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「あばばばばば」
「フフッ」
そんな事より僕がお化け屋敷が駄目過ぎる。暗くて奥に何があるか分からないしBGMもおどろおどろしい。川口さんは僕のそんな様子を見て本当に楽しそうにしている。これが終わったら呪詛の言葉でもかけようかと川口さんを睨む。
「まあ、でもこうやって女子と密着できて良いじゃない」
「えっ、そ、それは……」
まあ、確かに高校男子にとって美少女が自分の腕を組んでいるのだから刺激が強いというものだが状況が状況なだけにそれどころではない。
「ふ、ふふ、普段だったら慌てふためいている所だけど今だったら逆に頼もしいくらいだよ」
「いや、慌てる要因が違うだけじゃない……」
はい、当然のように呆れられました。僕の情けなさは今に始まった事ではないけども……。越谷さんといい川口さんといい、こんな情けない男とよく仲良くしているなと思う。しかも越谷さんに関しては僕の事なんかを好きだと言ってくれた。越谷さんは一緒にいたいからと言ってくれたけど……。
「ねえ、他の女の子の事考えてるでしょ」
「か、川口さ。いたたたたた」
川口さんは掴んでいた僕の腕をぎゅっと抱きしめる。痛い痛い、何で僕の考えている事がバレるんだ。前にもこんなやり取りがあったけど本当にエスパーなのだろうか。
「何でバレると思う?」
な、何でと言われても分かっていたら苦労はしない。普通に考えれば表情や態度に出ている事だとは思うのだが。
「何か真剣な顔して黙っている時は大体そんな感じ」
「いや、そんな事ないでしょ」
僕だって他の事で悩んだりする。結局女の勘というやつだろうか。それに比べて僕は二人が何を考えているか全く分からない。いや、僕が鈍いのだろうけど。本庄君にも言われたし。
「今は私とのデートでしょ。詰まっちゃうしどんどん先へ行くよ!!」
「ちょ、ちょっと……」
川口さんはどんどん前へ行く。当然腕を掴まれている僕はぐいぐい引っ張られている。傍から見たらお化け屋敷で引きずられている陰キャの完成だ。先へ行くと手術室のような部屋が現れた。
「い、いかいかいかにもな部屋だね……」
「いかいか言いすぎでしょ……」
手術室の奥にはドアがありその手前に手術台がある。あそこ通るの怖すぎる。僕は涙を流しながら川口さんに引きずられて進む。
手術台の横を通り過ぎようとした時、来ると思ったがお化けも何も現れない。
「あれ、ここまで何も無いね」
「何もない方が助か……」
「おおおおおお」
その瞬間、手術台の向かいから白衣を着たお化けがばっと襲いかかるように飛び出して来た。
「あびゃあああああ」
「ちょ、ちょっと春日部君!!」
僕はその瞬間、その部屋から逃げようと走り出した。結果、今度は逆に川口さんを引っ張る形になってしまう。僕は慌ててドアノブを回してその部屋から脱出する。急に飛び出した為、川口さんがハアハアと息を切らしているのを見てはっと我に帰る。
「ご、ごめん。強く引っ張っちゃって」
「あはは、全然大丈夫。怖いの駄目そうだなって思ってたのに無理やり連れてきたの私だもん」
分かってはいたが本当に情けないな僕。その後は僕が本当に怖がっていることを考慮してゆっくり進むようにした。急に走って疲れたというのもあるし。
「でも本当に苦手なんだね。夜とか一人で平気なの?」
「い、いや、それくらいは平気だよ。こんな感じで脅かされるのが苦手なだけで」
「あ〜、そういう人多いよね」
その後は楽しく進むことが出来た。当然お化けが出たタイミングは僕は飛び上がって驚いてはいたけど。




