表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/124

78.休暇明け(3)


 ガランとしていた教室に、次々と人が集まっていく。

 銀の鍵のおかげで、誰も疲れていない。王城とかで配られたのだろうか。




「おおー。お前生きてたんか!?」


 現れたテオが、開口一番にカトリーナを指さして言った。相変わらずのテオにカトリーナが「悪い?」と言い返す。


―レスターとは大違いだわ。せめて「人に指を差してはいけない」っていう常識は無いのかしら?



 言い返したカトリーナに、テオは、丸くしていた目を吊り上げて、


「そんな事言ってないだろ!」


 と、睨みつけた。


「喧嘩は止めて。怖いから……」


 テオの近くにいたファンソンが怖々(こわごわ)と二人―主にテオを止める。


「トレンスさん。口は悪いですが、テオはあなたを心配していたんです。でも、無事だったので良かったです」


 ファンソンが言うと、テオが決まり悪そうに顔をしかめる。


「なっ、ま、まぁ、そうでも無い事も無い」


 テオの挙動不審さに、カトリーナは思わず笑ってしまう。


「心配してたの?それは悪かったわ。喧嘩を売られたと思ったから」

「売ってねぇ……いや、何でもない」


 テオはそう言うと、フイッと背を向けてカトリーナから離れた席に座った。


―悪い人じゃなさそうだけど……。ファンソンが言うように、口が悪いのよねぇ。


 カトリーナはテオの背中を見ながら、残念に思う。




 喧嘩を仲裁してくれたファンソンにお礼を言おうとしたが、彼女も、すでに離れて席に着いていた。


 ファンソンは怖がりな少女だったが、この数ヶ月でレーム学園の校風に染まり、臆病ながらも、自分が正しいと思う行動を取る様になっていた。


カトリーナとテオを仲裁したのも、己の良心に基づいた結果なのだろう。元の性格も相まって、カトリーナや、他者との関わりは少ないけれど。


 その変化を知ってから、カトリーナはファンソンの事を、勝手に見直していたのだった。




 椅子に座った時、不意に視線を感じる。


 視線の方を見ると、マルガレーテがこちらを見ていた。

 カトリーナと目が合うと、マルガレーテは、手に持った扇をはためかせて目を逸らす。


―何かしら?気のせい?


 話しかけようか迷ったが、丁度、エステル姉妹が転移してきた。




「ご機嫌よう、カトリーナ様。お変わり無いですか?」


 デイジーがカトリーナの前の席に着いて声を掛ける。エイミーはその隣に付いて「お久しぶりです、カトリーナ」と言った。


「御機嫌よう。居残りも結構楽しかったわ、ご両親は元気?」

「ええ。あ、そういえばお手紙ありがとうございました。レーム学園で新しいお友達が居るって知って、お父様とお母様も喜んでいました。おかげで二人を安心させられましたの」


 デイジーがクッキーの入った袋を差し出す。


「頂いたはちみつで作ったハニークッキーです。お母様がカトリーナ様にと」

「わぁ、美味しそう!後で頂くわ」


 クッキーを貰うと「そういえば、ハスティー様は?」とデイジーが聞く。


「エル……あ、えーっとハスティー卿は、まだ来てないわ」


 エル、と呼ぶのは二人だけの時にしている。ラトリエルの方はかく、急な愛称呼びは、ちょっと恥ずかしいからだ。それについては、ラトリエルも承知している。


 慌てて言い換える様子を、デイジーとエイミーが生暖かい目で見守るも、カトリーナは二人の視線には気が付かず、ラトリエルの姿を探した。


―まだ来てないみたい。帰る時は無事だったみたいだけど、この前倒れた時も来る時だったし……。


 もしかして、また倒れているんじゃ?

 そんな考えが浮かんで不安になる。


「ちょっと植物園に行ってみる。この間みたいな事があったら大変だから」


 銀の鍵を使って転移しようとすると、教室にまた新しく人が来た。


―エルかもしれない!





お読み頂きありがとうございます。

次回も読んで貰えると嬉しいです。


よろしければ評価★★★★★やブックマークを

お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ