそうだ。そして皆、結構な高学歴で(院卒が珍しくない、と)行動力もあり、「野生動物の食害が酷い→自分たちで猟銃免許取って駆除しよう」となったそうだ。


 「いやあ、行動力あるなあ」と感心して、「これをネタにエッセイでも書いたろ」と資料を集めていたら、2024年12月の道内ニュースで「猟銃免許の受検希望者が受検定員を上回った」というものがあった。全道で1212名の定員を超え、特に札幌を含む石狩振興局(他県の支庁に相当)管内では定員240名のところ475名の応募があった、とのこと。そのため翌3月、追加の試験が行われたそうだ。


 北海道環境生活部自然環境局のサイトにある統計資料を見ると、2006年度(平成18年度)の第一種猟銃免許(火薬を使った散弾銃、ライフル銃)の新規免許者は218名(うち女性8名)、これが2022年度(令和4年度)は529名(女性101名)に増えている。通算の免許者は7364名→2012年度(平成24年度)6,425名→6,838名であるので増加に転じているようだ。また、女性が8名→101名と増えており、裾野の広がりを感じさせる。



 そういや「クマ撃ちの女」というマンガが話題になっていたなあ、とか、荒川弘「銀の匙 Silver Spoon」で富士先生が教師を辞めて猟師になったなあ、とか、思い出した。


 北海道では鹿の食害で農業被害が年間48億円とも言われている。2022年度の駆除実績33,297頭だが全く追いついていないようだ。農業だけでなく、JR北海道なんて毎日3〜6頭ずつ礫いているから列車は遅れるし車輪の異常摩耗で運休するし、と経営を悪化させる一因にもなっている。当地でも列車か警笛鳴らしまくっていることがあるが、100%、鹿が線路に立ち入っているのが原因。


 ヒグマには昨年(2023年)、10人やられた(死傷した)。1300頭とったけど、今年は3月中旬からもう出てきている(道南の乙部町)。


 2023年7月に駆除されたヒグマ「OSO(オソ)18」は、雑食だけど本来は植物や木の実を主に食べるはずの個体が、(事故や駆除で)死んだ鹿を食べ、肉の味を覚えて牛を襲い、偏食になったと考えられている(2023年10月15日放送のNHKスペシャル「OSO18 “怪物ヒグマ”最期の謎 」より)。一方では、「栄養価の高い農作物を食べて子グマを3頭産む母グマが増えた」(文春オンライン2022年9月25日『「巨大ヒグマがダダッと駆け降りて『グワァ』と…」4回ヒグマと遭遇した“ハンター御用達”職人が最も危険を感じた瞬間』より)との報告もある。



 2023年1月、千葉県議会の超党派の議員連盟が害獣イノシシ駆除に自衛隊の協力を求めて防衛省に陳情した、というニュースがあった。確かに自衛隊は、過去にヒグマやトドを駆除したことがあったが、1962年の北海道別海町ではヒグマに毒餌を喰わせて弱らせた後に地元ハンターと二人で撃ち、1960年代のトド退治ではF86戦闘機の機銃で追い払った(射撃訓練の名目)とのこと。自衛隊単独ではやっていない。

 2021年6月、陸上自衛隊札幌丘珠駐屯地の正門からヒグマに侵入された時は、民間ハンターに駆除してもらっている。


 自衛隊が害獣駆除に向かない理由は、法的な規制、害獣駆除を訓練していないこと(民間ハンターがヒグマを撃つには5〜10年以上の経験が必要とされる)、等があるが、何よりも適した弾薬を持っていない事であろう。

自衛隊は(というか各国の軍の弾薬は)人道的な見地から弾丸が崩れずに対象(人体)を貫通するフルメタルジャケット弾を使用する(ハーグ陸戦条約、1899年)。通常弾薬のまま軍用ライフルを用いてヒグマを撃つと弾が貫通するため、手負いにしたヒグマを逃がしてしまう可能性があり、かえって危険である。


 民間のハンターがヒグマ撃ちに使うのは着弾時に弾頭が変形して大きな運動エネルギー(ストッピングパワー)を与えられるホローポイント弾や、散弾銃の場合は単弾(スラッグ弾)が用いられる。「一発で仕留めなければヒグマに逆襲される」とのことだ。

 ただ、威力の強いライフル銃は免許取得十年後でないと所持できないため、ハーフライフル銃(ハーフライフリング散弾銃)を使用するケースも多いと聞く。冒頭の地域の農家さんも、主に駆除するのは鹿とはいえ、ヒグマも出る地域なんだよね。大丈夫なのか心配してしまう。



 警察の拳銃弾はヒグマには効かないので期待はしていないけど、以前から提言されている「警察施設内に猟銃ロッカー整備」は北海道だけでも進まないのかなあ。猟銃所持の条件に「建物に固定され、施錠できる猟銃ロッカーを備えること」「弾薬は銃と別に保管すること」というのがあり、借家住まいの人が銃を所持しにくい一因になっていたりするからなあ。



私が銃を持たない(免許も無い)理由は、①銃に対して忌避感があるから、②身体的理由、である。


①30年くらい前になるだろうか、痛ましい銃の事故があった。自宅で親が猟銃を手入れしているときに子ども(兄)が別の子ども(弟)に銃を向けて撃つ真似をしたら発砲に至り、弟が死んだ事件。親が猟銃の弾を抜き忘れていただけなんだけど、だけというにはやりきれない事故だった。自宅で銃の手入れをしなければ起きなかったんだよなあ(弾を抜いておくのは基本の基本なのだけど)。


②視力に問題がある。強度の近視+乱視+白内障になる可能性が高い(とコンタクトの検診のときに言われた)ので、自信を持って狙えない。


ハンターとしての地域貢献は、私には無理。

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― 新着の感想 ―
[一言] ご存知かもですが、「罠ガール」という、主に罠猟をテーマにした漫画もありますよ。猟以外にも地方の今をちゃんと取材してストーリーに仕立てている良作です。ピッコマなどのアプリでも3〜4巻くらいまで…
[一言] 銀匙の富士先生、かっこよかったですね。 身内で罠猟の免許を取った人がいます。職業はサラリーマンなんですけど。 こちらのエッセイを読んで、時代が変わってきているのかなと感じました。
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