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越谷さんと水族館へ行った何日か後、放課後に図書委員の仕事で図書室で本の片づけをしている。川口さんは別の棚に本を戻している。図書室には勉強をしている人、図書室の本を読んでいる生徒が3人程の静かに本のめくる音が響いている。僕はこの落ち着いた雰囲気が好きだ。


 少しまでの僕なら暇だなあと感じていた事もあった。だが今はクラスにいる時は越谷さんが隣で話しているし、昨日は放課後水族館に行った。勿論その間は楽しく過ごしているが偶には落ち着きたい時間も欲しいなと感じ始めていた。多少変わったといってもやはり根は変わらない陰キャなのだ。


 僕と川口さんは片づけを終えて、図書室の受付まで戻る。こういう時は僕たちは別々に本を読んで過ごしているので僕は鞄から小説を取り出し読み始めようとする。


 「ねえ、そういえば」


 川口さんが珍しく僕に話しかけてきた。何だろうと思いながら川口さんの方へ向く。


 「前に言ってたけど、その後クラスの唯一の友達とどうなったの?」


 そういえば越谷さんを唯一の友達だと思っていたが本条君の事を忘れていた。まあ、越谷さんのイメージが強すぎたせいだと心の中で本条君に謝る。


 「ああ、席隣だからよく話すよ」


 「へ~、いいじゃない。それで遊びには誘えたの?」


 「えっ」


 そういえば、川口さんと一緒に出掛けた時にクラスの友達に遊びに誘えと指示された事を思い出した。すっかりその事を忘れていた。


 「あっ、その顔は忘れてたって感じね」


 僕の表情を見て察せられた。え、僕ってそんな分かりやすいやつなのか。もしくは越谷さんにもよく心を読まれるし今時の女子は読心術でもあるのかもしれない。


 「なんだ、じゃあ、まだ一緒に遊びに行けてないんだ」


 「い、いやあ、向こうから誘ってくれて遊びに行ってきたよ」


 僕がそう答えると川口さんはおっと感心している。ふふ、どうだい、僕だって友達と遊びに行くことは出来るんだよ。


 「ふ~ん、男子同士で何処行ったの?」


 「男子同士?水族館だけど」


 「ん?」


 川口さんは何か聞き間違えたかとぶつぶつ独り言を話している。どうしたんだろうか。


 「えっ、ごめん、もしかしてだけどその友達って女子なの?」


 「う、うん、そうだけど」

 

 川口さんは僕の返答を聞いてガーンと衝撃に撃たれたように放心している。え、一体どうしたっていうんだ。僕みたいな陰キャが女子なんかと友達で驚いているってことだろうか。


 「ま、まあ、女子の友達くらいいても普通よね……。す、水族館は何人で行ったの?」


 「え、二人でだけど」


 「デートやんけえ!!」


 いきなり川口さんが叫びだして図書室にいた数人が驚いてこちらを見ている。川口さんはそれに気付いたのか、図書室にいる人に向かって頭を下げた。それでも興奮が収まらぬのか。フッー、フッーと荒い呼吸をしている。


 「か、川口さん、大丈夫?」


 「え、ええ、大丈夫よ」


 そういうと川口さんは思い切り深呼吸をして息を整えた。こうして何度か深呼吸をしただろう。僕はその間何も言えず川口さんの様子を眺めていた。


 「やっと落ち着くことが出来たわ」


 「おお、おめでとうございます」


 僕がそう言うと川口さんは思い切り僕を睨んだ。ええっ、僕何も悪い事していないよね……。そこから川口さんによる僕への追及がしばらく続く事になるのだった。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ふ、川口さん、大丈夫?」 もしかして 「か、川口さん、大丈夫?」 かな?
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