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「そんな除け者になんて……」


「でもでも、二人だけの世界作るじゃん!!」


 二人だけの世界って何だ……。まあ、何となくのニュアンスは分かる。二人でイチャイチャするな的な意味だろうか。


「気の所為だよ」


「い〜や、嘘だね。それに越谷さんが春日部君の事好きなのも分かってるんでしょ?」


 それを聞いて黙る。流石に僕が気付いていないって風に見せかけるのも無理があるか。それでも越谷さんの話を川口さんに打ち明ける訳にもいかない。


「……、僕は今誰とも付き合ったりするつもりはないんだ」


「……どういう事?」


 僕は川口さんにも過去の事を話す決意をする。僕は深呼吸をして彼女に語りかける。僕が話している間、彼女はずっと黙って聞いていた。


「……、それで越谷さんとも付き合う気が無いってこと?」


「うん」


 呆れただろう。越谷さんも呆れていた。自分でも情けないって分かっている。女の子が勇気を出して告白してくれたのに僕は保留だなんて本当に情けない。


「ふうん。それで越谷さんは何て言ってたの?」


「え、なんで」


 な、なんで、彼女の事は会話に出していないのに何故先に話していると分かったんだ。やっぱり川口さんはエスパーなのか?


「その反応、やっぱり話してたんだ」


 や、やられた。カマをかけられていたんだ。そうと気付かずに僕が反応したことで完全にバレてしまった。


「まあ、分かってたよ。私より越谷さんの方が仲良いもんね」


「そ、そんな事は。どっちが仲良いかなんて……」


 僕は友達に優劣なんて付けたくない。越谷さん、川口さん、それに本庄君や入間さんだって僕の大切な人達だ。


「分かってないみたいだから言うけどさ。友達に優劣はない。そりゃそうかもしれない。でもさ恋人って沢山いる女子の中から一人、この人と付き合いたいって思うことじゃないの?」


「……」


 僕は黙る。今まで考えもしない事だったからだ。それはそうだ、僕は恋人なんて作りたくないとさえ思っていた。やっと自分が思っていた事が言語化された。そんな気分だ。


「僕は……、恋人が欲しいと思っていなかったんだ……」


「なるほどね……。まあ、最初に仲良くなったと思った女子がそんなんで、他人を信用できなくなっても仕方ないか」


「……、僕は皆のことを信用しているよ」


 三郷さんの事を言っているのは分かった。だがそれで他の人達が信用できなくなったと思われるのは心外だったのだ。


「でもそうじゃないの?もし次、付き合ってそのトラウマの人みたいな女子だったら嫌だって思ってるんでしょ」


「そりゃ、そう思ってるかもしれない。けどそれで信用できないだなんて」


「もし越谷さんと付き合って嫌な思いをしたらって怯えてるんじゃないの?」


「違う!!」


 僕は叫んでからハッとした。それに気付いたのは川口さんがポカンとした顔をしていたからだ。しかも僕はいつの間にか立ち上がっていた様で慌てて椅子に座った。その様子を見て川口さんはしょぼんとしてしまった。


「ご、ごめん。さ、叫ぶつもりは……」


「ごめん。私、感情的に……」


 川口さんは涙を浮かべているのが見えた。まずい、怖がらせてしまった。僕は慌ててフードコートにある紙おしぼりを持ってきて手渡した。


「春日部君、ごめんなさい。私酷い事を……」


「い、いや、違うんだ。僕が熱くなってそれで……」


 僕は腕をシャカシャカ振って大丈夫だよとアピールした。川口さんは泣いているので当然スルーされる。その後、僕は彼女が泣き止むまで側を離れなかった。

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