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越谷さんを無事合宿所まで送り届けた後、休憩時間になった。越谷さんも睡眠不足という事で自室のベッドで休んでいるらしく、次の時間に行われる飯盒炊飯には参加する予定らしい。僕はというと男子寮の自室で休んでいる。
「は~、この時間暇だな」
僕の上の段のベッドにいる小川君が呟いている。いや、大人しく休んでいればいいと思うのだがサッカー部の小川君からしたら先ほどのジョギングなど楽すぎて物足りないのだろう。元気が有り余っているようだ。
「まあ、そうだな。トランプでもやるか?」
「それは夜やるだろ」
本庄君と小川君でこの空き時間何をするか悩んでいるようだ。二人でうーんと悩んでいるので僕も一応何か暇つぶしないか考えてみる。
「そうだ!!女子寮行こうぜ!!」
三人で悩んでいると小川君がとんでもない事を言い始めた。確か規則で男子が女子寮へ行くのは禁止されているはずだ。当然、本庄君が却下と答えて小川君がガクンとへこんでいる。
「あ、でも女子寮はダメだけど食堂は行けるんじゃない?」
男子寮と女子寮は別の棟だが、連絡通路があり中央に食堂があるという構造になっている。ちなみに夜間は食事が終わったらその連絡通路に鍵がかけられて移動出来なくなるらしい。寝静まった後男女が別の寮に移動させない為の措置だろう。
「流石、春日部、頭良いな……」
小川君から褒められるがそんな事で褒められても全く嬉しくない。だが、小川君はすっかり元気になったようでベッドから降りて準備運動をし始めた。何で?
「よし、二人も行こうぜ」
「え~、だるいな」
「僕も別に……」
ノリノリな小川君とは対照的に僕と本庄君は全くやる気がない。この後、飯盒炊飯あるんだから疲れたくないというのが本音だ。
「お前らは良いよな!!彼女いるから余裕で!!」
小川君は何故か泣きながら僕達を責め立てる。全くそんな事を言われる筋合いがないので僕達は困惑する。
「俺、彼女いないけど」
「僕も」
「なんなん、お前ら鈍感系主人公なの?」
小川君の追及は続く。正直、僕達は面倒だなと感じてきたので小川君の言う通り、強制的に三人で食堂まで行く事になった。いや、ベッドでゆっくりしたかったな……。三人で食堂に行くと数は少ないものの何人かの男子生徒と女子生徒がいるようだ。
「おい、小川来たのはいいけど、知り合いの女子がいなきゃ話も出来ないんじゃないか?」
本庄君が疑問に思ったのか小川君に問いかける。確かに、折角来ても女子と話が出来ないんじゃ取り越し苦労になってしまう。
「ふっ、バカだな。本条は……」
「なんだと?」
「そんなの知り合いじゃなくてもナンパすればいいだろ!!」
「バカはお前だ……」
こういうの同じ学校の人でもナンパするものなのか、陽キャの考える事は全く分からないなと思う。
「それに知り合いはいるみたいだぞ」
「ん?」
そう言うと小川君は指を指す。指した方を見ると女子グループの一角に入間さんと川口さんがいる。
「入間さんは本庄のだとしても、同じ班になった川口さんとお近づきになるチャンスじゃねえか」
「いや、遥香は俺のじゃないし、それに川口さんは……」
本庄君は何故か僕の顔を見てう~んと考えている。え、僕が何なんだろうか。そんな事をしている間に小川君は入間さん達の方へ歩き始めてしまった。僕達はため息をつきながら小川君についていく事にした。
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次回は明日にします。