表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/124

19.閑話~姉の笑顔が許せない妹の話~(1)

※今回はエレナ視点です。

閑話ですが長くなったので、4回に分けて投稿します。

「どうして!?なんで私が閉じ込められないといけないの!!!」


 生まれてから初めて父親に叩かれ、言う事を聞かなかった罰として、自室での謹慎を言い渡されたエレナは、自分を閉じ込めた侍女達に八つ当たりをする。


「おかしいじゃない!怒られるのも、叩かれるのも、お姉さまの役目じゃない!なんで、なんで、私がこんな目に遭うのよ!!」


 癇癪を起こすエレナを侍女たちは、困ったように宥める。


「旦那様も仰っていたでしょう。カトリーナお嬢様に近づいてはなりません」


 侍女の一人はそう言うと、顔を青くして怯えたように続けた。


「カトリーナお嬢様は恐ろしい方です。エレナ様、お願いですから言う事を聞いてください」


「この私に、偉そうな口をきくんじゃないわよ!!」


 エレナは侍女の腹を、思い切り蹴り飛ばした。




 エレナが物心ついた頃から、姉のカトリーナは両親から疎まれ、使用人たちからも見下されていた。


 カトリーナという存在は、この家にとって異質だった。


 エレナたち家族は皆、白金髪の碧眼であるのに、カトリーナは一人だけ、くすんだブラウンまじりの髪に、曇天の様な灰色の瞳。


そして、何よりも異質なのは、カトリーナ一人だけが持って生まれた、魔法の才。


エレナは、それの何が恐ろしい事なのかは分からなかったが、両親は姉の持つ魔法の才を、特に忌み嫌っていた。


 顔立ちが母親似であることが、唯一、カトリーナが自分たち家族と血のつながりがある証であった。それ以外は、同じ姉妹でありながら、何もかもが違った。


 両親の愛情も、可愛いぬいぐるみも、綺麗なドレスも、アクセサリーも、すべてエレナの物だ。姉は何も持たない、何も与えられないのが常だった。


 エレナが転んで泣けば、関係の無いカトリーナが責められ、時には折檻を受けていた。


「私は何もしてないわ!!エレナが勝手に転んだんじゃない!!」


 そう言って無実を訴える当時の幼かった姉を、父親は更に強く打った。打たれた勢いで、床に倒れたカトリーナと目が合った。


「おねえさま」


 当時のエレナは、片方の頬を腫らした姉を指差す。


「おねえさまに、いじわるされた」


 それを聞いた父親は、烈火の如く怒り、蹲るカトリーナを蹴りつづけた。


「私は嘘なんて言ってない!虐めてたり、転ばせたりなんてしていないわ!!」

「嘘をつくな!お前が虐めたんだろう!化け物のくせに性格も悪いとは、本当に救いようのない」


 幼いカトリーナは必死に「私じゃない、私じゃない」と言ったが、父親の折檻は、彼の気が済むまで終わらなかった。


 当時のエレナは、最後までその様子を見ていた。

 無実の姉を、この家で一番偉い父親が踏みにじっている。この家で一番幼いエレナの嘘を鵜吞みにして。

 

 それ以来、エレナは自分からカトリーナに近づいては「お姉さまに虐められた」と、両親や使用人に泣きつく「遊び」をした。


 大人たちは皆、エレナを庇い、カトリーナを攻撃した。


 エレナは、それが楽しくて仕方がなかった。


お読みいただきありがとうございます。

次回も読んで頂けると嬉しいです。


よろしければ、評価★★★★★や、

ブックマークもお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ