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 その後、ボウリングは本庄君の圧倒的実力によって僕達は負けた。三ゲーム程したが当然全て負けてしまった。ゲームの間、様子を見ていたが本庄君と坂戸さんはゲームの中で距離が縮まった様に見える。元々、本庄君は坂戸さんの事を苦手と言っていたが今日でその印象も多少変わったのではないだろうか。


「楽しかったな〜、この後どうする?」


 受付で精算をした後、本庄君が僕に尋ねてくる。坂戸さんの方を見るとウィンクをして僕にアイコンタクトをしてきた。なるほど、気を回せということか。


「いや、僕は帰るよ。越谷さん一人だとあれだし送ってくよ」


「うぇ!?」


 越谷さんは顔を赤くしてコクっと頷いた。坂戸さんをチラッと見ると他の二人に見えないように隠れてグッとサムズアップをしていた。僕の返事を聞いた本庄君はう〜んと考える。


「そっか〜、俺はどうしようかな」


「じゃ、じゃあ、私ちょっと買い物行きたいから。本庄君付いてきてよ」


「え?女子の買い物とかわかんねえけど良いのか?」


「もちろん!!じゃあ、いこっ」


 坂戸さんは本庄君の腕に抱きついた。本庄君はおわっと驚いていたが、坂戸さんはそのまま、出口まで引っ張って行った。本庄君は片腕を持たれて傾きながら僕達に手を振りながら外へ出ていった。


「……なるほど、アンタが珍しい事を言うもんだから何だと思ったらそういう事」


 僕は本庄君達に手を振っていたが、背後から越谷さんの怨嗟の声が聞こえる。怖すぎるので振り向きたくない。僕のそんな思いを知ってか知らずか越谷さんは僕の横に並んで僕の顔をゴミを見るかのような冷たい目で見られた。


「す、すいません」


 僕は知っている。こういう時は素直に謝るしか無いことを。頭を四十五度下げて謝意の気持ちを示す。


「ふん、じゃあ、約束通り、私を送ってってよ」


 謝ったからだろうか、怒りも少し収まってくれたのかもしれない。僕はホッとため息をついた。


「分かったよ。それじゃあ駅まで行こうか」


「何言ってんの?」


 越谷さんの返事に首を傾げる。え、送ってくんだから駅まで一緒に行くで間違ってないはずだよなと思ったためだ。


「送ってくんでしょ。私の家まで」


「え?ま、まあ全然いいけど」


 送ってくのは良いけど越谷さんの家って遠いのかな。自分の家まで帰るのに夜遅くなるのは避けたいんだけどな。


「私の家、電車で三駅だから近いよ」


「あ、そうなんだ」


 僕の考えている事を読まれたのだろうか。そこまで時間がかからない事が分かったので越谷さんに付いていくことにした。越谷さんの家は僕の最寄り駅と逆側ではあるが近いしそこまで問題にはならないだろう。


 僕達は駅まで付いて二人で電車に乗り込む。いつも逆方向だから一緒に電車に乗るのは初めてだ。電車の中は結構混んでいて僕達は扉前で吊り革を持って立っていた。


「それで、あの二人を一緒にしろって頼まれたの?」


 予想はしていたが、先程の件を追求されてしまった。仕方がない。


「いや、そんな頼まれた方はしてないよ。僕がああしただけだよ」


「ああ言う事するなって私が頼んだのに、坂戸さんの言う事聞くんだ……」


 越谷さんは相変わらず冷ややかな目でこちらを見つめる。


「そ、それは悪いけどさ、坂戸さんも本庄君への気持ちは本当だろうし……」


「それはそうだろうけどさ……」


 僕達はお互い黙ってしまう。別に越谷さんも坂戸さんの事を邪険にしたいわけではないだろう。ただ、入間さんの気持ちを考えた時に二人が付き合うようなことがあればと言うことだろう。


「まあ、いいや、後で詳しくその話するから」


「?」


 この後ってどういう事だろう。家に帰るだけだよなと考えるがあまり深くは考えなかった。その後、越谷さんの最寄り駅に付いた。駅から家まで徒歩五分とかなり駅近だと言うので僕は安心した。


 外へ出るとまだ雨はやんでいないようだ。二人で傘をさしながら並んで歩いた。しばらくすると、「家、あそこだから」と越谷さんが指を指した。そこにはかなり大きな家が建っていた。もしかすると越谷さんの家は結構裕福なのだろうか。


「それじゃあ、僕はここで」


 無事、越谷さんを家まで届けたので駅まで引き返そうとする。


「何言ってんの。ここまで来たんだから、家に上がっていけば」

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