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「川口さん、何か言った?」
川口さんが何か呟いていたのは分かった。歩きながら話していた事もあってか、実際何を言っているのかは聞き取れなかったのだ。
「ううん、良いの」
僕は正直気になったが川口さんが言うつもりがないのなら仕方無い。それ以上追求する事を止めた。先程からドキドキさせられて仕方ない。
こんな事をしながらしばらく歩いていると図書館に辿り着いた。五分程しか歩いていないが緊張からか余計に汗をかいていたのでさっさと中に入る。
「結構、大きな図書館みたいだね」
都会の図書館ということもあり中はかなり大きいし人も多い。本棚はぱっと見ただけでも数十架は並んでいる。それでも図書館ということもあり中はかなり静かなようだ。
「これだけ大きな図書館だとワクワクするね」
「書店とはまた雰囲気が違って良いよね」
お互い、読書好きということもありテンションが上がる。とはいえ、図書館なので大きな音はたてられないので小声で話す。当然と言えば当然なのだが学校の図書館とは比べ物にならない本棚の多さで圧倒される。
「ゆっくり周ろ」
そう言って川口さんは僕の手を握って引っ張る。なんか今日はなんというかスキンシップが多い気がする。川口さんに何かあったのだろうか。凄い気になるけど聞かない方が良いんだろうな。
「何か言いたそうだねえ」
「へっ」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。川口さんは慌てて口に指を当ててシッーと静かにするよう促される。僕はそれを見て口を閉じる。
「で、どうしたの?」
川口さんは僕の耳元に小声で耳打ちしてくる。僕は急に耳元に空気が入ってびっくりしてしまい、「ぴょっ」と鳴き声を出してジャンプしてしまう。そんな事をしているのでいい加減、他の利用者に迷惑になるので外に出ることにした。僕が騒いでしまっているので仕方がないのだがこんなにある本を前に出なければいけないのは大変残念だ。
「もう、静かにしてよ」
「大変、申し訳ございませんでした……」
図書館の外に出て、偶々、近くにあったベンチに二人並んで座る。川口さんは珍しくぷんぷん怒っている。僕はそれに対して深々と頭を下げて謝罪する。
「で、どうしたの?」
「い、いや、今日の川口さん、何かスキンシップというか多いなと思って」
「うん。だって我儘するって言ったでしょ?」
確かに今日会った時に手を繋いでそんな話になったけども、まだ続いているということか。でも僕と手を繋いで嬉しいものなのだろうか。
「はあ〜、もう越谷さんには先を越されてるみたいだし私も覚悟を決めなきゃか」
川口さんはふか〜いため息をして呆れている。覚悟を決めるというのは何の話だろう。僕は彼女の次の言葉を待つ。
「私と越谷さんが初めて話した日の事を覚えてる?」
「う、うん。僕と越谷さんが放課後二人で出かけてた時にばったり、川口さんと遭遇したんだよね」
「あれ、偶々じゃないんだ」
「えっ」
どういう事だ。あの時、僕達は放課後一緒に何処かへ行こうという話になったのだから誰にも伝えていないはずなのに。
「あの日、春日部君が女の子と二人で下校する姿を見たの」
「そ、そうだったんだ」
あれ?でも僕達が遭遇したのは学校ではなく、学校の外に出たあとの本屋だったはずだ。それはどういう事なんだろう。
「春日部君が疑問に思った事も教えるよ」
僕が何かに疑問に思っている事が顔に出ていたのだろう。川口さんは続けて話す。
「春日部君が女の子と二人で帰っている姿を見て、私、誰なんだろう。どんな子なんだろう。付き合っているのかななんて気になっちゃって」
「ど、どうして……」
「私も春日部君が好きだから……」
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一ヶ月ぶりになってしまいすみません。




