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その後、僕達二人は無事助け出された。入間さんは足の怪我と頭を打って気絶をしたため念の為病院に入院するという。それほど大きな問題ではないらしいが万が一のためだろう。
僕は軽く足を捻った程度だったので大丈夫だと伝えたのに、有無を言わさず一緒に病院に行かされた。検査も問題ないが合宿には戻らないということになってしまい、その後は家に直帰することになった。
親がわざわざこちらまで車で迎えに来てくれたので今は車中で携帯を見ている。理由としては本庄君や越谷さん達に申し訳ないとメッセージを送ったところ、逆に皆に心配されて気を使わせてしまった。僕は窓の外を見ながらため息を付いた。合宿所の近くの病院から自宅までは結構距離があったため、家についた頃にはかなり遅い時間になっていた。
「はあ……」
最初はどうなるかと思ったが合宿が存外楽しくもっと参加したかったなと思いため息をつく。だが、入間さんこそ僕よりもっと辛いはずだ。入間さんにもメッセージを送ったが返事は来ていなかった。そんなことを考えているとスマホがバイブした。どうやら通話の通知のようだ。画面を見ると越谷さんの名前が出ていたので慌てて電話に出る。
「こ、越谷さん?」
「あっ、春日部、今って電話大丈夫?」
「平気平気、そっちこそ合宿所でしょ?大丈夫なの?」
「まあ、本当は駄目だろうけど外にいるから平気」
それは果たして大丈夫なのだろうかと思ったが、電話の理由が気になるのでスルーする。
「怪我は平気?」
「僕は軽く捻っただけだし大丈夫。歩くのにも問題ないし」
「良かった……」
電話越しにホッとした様子が伝わってくる。やっぱり心配かけちゃったよなと感じる。
「そういえば遥香の様子聞いた?」
「僕は全然聞いてない。大丈夫なのかな……」
「それ先生に聞いたんだけど検査も得に問題なくて数日で退院出来そうだって」
「良かった〜」
心配していたことが解消されて安堵する。
「春日部が助けに行ったんでしょ?」
「い、いや、僕が飛び込んだところで対して何もしていないし意味がなかったかも……」
現に先生に滅茶苦茶怒られた。上尾先生からお前まで遭難していたらどうするんだと怒鳴られてしまった。まあ確かに素人の僕が行ったところで仕方がなかっただろう。
「そんなことないよ」
電話から越谷さんの優しい声が聞こえる。こんな声は初めて聞く気がする。
「そりゃ、春日部まで危ない目にあったらふざけんなって感じだけどさ」
「はい……」
僕は電話越しなのに何故か正座をして反省の意思を示す。まあ意味がないんですけど。
「でも遥香も崖から落ちてどうしようってなった時にアンタがいて安心したんじゃない?」
「……」
「いつもオドオドしているのにさ……」
「……こ、越谷さん?」
電話から鼻をすする音が聞こえる。越谷さんもしかして泣いているんだろうか。
「遥香のピンチだから仕方ないとはいえさ。もう無茶な事しないでね……」
「わ、分かった。心配かけてごめん」
僕達はその後、何分だろうか。お互い黙ってしまった。何を言えばいいか分からなかったのだろう。
「あっ、そういえば」
「どうしたの?」
僕はしばらく黙っていてキャンプファイヤーの事を思い出した。越谷さんが伝えたいことがあるという話ではなかっただろうか。
「い、いや、キャンプファイヤー行けなくてごめん」
「ああ、そんな事……」
おっと、余計なことを言ってしまっただろうか。こういう時何を話せばいいの分からないの……。
「いいの、ジンクスなんかに頼らずに伝えようと思ったから」
めちゃくちゃ久しぶりの更新ですみません。
これから日々書いていきたいと思います。




