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とまあ、川口さんとこんなやり取りをしながらショッピングを楽しんでいたが、大体周りきってしまったので店から出ることにした。
「春日部君は行きたい所無いの?」
「う〜ん」
僕としては本屋に行ければ十分なので返答に困る。ただ、行きたい所無いと正直に答えたらマズイ事だけは分かる。とはいえ全く思い浮かばない……。
「ないの?」
「い、いや、ちょっと待ってね」
ここまで遊んできたけど正直、お小遣いも厳しいしどうしようと悩む。あまりお金をかけずに遊ぶ方法などあるのだろうか。スマホを見て周辺の地図を確認する。するとお金をかけずに行ける所があった。
「あっ」
「どうしたの?」
「近くに図書館があるみたいなんだ。行ってみない?」
流石に男女で図書館へ行くことなど無さそうだが、読書も好きな彼女ならと思ったがどうだろう?
「良いじゃん。近くってどの辺りなの?」
「歩いて五分くらいかな」
「よ〜し、じゃあ、れっつごー」
川口さんはまた僕の腕を組んで引きずって歩く。僕が誘ったのに何故……。僕達は外へ出た。建物内とは違いかなり暑くなってきている。
「ごめん、暑いよね」
「五分だけでしょ。気を使わなくて良いよ」
川口さんはニッコリ笑って平気だよと言う。かえって気を使わせてしまっただろうか。僕達は並んで歩く。流石に暑いのか僕の腕は解放してもらえました。
「でもどうして、図書館なの?本好きにも程がない?」
「い、いや、お恥ずかしい限りなのですがお小遣いが……」
「ああ、でもそれならウィンドウショッピングでも良かったんじゃないの?」
そう言われればそうだ。別に買わなくても眺めるだけでも良かったんだ。それならわざわざ川口さんを暑い外に出す必要も無かったのではないか。僕は指摘されてしまいず〜んと凹む。
「ああ、全然悪くはないんだよ。私もここの図書館は行ったことないから楽しみだし」
「か、川口さん……」
うう、川口さんは優しいなあ。これが怖い女子だったら「ハア?ありえないんだけど。ぶっ飛ばすぞ」くらい言われているかもしれない。
「それに気になってる人と一緒に行けば何処でも楽しいよ……」
「……うん?」
え、どういう事なんだろう。聞き間違いか?女性に慣れていないから勘違いしてしまいそうになるんだけど。僕は内心、心臓がばくばく鳴っているのを感じる。
「男子にそういう事言っちゃうと勘違いしちゃう人もいるから……」
僕は平静を装い苦言を呈す。健全な男子高校生はすぐ勘違いしてしまうし、それに川口さんは相当モテるのだ。大変なことになってしまうのは想像に難くない。
「春日部君は今の聞いてどう思ったの?」
「え」
どう思ったの?どういう意味で聞いてきたんだ。川口さんが僕の事を気になっていると言われて何と感じるか。
「ど、ドキドキしたよ。すごく」
「ふ〜ん。ドキドキしてくれたんだ」
僕の返答が起きに召してくれたのか川口さんは満面の笑みになっている。ヘマをした訳ではないみたいでホッとする。その証拠に川口さんルンルンだからかスキップしながら歩いている。
「早く行こうよ!!」
笑顔の川口さんはスキップをしているからか僕より大分前に進んでいた。僕はハアハアと息を切らしながら慌てて彼女に追いつく。すると川口さんはこちらを向いて一言呟いた。
「私、越谷さんにも負けないから」