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「で、何を隠しているわけ……。まあ、大体分かるけど」
「えっ」
流石、エスパータイプの越谷さん。こちらの考えなどまるっとお見通しだ!というわけか。
「そんな話をしたって事は、どうせ二人で会ったんでしょ」
「はい……」
どうやら、僕のプライバシーは存在しないみたいだ。まあ、川口さんのこと以外詮索されることはないんだけども。で、今の越谷さんの顔は眉間に皺が寄ってかなり怖い。
「あんたってさ……私とか……」
越谷さんが何かを言おうとした瞬間、キーンコーンと始業のチャイムが鳴る。まずい、もう次の授業の先生が教室に来ていてもおかしくない。
「越谷さん、早く教室戻ろう!!」
「……、分かった」
なぜかムスッとした越谷さんを連れて急いで教室に戻る。その後、授業中も何かを考えている様子だ。もちろん、授業の内容ではないだろう。なぜなら先生に問題の答えを当てられそうになった時、先生を睨んでターゲットを僕に変更させたからだ。いや、これ僕とばっちり受けてるな?その後の授業もどこか上の空の越谷さんに対して僕も触れない方が良いと思い声をかけるのをやめていた。
「なあ、春日部」
「本庄君、どうしたの?」
昼休みの時間、僕は本庄君にちょっと外へ出ないかと言われて教室の外に連れていかれる。
「越谷さん、ボケっとしてるけど、おまえ、また何かしたの?」
「ごめん、何で僕が何かしたのが前提なの……」
「いや、ああなる時って大体、おまえが怒らせてるじゃん」
そんな馬鹿な。でも僕と話してから機嫌が悪くなったのは確かっぽいんだよな。でも何が悪いのか分からないのに謝るのは下策。かと言ってこのまま放置するわけにはいかないよな。
「あれ〜、二人でどうしたの?」
「入間さん、それに川口さんも」
二人で廊下にて悩んでいると、昼食を誘いに二人がAクラスにまで来たみたいだ。
「中入らないの?」
「いや、越谷さんが何か黄昏れてて……」
僕がそう言うと、川口さんはクラスの中を覗く。その瞬間、クラスの男子達がちょっと盛り上がる。もう最近、昼にこちらのクラスに来るのは珍しくないのだが、いまだに反響がすごい。
「ああ……、分かった。私が話をしてくるよ」
「え、川口さん分かるの?」
「女の勘で大体ね。じゃあ、今日は私と越谷さんの二人で話してくるから」
川口さんはそう言うと教室に入って越谷さんと少し話をして、昼食を持って二人で教室の外へ出てしまった。
「あ〜、じゃあ、私は春日部君借りるけど、晃は良い?」
「え、俺はいいよ。てか春日部やっぱお前が悪いんじゃん」
「なにがあ!?」
「春日部君、良いから、お昼ご飯取ってきて」
「イエス、マム」
僕は一言物申す前に入間さんに促されて弁当を取って来る。入間さんは食堂の方だろうか、廊下を歩き出したので後へついていく。
「ここで良いかな」
「ここは……」
行き先は食堂ではなく、校舎裏の人気が少ない所であった。僕は何故こんな所でと不思議に思いながら入間さんの反応を待つ。
「この草むらで食べよ。ちょっと食べにくいかもしれないけど」
「う、うん」
僕は言われた通り、草むらに腰掛けて弁当を広げる。でもこういう静かな所で食べるのも良いかもしれないななどと考える。
「じゃあ、食べよっか」
「うん、じゃあいただきま……」
「で、晃の好きな人って分かったんでしょ?」
笑顔で弁当を食べようとしていた僕はその場で固まってしまった。




