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 その後、何十分かけて何とか川口さんを泣き止ませる事に成功した。今は落ち着いて話もちゃんと出来るようになっている。


「川口さん、大丈夫?」


「大丈夫。ごめんね……」


 僕が泣かせてしまったようなものだが何とかなって良かった。僕は平気だよと返してこの場を離れることにする。泣いている所を周囲に見られて居心地が悪い為だ。


「次、何処行きたいの?」


「う〜ん、買い物でも行く?本屋とか行きたいんじゃないの?」


 流石、川口さん分かっている。この施設にはかなり大きな書店が入っているといるらしく行きたいなとは考えていた。


「行きたい!!けど、川口さんは?」


「何言ってるの。私だって本好きだし見たいよ」


 お互い、図書委員同士という事もあり大きな書店が大好きなのだ。ちなみに田舎の小さな古書店みたいな所もテンション上がる。


「よし、じゃあ行こうか」


 今、いた階層より上の階に書店があるというので二人でそこを目指す。大きな施設という事もありエスカレーターで移動だ。川口さんに前に立ってもらい僕が後ろだ。確か、女性をリードする時はこの方が良いとネットで見たことがあった……気がする。


「春日部君、何か買いたい本でもあるの?」


「いや、特に無いよ。僕は本との出会いは一期一会だと思ってるから」


「それ、女の子相手にも大事にしなきゃね」


「……」


 いや、女子相手にも大事にしているつもりなのだが出来ていないのだろうか。失礼の無いように出来る事はやっているつもりだったのに。


「僕、人に優しくしているつもりだったんだけど」


「それ、友達としてでしょ。女の子相手って言ってるじゃない」


 それって何か違うのだろうか。男子、女子の友達を大事にするって同じではないのだろうか。難しくて分からないな。本屋に女子の気持ちが分かる様な本置いてないかな。そんな事を考えていたらエスカレーターが目的の階になったので降りる。そこから本屋に向かう。


「おお」


 目的地に着いた時、予想より大きな書店があった。やはり都会の本屋はスケールがでかいぜ。横の川口さんを見ても目が輝いて見える。


「よし、じゃあ僕は小説見に行くから、また後でごうりゅ……」


「はい?」


 あっ、これもしかして僕地雷原踏みました?川口さんの首が四十五度傾いて僕を見ている。それ首折れませんか?


「何で、別々に行こうとするの?」


「ええっ、だって同じ本好きとはいえ、きっと趣味は違うでしょ?そうしたら別々で見に行った方が良くないかな?」


「良い訳あるかい!!デートなんだから一緒に行くの!!」


 川口さん、また口調が荒くなってますわよ。学園のマドンナともあろうかたが随分野蛮な物言いですこと。いや、この脳内を見られたら僕、殺されるな。


「そ、そうなの?じゃあ、一緒に行きますか……」


「もう、もし学校の男子達が私と一緒に買い物行くってなったら、大喜びで荷物持ちまでやってくれるんじゃないかな」


 それ、友達じゃなくて最早従者じゃない?と思ったがまた怒らせては堪らないので黙っている。まあ、でも確かに川口さんの事を好きな人達はそこまでやってくれそうだ。


「じゃあ、川口さん何か持とうか?」


「いや、文面通りに捉えすぎ。そういう事じゃないから」


 難しいな。正解ではなかったようだ。僕に荷物持ちをやってほしいという訳ではないらしい。


「はあ〜、女心が本当に分かってないよね〜」


「むっ、じゃあ、僕が急に手を繋ぎますか、と聞いても気持ち悪いでしょ?」


 呆れられてつい、変な事を口走ってしまう。やば、この言動が気持ち悪いかと思い謝ろうと思っていると。


「えっ、じゃ、じゃあ、繋ぐ?」


 何か、予想と違う反応だった。

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