2.忌み嫌われた魔力持ち令嬢による反逆(2)
庭での騒ぎを知った両親は、一人自室に戻っていたカトリーナの元へ血相を変えて駆け込んで来た。
「カトリーナ!貴様、エレナに何をした!!」
大事な娘を傷つけられて、怒り狂った父親が鼻息を荒げて、カトリーナに詰め寄る。
この父親がカトリーナの事情を一つも聞かずに、こちらを悪役にすることにも、とっくの昔に慣れていた。
父親の手がカトリーナの顔を叩こうとした瞬間―彼の直ぐ真横を大きな氷塊が掠め、カトリーナの部屋の扉を吹っ飛ばし、廊下の壁にねじ込んだ。
―やった、上手くいったわ。
カトリーナは、初めて「標的」に放った氷魔法の成功に喜ぶ。その喜びで笑みを浮かべた表情を見た父親は、ヒュッと息を飲みこんだ。
父親が娘の魔法を見たのは、彼女が赤ん坊の頃以来の事だった。
そして、自身に魔法を放たれたのは、今回が初めてだった。
あの氷塊が少しでも逸れていたら、あの扉の残骸になっていたのは自分だったかもしれない―
そんな事を考えているのか、父親は扉から目を離さなかった。
壁にねじ込んだ氷塊の、すぐ真横に立っていた母親は、飛んできた氷塊と娘を交互に見た後に気絶した。
扉を見つめたまま固まっていた父親からは、嫌な臭いが漂い始めた。
今実際に起こった出来事を認めたくないのか、何かを言おうとするも無意味に口を開いただけの父親は、結局言葉を発することなく失禁したのだった。
カトリーナは父親の失禁を目の当たりにして、心底気持ち悪くなり顔を顰める。
生まれてから14年間―初めて魔法で仕返しをした最高の気分が台無しだった。
「最悪だわ。ねぇ、そこの貴方。これ、片づけておいて」
とてつもない騒音に駆け付けたばかりの侍従に、カトリーナは命じた。
侍従は、この家の除け者であるカトリーナが、主の様に振舞っているのが気に食わなかったが、部屋の惨状を見て、直ぐに考えを改めた。
命の惜しい彼は、この場に居合わせてしまった事を後悔しながら、一人で家主の失態と部屋の後始末をすることになった。
お読みいただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
よろしければ評価★★★★★や、ブックマークも
お願いいたします。