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よりによって本庄君と坂戸さんが一緒にいる所を入間さんに見られるとは……。僕は何と返事をすれば良いか悩んで固まる。しかしアプリで既読をつけてしまっているため、何時までも返事をしないわけにはいかない。誤魔化すことも一瞬考えたがその二人と一緒に遊んでいる為、知らんぷりも出来ない。
「今日、僕と越谷さんと本庄君、坂戸さんで一緒に遊びました」
「……へ〜」
そのへ〜にはどれだけの思いが込められているのか考えるだけでも身震いする。僕は別に悪いことをした訳ではない……と思いたいが当然そんな返事は出来ません!!
「じゃあ、何で二人はいないで晃と坂戸さんが二人で仲良さそうに歩いているの?」
「二人はまだ遊ぶとのことで我々二人は離脱した次第に御座います」
やはり相手が怒っている時には誠意を見せなければいけないよね。固い文章にすることで相手に謝意の気持ちが伝わるはずだ。
「ふざけてる?」
「ごめんなさい。そんなつもりはないです」
逆に怒られてしまいガクンとへこむ。人生経験がないのでこういう時どうすればいいか分からないの。僕が返事してから入間さんからの返事がない。これってもしかしてまずいのだろうか。背中の冷や汗がしたたる感触がする。とスマホがバイブする。入間さんからの着信だ。これ、メッセージではなく電話で詰めるからなということですかね。僕はふうっと息を吐いて電話に出る。
「はい……」
「え、何でそんなに落ち込んでるの?」
僕の気分が声に出ているのか、逆に入間さんに心配されてしまった。メッセージの雰囲気とは裏腹に入間さんは明るい感じだ。
「いや、さっきのメッセージで怒ってるように見えるのは冗談冗談。瑠衣みたいだったでしょ?」
「確かに。越谷さんみがあった」
僕がそういうと入間さんはアハハと笑っている。というか入間さんから見ても越谷さんのイメージってそんな感じなんだなと思った。彼女、結構怖い所ありますよね。別に僕、怒らせるようなことしてないのに(?)
「怒ってはないけど何でそのメンツで遊んだかは気になるな〜」
「まあ、そうだよね」
僕、越谷さん、本庄君と三人で集まるのはまだ有り得るが、坂戸さんと一緒に遊ぶのは珍しいと思われても仕方がない。入間さんが疑問に思うのも仕方のないことだろう。
「あんまり、話すのは良くないと思うけど坂戸さんが実は……」
今日、何があったか簡潔に入間さんに説明する。その間、入間さんはフンフンと話を聞いている。
「へ〜、そんな事が、晃も隅に置けないな〜」
「で僕達が坂戸さんを妨害するのもおかしな話なので、仕方なく付き合った感じなんだよ」
僕は歩きながら通話していたが駅についてしまう。そんな長くならないだろうし立ち止まる。
「あれ、もしかして今外?」
僕の周りは駅前という事もありガヤガヤ騒がしい。仕事終わりのサラリーマン達、学生などが大勢いる。それで電話越しに聞こえてしまったのだろう。
「あ、うん。これから帰るところなんだ」
「あ、ごめんね。電話切るよ。ってあれ、もう解散してたんじゃないの?」
「え、え〜と、越谷さんの家でご飯食べてたから」
「えっ、なにそれ、家デートじゃん。明日さっきの話とその話の二つとも詳しく聞かせてもらうからね」
入間さんはバイバイとというと電話を切ってしまった。当然の如く、僕に話をしないという選択肢は無いというわけですね。僕はすっかり暗くなった空を見上げて黄昏れた。