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「お、お化け屋敷……」
そこには信じたくない現実がありました。え、僕これからお化け屋敷行くの?
「そう、お化け屋敷が何個もあるの。男子なら平気でしょ!!」
そこ、男子なら怖いのだって余裕でしょみたいなの性差別ですよと言いたくなるが情けないので止めておきます……。え、しかも何個もあるってやばくないですか。
「入場無料ならぜひ行かないとだよね。あ、しかもアトラクション代も含まれてるから安心して!!」
いや、金額の事で心配している訳ではないです。いざ行く前は気にしてましたけどそれよりこれからのお化け屋敷ラッシュが気になっています。
「それじゃあ、レッツゴー!!」
「ウス……」
僕は諦めてウキウキの川口さんの後ろについて行く。ピョンピョンと軽くステップしながら歩いて行くことから本当に好きみたいだ。何故僕を誘ったんだ……。
先へ行くと入口はどうやら普通のテーマパークといった感じだ。ただそのお横にあるポスターがおどろおどろしいお化けが写っているので間違いではないらしい。残念だ。
「受付の列、結構並んでるね〜」
入場受付前では長蛇の列が出来ていた。どうやら何分か待たないと中に入れないようだ。そうだ、この列を待っている間に聞きたい事を聞いてしまおう。
「……、で何で今日お化け屋敷のイベントに行こうと思ったの?」
「え、私が行きたいって思ったからだけど?」
「いや、何で僕を誘ったのかな〜と思って……。しかもお化け屋敷って内緒にしてたし」
僕が尋ねると川口さんはう〜んと腕を組んで唸っている。唸っている姿ですら可愛いの凄いな。
「いや春日部君、ビビリっぽいしお化け屋敷って正直に言ったら来ないかなあと思って」
「ギクッ」
「ギクッて口に出して言う人初めて見た」
僕の心を見透かされてあからさまに動揺してしまった。ていうかビビリだと思われていたのか間違ってないけど……。
「それに……」
「?」
川口さんはグッと僕との距離を縮めて真下から上目遣いで見つめて来た。
「春日部君と一緒に行きたいって思っちゃダメかな?」
「え……」
どういう意味だろう。友達と一緒に遊びに行きたいってことなのかな。僕はその言葉の意味を考える。
「アハハ、多分春日部君の考えている事、違うと思うよ」
「ええ!?」
本当に僕の考えている事を読めているのだろうか。だとしたら女子って皆読心術を持っているのかな。越谷さんにも同じ事を言われたんだよな。
「あ、もう少しで入場できそうだよ」
入場口までの列ももう少しで終わりそうになっていた。結構待っていたがようやく僕達の番が回ってきそうだ。
その後、いよいよ僕達の番になったのでいざ前に進もうとした時だった。ぎゅっと僕の腕が握られた。
「えっ」
「春日部君、行こっ」
川口さんが僕の腕を握っていた。僕が驚いている間に彼女の手によって引かれる。何が起きているか分からないが、なすがままになっていた。
中に入ると普通のテーマパークといった感じだったが、奥に行くにつれて雰囲気が変わっていった。墓地のような感じでお墓の置物や井戸といった飾りがある。ライトも暗めにされていてかなり雰囲気がある。というよりそれよりも僕は川口さんに手を握られてそれどころではない。
「か、川口さん、どうしたの?」
僕は心臓をバクバクさせながら尋ねる。急にされたからビックリしてしまった。彼女は振り返って僕を見つめてこう言った。
「今日くらい、私だって我儘言っても良いでしょ?」




