表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/86

8

 越谷さんが何故怒っていたのかは結局よく分からないまま、授業に入り放課後になった。そういえば本庄君の用って何だったのだろうか。聞いてみるか。


 「ほ、本庄君」


 前の方の席に座っていた本庄君に声をかける。本庄君は座ったまま僕の方へ振り向く。


 「ん~?どうした?」


 「いや、そういえば、また後でって言ってたから気になって」


 「ああ、それか。別に大した用じゃないんだが……」


 「ねえ、春日部一緒に帰ろ!!」


 急に後ろから越谷さんが肩をつかんできた。いきなりの出来事に僕はぴょーっと鳴き声を出してジャンプした。脅かせないで欲しい……。ていうか、何て言った?イッショニカエロウ?


 「あ~、越谷さん、悪かったな」


 「全然大丈夫。春日部、じゃあいこっ」


 僕は無理やり服の首元を掴まれて越谷さんに引きずられる。何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!僕は慌てて自分の鞄だけは確保してそのまま教室の外まで引きずられた。当然クラスメイトはその様子を見て怪訝な顔をしていた。ううっ、そんな目で見ないで欲しい……。


 「こ、越谷さん、どうしたのさ」


 「あ、ご、ごめん」


 教室を出たところで越谷さんは我に返ったのか。パッと僕を離してくれた。一体どうしたというのだろうか。越谷さんの顔を見ると顔を赤くしているように見える。


 「春日部、ごめん。首元痛くなかった?」


 落ち着いたのだろうか。越谷さんは僕の顔を見て心配そうに聞いてきた。僕は大丈夫、問題ないと返事をする。


 「また、適当な返事して……」


 「ご、ごめんって、本当に大丈夫だから……」


 「そ、そう?なら良かったけど」


 越谷さんは何だかモジモジシテ(して)いる。さっきから越谷さんの様子が変だぞ。調子でも悪いのだろうか。越谷さんが何を言うのかと待つが。一向に話そうとしない、本当にどうしたのだろう。


 「越谷さん、で何か用があったんじゃないの?」

 

 「っ、え、えと、春日部ってこの後、用事ある?」


 「え、いや、無いよ。家に帰るだけ」


 僕がやっている図書委員は当然だが毎日当番があるわけではない。昨日やったばかりなので今日は当番がない。


 「じゃ、じゃあ、一緒に帰ろうよ」


 「は、はい!!」


 どうやら教室で聞いた言葉は聞き間違いでは無かったらしい。本当に僕と一緒に帰るつもりみたいだ。まあ、男女で一緒に帰る事は恥ずかしいが、可愛い女の子に誘われて内心バクバクしている。


 「じゃあ、帰ろ、春日部って電車だよね?家どっちの方?」


 「僕は埼玉の方だよ」


 「あ~、じゃあ、反対側だね。じゃあ駅まで一緒に行こうか」


 「了解です」


 こうして僕達は二人で並んで歩く。気のせいかもしれないが周りの生徒がチラチラとこちらを見ている気がする。自意識過剰なのだろうかと思ったがどうやらみんな越谷さんを見ているようだ。そら、僕の様なモブなど眼中にないか。


 「はあ……」


 「どうしたの?溜息なんてして」


 「ああ、いや、僕のモブ力に絶望していたところさ」


 「何言ってんの?」


 越谷さんは本当に意味が分からないといった顔で僕を見ている。僕は苦笑いしてトボトボ歩く。まあ、僕のようなモブがこんな美人と並んで歩ける幸福を喜ぶことにしようと心の中で思ったのだった。

もしよろしければブクマや高評価、感想などいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ