表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/124

10.山奥での顛末~手加減が出来ないのも考えもの~

話を遡り、どこかの山奥にて―


 カトリーナの元にナイフを持った男が迫っていた。けれども、カトリーナは少しも慌てなかった。


 ここ数日は何事も無かったが、少し前までは何度も命を狙われていたのだ。今更、驚くことでも無い。


―本当にお父様たちって無駄な事しかしないわね。


 カトリーナは舌打ちをしつつも、得意の水魔法で対抗する。男はすんなりと捕まり、危なげなく馬車から追い出すことが出来た。


「マジかよ!」


 ナイフを落とした男が悲鳴を上げる。


「ただのお嬢様じゃねぇのかよ!魔法士とか聞いてねぇぞ!!」


 男の悲鳴にカトリーナはニヤリと嗤う。

 もちろん、魔法が解けない様に気を付けながら。


「貴方、お父様に騙されたのね。大方、私が魔法を使える事なんて一言も説明しなかったんでしょう?」

「あぁ、そうだ!俺は騙されたんだよ!頼む、見逃してくれ!!」


 命乞いをする男にカトリーナは心底呆れる。


「嫌よ。何で自分を殺しに来た人に優しくしなきゃいけないの?私が「ただのお嬢様」だったら、何の躊躇いもなく殺して報酬を貰っていたくせに」


 カトリーナは「ふふっ」と笑みを溢す。


「ちなみに私は()()魔法士じゃないわ。これからなる予定だけどね」

「一緒じゃねぇか!!!」


 男の命懸けの突っ込みを聞き流し、カトリーナは思案する。


―貴族のくせにお父様がケチで助かったわ。きっと私が魔法を使える事を話して引き受けた暗殺者なら、今の私じゃ敵わなかったかもしれないもの。


 暗殺を頼んだ事の無いカトリーナはちゃんとは知らなかったが、子どもとは言え魔法の才を持つ者の暗殺依頼は、そうじゃない人の依頼よりも高額だ。


 トレンス伯爵は、自分たちの平穏のためとはいえ「お金をカトリーナに使う」という行為に拒否感が強く、高額な報酬を支払いたくなかったのである。


「ちくしょう!こんなガキにやられるなんて!」


 男の嘆きを聞き飽きたカトリーナは、そろそろ終わらせようと、最も確実に相手が「動かなくなる」魔法を使った。


 何時ぞやの時にも使った、水球の中で窒息死させる魔法だ。


「さようなら」

「ま、待って、ゆる―」


 最後まで言う事も出来ずに男は水球に飲み込まれる。


 ごぼごぼごぼ……

 苦悶の表情を浮かべながらもがく男を、馬車の淵に腰掛けて眺めた。


 が、ここでカトリーナはあることに気が付く。


―あれ?そういえばここって伯爵領なのかしら?違ったら不味いかも?


 以前カトリーナが伯爵家の侍女達を脅した通り、自領の平民を貴族が殺しても、その貴族は罪を問われない。


 しかし、それはあくまでも「自領」での話だ。

 今カトリーナがいる山奥が伯爵領ではなかった場合、貴族のカトリーナとて殺人の罪を問われるのだ。


 暗殺者から身を守ったのだと説明しても・・・


―あの親達は馬鹿だけど、この機を逃す筈はないわ。自分たちが殺そうとしたことを棚に上げて、私の正当防衛の主張を握りつぶすかもしれない。出来るのかは知らないけれど。


 ここで男が死ぬのは不味いと判断したカトリーナは、慌てて水球から男を開放する。


 あと一歩であの世行きだった男は、ゲホゲホと水を吐き出したかと思えば、ビクビクと全身を痙攣させて地面に転がった。


 まだ、生きてはいるがもう手遅れかもしれない。


 カトリーナはここに来て途方に暮れた。もちろん、男の心配ではなく、自身の保身について頭を悩ませる。


―どうしよう、医学の知識なんて知らないし。それに、どうやってここから港まで行けばいいのかしら・・・。


 馬車を動かそうにも、カトリーナに馬を操る術はない。悩んだ末にカトリーナは、馬車に置きっぱなしの旅行鞄の中を探った。


―まだ取って置きたかったけど、やってみるしかないわね。


お読みいただきありがとうございます。

次回も読んでいただけると嬉しいです。


よろしければ評価★★★★★や、ブックマークも

お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ