15.出会った二人~の、周りの人々~(1)
初めての船旅は何事も無く、もうじきホルムクレン公国に到着する。
カトリーナはここ数日を船室で『はじめてのまほう』を読むか、眠るかをして過ごした。
―思っていたより船の中って退屈ね。何か暇つぶしになる物を持ってくるんだったわ。
船室の窓から見える見渡す限りの海も、眺め始めてから、数時間で飽きてしまった。
「乗客の安全のため」と、部屋に鍵まで掛けられていたので船内を見回るなどして時間を潰すこともできなかったのである。
もちろん、鍵はどの部屋にも掛けられているらしく、カトリーナだけが閉じ込められているのではない。
―鍵を掛けられていると知った時は、人さらいの船かと思ったけれど・・・そんな事もなさそうだったし。
食事は毎日運ばれてくるし、船室には洗面所やお風呂まで付いている。本当に人さらいの船だったら、こんなに住みよい環境は整えないだろう。
湯船に毎日浸かれるなんて、湯浴みどころか、食事もままならない暮らしをしていたカトリーナにとっては、この上ない贅沢だった。
することもなく、うろうろと部屋を歩き回っていると、コンコンと扉がノックされる。
「どうぞ」と返事をすると、船員の男が入ってきた。
初日にカトリーナを案内した船員だ。
「カトリーナ・トレンス様。ホルムクレン公国に到着しました。降りる準備をしてください」
「わかったわ。それと、もう準備は出来ているわよ」
船員の言葉にカトリーナは荷物の纏められた旅行鞄に目をやる。あとは鞄の外ポケットに魔法書を入れたら完璧だ。
「左様ですか。では、ご案内いたします。よろしければお荷物をお運びいたします」
「ありがとう。でも、荷物は大丈夫よ。少ないし、お気に入りだから自分で持っておきたいの」
旅行鞄に魔法書を入れ、念のために忘れ物がないかをざっと部屋を確認する。
―物は少ないし、大丈夫ね。
船員の後ろについて部屋を出る。
外に出ると、すぐ目の先に港町らしき街並みが見える。
そして、船を降りた先にはカトリーナと同じくらいの年齢の子ども達が何人か固まっていた。20人以上は居る。
―あの子たちもレーム学園に行くのかしら。・・・見るからに入学条件に身分は全く関係無さそうね。
子ども達の身なりは様々だ。
明らかに身分の高い令嬢の元には数人の大人の使用人が付き従っている。
見るからに何度も手直しされたシャツを着てキョロキョロとしている少年は、小汚い袋を携えただけだった。
船員の手を借りてカトリーナも彼らの元に降りる。
どうやらカトリーナが最後に船を降りた者のようだった。
「―揃いましたね。ここからは馬車での移動になります。そして、付き添いの方のご同行はここまでとなります」
一人の青年が子どもたちに、そして付き添いの大人たちに声をかける。
青年は厳かなローブを羽織っており、絵本で見たような魔法使いを彷彿とさせた。
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