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47. ようやくレーム学園へ(5)


 マルガレーテの後は、テオが呼ばれて魔法ゲートを通り抜け、カトリーナが最後の一人となった。

 

「カトリーナ・トレンス。前へ」


 コルファー先生に言われて魔法ゲートの前に立つ。


 自分が消える不安は少しも無かったが、エステル姉妹やラトリエルが、この先に辿り着いているのかが心配だった。


 特に魔力量が少ないのがほとんど確定したラトリエルの事は、ことさら不安だ。


 カトリーナは深呼吸をして色々な不安を落ちつかせる。まずは自分が魔法ゲートを通らない事には、何も始まらない。


―私の魔力量は()()()()()()だから絶対に大丈夫。みんなが無事でいる事を祈るしかないわ。


 カトリーナは魔法ゲートに向かって歩き出す。本来なら壁にぶつかるはずが、先に進んだ子ども達と同じく身体が壁をすり抜けた。


 固い石壁に触れたはずなのに、何故かカーテンに顔を撫でられているような不思議な感覚がする。

 


-----------------------------------------------------------------------------------------



 魔法ゲートを通ったのは一瞬の事だった。


 突然、視界が開けてカトリーナは森のような場所に辿り着く。ここが、コルファー先生が言っていた植物園のようだ。


 足を踏み入れた者を死に追いやる聖地ミコランダに辿り着いたけれど、カトリーナの身体に変化はない。今のところ、カトリーナの中に罪悪感は存在していないようだ。

 

―案外、呆気なく着いたわね。もっと特別な……派手な演出とかがあると勝手に思っていたわ。



 コルファー先生の説明にあった案内を探しつつ、見たことの無い植物を興味津々に眺めていると、カトリーナの元に青白い光がやってくる。


 光はカトリーナの周りをくるくると回ると、道案内をするかのように少し進んでその場にフヨフヨと留まった。


―あれが案内かしら。何か看板が立ててあるとかじゃないのね。神秘的で妖精の国っぽいわ。


 この光が妖精なのかはわからないけれど、カトリーナの心は弾む。光の後を付いて行くと、植物園を抜けた。


 そのまま少し歩くと、ホルムクレン王城とはまた違った、荘厳なお城のような建物が見えてくる。古代から存在する王城に比べると、比較的新しい様式だ。


 その建物こそレーム魔法専門学校―レーム学園の校舎だった。

 校舎の入り口に到着すると、案内の光はカトリーナの目の前に近づきフッと消えた。案内はここまでのようだ。


―やっとここに、レーム学園に来れたのね。


 カトリーナは感慨深く思いつつも、感傷に浸るのはまだ早いと気を引き締める。

 その瞬間、重い扉は独りでにゆっくりと開き始めた。





 扉が完全に開ききるのに、時間はかからなかった。カトリーナはゆっくりと歩を進める。 

 校舎に入って直ぐはロビーになっていて、先に着いた子ども達が揃っている。


 その中でデイジーがいち早くカトリーナに気が付くと、彼女にしては大げさに「カトリーナ様!よかった、ご無事で」と言ってハグしてきた。


 カトリーナは戸惑いつつも抱擁を返す。

 エイミーも、こちらに駆け寄って来た。


―よかった。二人とも元気そうね。


 エステル姉妹の様子を見て、カトリーナは安堵の息をつく。他の子ども達を見回すと、皆、変わりはなさそうだった。



 魔法ゲートの前で醜態を晒したアザミも相変わらずの仏頂面で、男爵令嬢のジゼルに乱れた自分の髪を直させている。


 大人しそうなジゼルには、アザミの小間使いを断れなかったようだ。


 アザミの髪を引っ掴んだ張本人であるマルガレーテは、カトリーナの方をちらりと見ると、やっと来たとでも言うように目を細め、広げていた扇を閉じる。




 カトリーナは一番の不安の種―ラトリエルの姿を探したが、どこにも見当たらない。最初にレーム学園に着いたはずのデイジーに尋ねる。


「ねぇ、ハスティー卿はどうしたの?私が最後のはずなんだけど……」


 そう聞くとデイジーはぴたりと表情を固めた。妹のエイミーも気まずそうに、カトリーナから顔を逸らす。


 カトリーナは、二人の反応で何が起こったのかは察したが、それが勘違いであって欲しいという願いを持たずにはいられなかった。


 答えを待つカトリーナに、デイジーは声を振り絞って話す。


「ハスティー様はここまで来ることは出来ました」

「来れたって事は消えた訳じゃないのね!」


 最悪の想定をしていたカトリーナは、一瞬安堵した。

 けれども、事態が最悪な事に変わりない事をデイジーは告げる。



「ハスティー様は魔法ゲートを抜けて直ぐに、血を吐いて倒れたそうです。次にゲートを抜けたレスター様が、担いでここまで運んで来られました」




お読み頂きありがとうございます。

次回も読んで貰えると嬉しいです。


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