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「越谷さんも協力してくれるの?」
坂戸さんがニヤニヤ笑いながら越谷さんを見ている。ああ、どうしてこんな事になってしまったんだ。
「いや、話を聞いてみないと分からないけど」
僕はガックリとしてふとクラスを見回すと他の生徒達は不安そうな顔でこちらの様子を伺っているように見える。
「おい、春日部、何の騒ぎだ」
「い、いや、これは……」
こちらの様子を伺っていた本庄君がこちらの席まで聞いて尋ねてきた。
「あ〜、本庄君〜♡」
すると先程まで越谷さんに煽っていた坂戸さんが急に猫撫で声を出して僕と越谷さんは愕然とする。だが、この状況は正直助かる。僕一人では何も出来ないのは恥ずかしいけど……。
「おい、坂戸、二人にちょっかいかけてるんじゃないだろうな」
「そ、そんな事ないよ〜。ね、春日部君?」
「う、うん」
坂戸さんは何とか取り繕うとしているみたいだ。どこか冷や汗をかいていようにも見える。そういえば、本庄君、坂戸さんのような強引な人は苦手って言ってた気がするしあまり好きじゃないのかもしれない。
「……、それならいいけど」
本庄君は自分の席まで戻っていくようだ。その様子を見た坂戸さんも席までしょぼんと大人しくなり自分の席に戻っていった。どうやら助かったみたいだ。
「春日部、ちょっと」
「はい……」
越谷さんがちょいちょいと手間抜きして教室の外へと促される。どういう事か説明しろということだろう。ここは従うしか無い。僕、女子の尻に敷かれすぎでは?
「で、なんだったの?」
「え〜とですね……」
廊下に出るなり尋ねられた。僕は正直に何があったか説明した。話を進めていくうちに越谷さんの顔が渋くなって行く気がした。
「また、面倒な……、でもその噂の本庄のおかげで話無くなってるといいけど」
「そうだね……」
「もしなんか言われてもアンタ、断りなさいよ」
「何で?」
僕は何故そこまで念押しされるのか尋ねる。
「いや、そんな面倒事、アンタがやる義理もないし、それに……」
「それに?」
「遥香の気持ち知ってるでしょ」
「あっ」
そうか、入間さんも本庄君の事が好きなのに、坂戸さんの手伝いをするということは結果的には入間さんの邪魔になってしまうということか。
「アンタが断りきれない、気弱なのは知ってるけど。アイツの手伝いするのだけは駄目」
「う、うん……」
越谷さんは言う事だけ言ったら満足したのか教室に戻っていった。僕は天井を見つめてどうするか考え、しばらくしてから教室まで戻った。
そして放課後、また事件は起きる。
「春日部〜、今日この後暇か?」
「あっ、本庄くん、何もないけどどうして?」
帰りの会が終わった瞬間、本庄くんが鞄を持ってこちらまで来た。
「いや、そういや俺達あんまり外で遊ぶことないから遊ぼうと思ってさ」
「え、いいの? 遊ぼう遊ぼう!!」
僕は中学の出来事以来、男友達と遊ぶ事など無かったのでとっても嬉しい。
「え〜、いいな〜、それ」
僕達が話し合っていると前から坂戸さんがこちらに来て会話に混じってきた。
「……、坂戸、何か用か?」
「あっ、ごめんね。二人で遊ぶなら私も混ぜて欲しいな〜と思って」
先程までウキウキしていた僕の脳から何かが崩れていく音がした気がした。
「……まあ、断るのもあれだけど。春日部は大丈夫か?」
「え、ま、まあ」
越谷さんには協力するなと言われているが流石にこの状況で坂戸さんを拒絶するのはいくらなんでも不味い。ここは一緒に遊ぶしか……。
「ちょ、ちょっと待って」
隣の席の越谷さんが立ち上がり挙手した。
「アンタ達が行くなら私も行く!!」
こうして四人で遊ぶことが決まってしまったのである。
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