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「へ〜、越谷さんの手料理美味しかった?」
「はい……」
その後、ニッコリ笑顔の川口さんにより越谷さんの家にいって手料理をご馳走になった事を吐かされました。何とか、家で話している内容などは隠せた。当然他の人に言えるような話ではない。
「……それで二人は付き合ってるの?」
「へ?」
それまで笑顔で話していた川口さんが真面目な表情になって問いかけてくる。僕は昨日話した内容を思い出してゴクッと唾を飲み込む。
「付き合ってない」
僕が何と返事をすれば考えていると越谷さんが代わりに返答した。やはりこういった時は迷いがない。
「……ふ〜ん」
川口さんは納得したのかそれ以上、追求するのを止めてくれたようだ。まあその後もニッコリ笑顔で僕の事を見ていたので全然許してくれている訳では無いみたいだ。
「じゃあ、次は二人と晃、そして坂戸さんが一緒に遊んだ事について聞いても良い?」
「はい。ただ、この話は他の人には内緒でお願いしたいんだ」
坂戸さんが本庄君の事を好きな事を明かさないといけないのだ。あまり言い触らす事をするのは良くないと思って頼む。
「分かった!!じゃあ、教えて」
という訳で昨日の流れを大まかに説明した。様子を見ながら気をつけて話した。だがやはり面白い内容では無いのか、いつも笑顔の入間さんが真面目な顔で聞いていた。
「なるほどね〜、で春日部君は断れず協力していると」
「相変わらず女子の尻に敷かれてるね……」
川口さんの容赦ない一言にぐさっと傷付く。というか主に尻に敷いてくるのは貴方達ですよね!!と言いたくなったが当然言えない。これ以上刺されるのが確定しているからだ。
「で、どうするの。まだ協力するの?」
「いや、僕も気を使って疲れるし正直止めたい……」
今でさえ、女子と話すの緊張するのにAクラスの女帝(?)である坂戸さん相手は僕の身が持たない。
「それじゃあ、自分で断らなきゃ」
「はい……、重々承知しております」
先程までは僕と越谷さんが問い詰められていたが、今の状況は僕一人VS女子三人なので傍から見たらイジメ現場みたいになっている。その証拠に近くを歩いていた人に「あれ、何?修羅場?」と心配されてしまう始末。
「でも入間さん、大変だね。強力ライバル登場だね」
事情を知った川口さんが入間さんに話しかける。川口さんも僕達と仲良くなって来ていたため、入間さんの気持ちもいつの間にか知っているみたいだ。
「まあ、でも何時も晃は人気あるから……」
入間さんが少し落ち込んでしまう。確かにクラス内でも目立った存在の本庄君の事だ。他の女子達からも好かれているのは想像に難くない。そんな本庄君を昔から見てきていたのだ。気が気でないのだろう。
「でも本庄君って昔から彼女いないんでしょ?」
「う、うん……、今までもいないはず」
ようやく僕の追求が終わり入間さんの恋愛相談の流れになってきたようだ。三人で話し合いが始まったみたいだ。
「というか本庄って好きな人いないの?」
そんな中で越谷さんがぶっ込んできた。怖いもの知らずというか遠慮なく聞いてしまう胆力がある。
「……、いるみたい」
「えっ、そうなの?」
二人は驚いている。僕はあの登山の時に聞いていたので知っていた。果たしてその好きな人ってどんな人なんだろう。
「私の知らない人って……」
「なにそれ、本人がそういったの?」
「いや、そういう訳じゃないけど……。他の人から聞いた……」
恋愛の話になると女子は食いつきすごくて恐ろしいなと思いながら僕は聞いている。
「……、じゃあ春日部君」
「えっ」
川口さんは急に黙っていた僕の方を向いて話しかけてきた。
「男子同士なんだから春日部君が本庄君の好きな人の話聞いてきてよ!!」