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12.山奥での顛末~魔法書の救い~

―どうか、どうかお願いします。


 祈るように念じたカトリーナに答えるように、魔法書が手を離れパラパラとページが自然に捲れ、あるページで止まった。


 開かれたページに目を落とすと、そこには何も書かれていない。


―白紙?何周も読んだけど、白紙のページなんてなかったはず。それに、念じた結果が白紙ってどういうこと?助けてくれるっていうのは嘘だったの!?


 カトリーナは愕然とした。

 頼みの綱である魔法書に裏切られたのだ。これからどうすれば良いのだろう。


―そんな、とても親切な方から貰ったから信じていたのに!やっぱり私に、本当に優しい人なんて居ないんだわ。


 カトリーナの瞳から涙が零れ、白紙のページに綺麗な丸をつくる。


 すると―


〈やれやれ、此度の持ち主はせっかちだねぇ。決めつけるのが早いんじゃないかい?〉


 白紙のページに文章が浮かび上がった。

 思わず凝視したカトリーナの目の前で、新しい文章が紡がれる。


〈泣いている暇はないよ。まずは、そこの男の蘇生が先だ。急いで〉


「蘇生って、どうすれば良いの?」


〈奴はまだ溺れている状態だ。まずは男の顔を横にして―〉


 白紙のページに蘇生の方法が書き連ねられる。

 カトリーナは初めて知るが、魔法とは関係の無い心肺蘇生の方法だ。


 その方法に忠実に、夢中で自分を殺しに来た男の救出に勤しむ。


 それでも


―魔法書なのに、魔法で助ける方法は教えてくれないのかしら。


という疑問が浮かびはした。


 暗殺者の容態がなんとか回復すると


〈男はもう大丈夫だ。そのまま地面にでも転がしておくと良い〉


という文章が現れる。


〈もうすぐページが無くなる。次に進む。君をこれから船に送る魔法だ〉


〈文章はこれで最後になる〉


〈この文章の後に現れる風景画に手をかざし、「ここに行きたい」と念じるんだ〉


〈風景は君の本来の目的地だ。念じて気づいた時には、君は無事に船の中〉


〈では健闘を祈るよ。頑張って〉


 最後の文章の後に、どこか海の広がる風景が浮かび上がる。おそらく、この場所からレーム学園のあるホルムクレン公国に向かうのだろう。


―さっきも上手くいったから今度も成功するはずよ。


 カトリーナは船に乗ってレーム学園に向かう自分を想像する。ようやく、本当に旅立ちを始められそうだ。


 メモに一言書き留めて、平常心を取り戻したカトリーナは、緊張した面持ちで、その場所に手をかざす。


 念のためにもう片方の手で旅行鞄を握りしめた。


―ここへ行きたい。今すぐに!


-----------------------


 気が付くと目の前に海が広がっていた。


「よかったです。出向時間ぎりぎりでしたが、間に合いました」


 呆けているカトリーナに、船員が声をかける。


「カトリーナ・トレンス様ですね。お待ちしておりました」


お読みいただきありがとうございます。

次回も読んでいただけると嬉しいです。


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