75 過去編2
「春日部君っていつも一人でいるけど何で?」
隣でフンフンと鼻歌交じりに歩いている三郷さんから声をかけられる。結構失礼な事を聞いている気がするがまあ、単純に何故かと気になっているだけなのだろう。
「いや、あんまり賑やかなのが得意じゃないんだ」
「へ〜そうなんだ。え、もしかして、クラスでもそんな感じなの?」
三郷さんは信じられないといった様子で僕を見ている。いや、コミュ強の三郷さんが気付かないだけでそういう大人しいやつもいるはずですよとは当然の如く言えないので何も言い返せない。
「え〜、もっとテンション上げられないの?」
「いや、厳しいかなあ……」
「でも、勉強とかバレー出来て、勿体ないよ」
「そうかなあ……」
人生初となる女子との下校というのにあまり楽しくない。まるで根暗なのが罪かのような扱いだ。それにしても、タイプが違う僕と一緒に帰ろうと誘うのは何か意味があるのだろうか。そもそも、疑問に感じた事がある。他の部員達は既に帰ってる時間なのにどうして校門にいたのか。誰かを待ってたにしても僕と今帰っているのは何でだ。
「……、もしかして、僕に何か用があった?」
「うん?ああ、何で春日部君を待ってたかって話?」
僕は肯定だとコクンと頷いた。すると三郷さんはモジモジと小石を蹴った。え、何だ、この雰囲気。
「ちょっと春日部君に興味があったからじゃ駄目?」
首を傾げながら僕を見つめてくる。僕に興味がある?何故、僕を?と脳内で混乱する。僕は訳が分からず下を向いてしまう。
「ごめんごめん。急過ぎたよね?」
「い、いや、大丈夫」
本心は大丈夫ではなかったが、あまりに情けないと思い平静を装った。心臓がバクバク鳴っているのが分かる。これって告白みたいなものか?いや、まだ興味があるといっただけだ。勘違いするなと自分を律する。その後は世間話などをして解散したがその時の記憶はあまりなかった。
次の日、普段通り学校へ行く。クラスでは仲の良い友達がいなくていつも席で本を読んでいた。同じクラスに加須君がいたがそちらは所謂、一軍と呼ばれるクラスの中心のグループにいたので僕とは関わり合いがない。正直、ずっと皆でワイワイするというのは楽しいのだろうが疲れそうだなと思っていたのであまりその事は気にしていなかった。
出来事は昼休みに起きた。僕は大人しく席で本を読んでいたので周りの状況が分かっていなかったのだ。急に肩をトントンと叩かれた。
「うわっ」
「あっ、ごめんね。来ちゃった」
そこにいたのは三郷さんだった。何で隣のクラスの三郷さんがここにいるのだろうと率直に思った。
「ど、どうしたの?」
「いや〜、春日部君のクラスでの様子を見に来たんだ〜」
どうやら昨日のやり取りで僕がクラスでどう過ごしているか気になったらしい。なるほどと納得して前を見ると、教卓の前でクラスメイトと話している加須君と目が合った。何故か怖い顔をしていると感じた、というよりも僕を睨んでいるのか。
そう感じた時にはもう加須君は僕の事を見ていなかった。どうしたというのだろうか。
「春日部君、何処見てるの?」
「え、あ、いや、何でもないんだ……」
先程の加須君の様子は何だったのか。それともあれは自分の気の所為だったのか。その時の僕には何も分からなかったんだ。
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ここからちょっと重い話になるかも注意。




