39. 夜更かしの終わりと一人飯
エイミーが本の山を抱えて戻って来た後も、カトリーナ達は暫く夜更かしをした。ラトリエルが持ってきた乾パンを食べつつ、話し込んでいると時間を忘れたのだ。
話の内容のほとんどは、アザミへの悪口。
かなり性格の悪い会合だと思いつつも、カトリーナはこの時間を大いに楽しんだ。
楽しい時間には必ず終わりがある。
今回それは「みんなー、そろそろ寝ないとコルファー先生の説教が始まるよー」というメディアン先生の忠告だった。
「うら若き少女達のー、青春を邪魔するのはー、気が引けるんだけどねー」
メディアン先生はそう言った後、ラトリエルの存在に気が付き「おやおやおやー」と愉快そうな顔をする。
「やるじゃん、ハスティー君。こんな夜更けに美少女に囲まれちゃってー」
メディアン先生のからかいに、ラトリエルだけじゃなく、カトリーナ達も顔が赤くなった。
「ただー、この状況をコルファー先生が見たら激怒するだろうからー、本日はここまでー。解散ー」
メディアン先生の号令のもと、その場は解散となった。
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夜更かしの翌日。
朝食の時間、カトリーナ達―特に他3人はとても眠そうにしており、結局は睡魔に勝てず、昼前にはそれぞれの部屋で昼寝をすることになった。
とはいっても、カトリーナは3人に比べるとあまり眠くはない。昨日、変な時間に眠った影響だった。
それでも3号室に戻ってベッドに寝そべると、だんだん瞼は落ちていった。
結局、カトリーナが目を覚ましたのは昼食の時間ぎりぎりの時間。
髪を整えて、ラトリエルに貰ったベストに袖を通して3号室を出る。
ラトリエルとエステル姉妹、それぞれの部屋の扉をノックしたが、どちらも返事は無い。
―皆は昨日、一日中起きていたから疲れているんだわ。
夕食の時にまた起こしに来ようと、カトリーナは一人で大食堂に向かった。まだ時間はある。パンくらいは食べられるだろう。
幼少期に食べられなかった分を補う様に、食べられる時に食べなくてはならない。
―アザミみたいなデブは死んでも嫌だけど、瘦せっぽちはもっと嫌だわ。この前みたいに、押されただけで捻挫するなんて、弱すぎるもの。
食事の時間がもうすぐ終わるのもあって、大食堂には4人しかいなかった。
その内の一人はベルトリーノ公爵令嬢で、細かくちぎったパンの欠片を優雅に口に運んでいる。
食事をしているだけで絵になるこの令嬢は、マルガレーテ様と他の貴族令嬢達に呼ばれていた。
マルガレーテは大食堂に現れたカトリーナに一瞥もくれない。カトリーナがそこに居ようと居まいと、興味も関心も無いとでもいう様に。
けれども、他の者達は違う。
カトリーナの姿を見ると、そのまま恐怖に身を固めた。彼らは急いで食事を終わらせると、バタバタと大食堂を出て行く。
―きっとアザミの話を聞いているのね。仕方がないわ。他人からしたら、私はルームメイトを手に掛けた本物の危険人物なんだから。
それも事実なのだから、どうしようもない。
反省も後悔もしていないけれど。
カトリーナは気にせずにトレイにパンとスープをのせて、適当に座ると一人黙々と食べ始めた。
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