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79 過去編6

「え、なんで……」


 昨日の今日だ。何で告白を断った事を加須君が知っているんだ。三郷さんが話をしたからとしか考えられない。


「そうなんだろ?」


「う、うん」


 僕は正直に答える。というよりもう事情を知っているようなので白状するしかないといった方が正しいのだろう。


「何で振ったんだよ?」


「……、何でそれを加須君に言わなきゃいけないのかな」


「あ?」


 僕は正直、忘れたいことを関係ない加須君に話されて気分が良くない。僕だって好き好んで振ったわけではない。


「ああ、そうかよ」


「……」


 加須くんを怒らせてしまったようだが、それよりこの話が終わる事の方が良かった。


「アイツがお前にアピールしているのなんか誰もが分かってたぜ。お前も思わせぶりな事するなよ」


「はあ?」


 僕が期待したように話を終わらせない所か、追撃までしてきて頭にきてしまった。加須君も明らかにヒートアップして煽ってきてる。


「僕が頼んでやってもらった訳じゃない!!」


「はっ、女子に優しくされて嬉しかったんじゃねえのか。陰キャ野郎がよ」


「なんだと……」


 僕が陰キャなんて分かりきってるが、ここまで言われる筋合いなどない。僕は完全にキレて我を忘れていた。


「そっちこそどうなんだ。三郷さんを好きな事なんてバレバレだったよ。その腹いせに僕に当たるの止めてくれないか!!」


「なんだとこの野郎!!」


 加須君は言いながら僕に掴みかかってきた。僕は咄嗟のことに対応できずに倒されてしまう。加須君は馬乗りになって僕を殴りつけてくる。


「ふざけやがって!!」


 僕は必死に顔を殴られないように腕を挟んでガードするしかない。流石に周囲にバレて大騒ぎになってしまう。


「おい、喧嘩だ。早く先生呼んでこなきゃ」


「なにあれ〜」


「おもしろ。動画撮ろうっと」


 僕は殴られながら周囲の能天気な声にもイライラさせられていた。そんな事よりも腕を殴られすぎて痛みがすごい。


 ただ、加須君も僕の硬い腕を殴り続けて痛いのだろう。ペースが遅くなってきた。


「なんでお前なんかの事を好きになったんだ」


 三郷さんの事だろう。行動とは反対に泣きそうな声になっている。その後、先生が抑えに来て当然の事ながら二人揃って職員室に連行された。


 僕は一方的に殴られていただけなので注意だけで済んだ。加須君はというと僕も煽った事もあるし、大事にする気もなかったので僕が頼んでお咎めは無しという事になった。僕達は大騒ぎになったこともあり時間としては二時間目終わりくらいになっていただろう。今日のところは加須君は親御さんと一緒に帰ったらしい。

 殴られた僕は親に心配かけたくないということで黙ってもらった。殴られた被害者だということで大目に見てもらえたようだ。


 どうやら休み時間のようで廊下を歩いている時に周囲の人たちから笑われていた気がする。先程のやり取りを知った人たちからすれば面白いのだろう。僕は唇を噛みながらトボトボ歩いていた。


 その後の授業はどうやって受けたのか分からない。授業中も集中出来ずに気付いたら放課後になっていた。まだ腕はジンジンと痛みがある。面倒だったから先生達には大丈夫だと言ったがこれは病院に行ったほうが良いかもしれない。


 僕は教員室に行き部活を休むことを伝えた。当然、今朝の事情を聞いているらしくその事を怒られたが帰宅の許可を得た。僕はそのまま下駄箱の方まで歩いていく。すると聞き覚えのある女子の声が聞こえてきた。


「三郷さんを争って春日部君と加須君が喧嘩になったって本当?」


「う〜ん」


 どうやら同じクラスの女子達と三郷さんが下駄箱前で話をしているようだ。どうやら僕達の事を話しているらしいので咄嗟に柱に隠れてしまう。


「なんか私が春日部にちょっかいかけたからかな〜」


「え、何それ。おもしろそうなんだけど」


「いや、あの陰キャが生意気にも振ってきたからさ〜」

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