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「本庄君に彼女がいるかどうか……?」
「そう、春日部君知ってるかな〜って」
急にそんな事聞かれても困るし、そもそもいるのか知らないしなあ。入間さんと付き合ってるわけじゃないから多分いないと思うんだけど。まあ、ここは正直に言ってさっさと教室に戻るか。
「う〜ん、僕は知らないなあ。じゃあ……」
僕はそういって教室に戻ろうと背を向けた瞬間、襟元を掴まれてしまい首が締まってしまい、ぐえっと唸ってしまう。
「ちょっと、何戻ろうとしてるんだよ」
坂戸さんの方を振り向くと睨んでいる。先程までのぶりっ子のような話し声ではなくドスの利いた声色に変わって滅茶苦茶怖い。
「ええ……」
「それじゃあ〜、本庄君に聞いてきてよ〜」
いや、今更話し方戻しても意味ないでしょと思った。
「な、何で、坂戸さんが直接聞いたほうがいいんじゃ……」
「そんな恥ずかしい事出来ないよ〜」
気付くのが遅れたけどもしかして面倒事に巻き込まれているみたいだ。しかもこの様子だと言うことを聞かないと解放してくれそうにないのではないか。まあ、僕は陰キャなので断れる訳が無い。
「まあ聞くだけなら……」
「あ〜、あと私と本庄君が仲良く出来るように便宜を図ってくれない?」
僕は呆れて物が言えなくなる。今日初めて話した女子にそこまでしなければいけないんだろうか。ちなみに坂戸さんは先程からニコニコしているのが怖い。
「い、いや、何で僕がそんな事を……」
「ええ、クラスメイトと仲良くしたいのって普通でしょ? あっ、そっか」
「?」
坂戸さんが何かを納得したようだが、僕が面倒に思っていることなど気にもとめていないだろう。嫌な予感がするな……。
「私と春日部君が話している姿を見たら彼女さん勘違いしちゃうもんね!!」
「はいぃ?」
意味が分からなすぎて僕は首を傾げる。そして彼女はそのまま衝撃的な事を話し続ける。
「私が越谷さんに春日部君を借りるって許可を取ればいいよね?」
「えっ」
僕が驚いて固まった瞬間に坂戸さんは一人で教室の方までスタスタ歩き始めてしまった。これ、もしかして越谷さんに何か言う気なのか? それって不味く無いか? 僕は慌てて坂戸さんを追いかける。
「ねえ、越谷さん、春日部君の事ちょっと借りていい?」
「はあ?」
時既に遅し。坂戸さんを止めようと追いついた時には坂戸さんは席についている越谷さんと話し始めていた。
「さ、坂戸さん、越谷さんには関係ないよ……」
「あっ、そうなの? じゃあ協力してもらえるってこと?」
「ちょっと二人して何の話をしてるの?」
僕は慌てて坂戸さんを静止させる。この話に越谷さんまで関わったらとても不味い。
「え〜、春日部君にちょっとお願いしたいことがあって一応彼女さんに許可取った方がいいかなって」
坂戸さんはニッコリ笑って話すが、何か裏というか煽ってる気がする。坂戸さん、もしかして越谷さんの事嫌いなのか。
「か、彼女じゃないけど……」
「なんだ〜、じゃあ越谷さんに許可取らなくて良かったんだ」
「っ、アンタ、何なの?」
越谷さんが怒って立ち上がってしまった。本当に良くない。僕の責任でもあるんだ。間に入らないと。
「坂戸さん!! 越谷さんには関係ないよ。僕が協力すればいいんでしょ」
「ふふっ、春日部君ありがとう!!」
坂戸さんは満足したようで自分の席に戻ろうと背を向けた。僕はそれを見てホッとした。その瞬間だった。
「ちょっと待って」
僕の隣から声がする。僕は内心でガクッと落ち込む。何となくの展開が分かったからだ。坂戸さんが越谷さんの方へ向き直る。
「私にも春日部に話した内容聞かせなさい」
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不穏な雰囲気だけどそんな変な事にはならないようにします




