自意識過剰な人のお話
朦朧とした意識の中で確認したスマホのアラーム。
もう何度止めただろうか、そんなことを考えながら今度はまじまじと見た。
九時だ。
「今日は何曜日だっけ、」焦って冷や汗をかきながら母親に問いかける。
母はまんざらでもないように「休日では、ないわね」なんて言うから私はイラっとした。
新学期だっていうのに遅刻なんてできるわけない、
その一心で制服に着替えて鞄を背負った。いつものように中身を確認する暇なんてない。
かかとを潰しながら新品のローファーを履いて学校へ出発した。
学校までは走って10分はかかる。着席のチャイムが鳴るのは15分後。
余裕なんてないけれど、風で崩れそうな前髪だけは押さえながら全力疾走。
さながら風のごとく、その美しさは蝶のようである。
なんて頭の片隅で考えながらもビルとビルの間をぐんぐんと突っ走る。
「いける、これなら」
自信がついてきた私に勝るものはない。
しかし、その思考のせいか履きなれないローファーのせいかはわからないがうっかりつまずいた。
焦って閉めた鞄から教科書が散らばってしまった。
「はあ、なんてついていないんだろ、私」
先ほどまでの自信とは裏腹に抑えていた不満がつい口に出てしまった。
「大丈夫ですか」
そう声をかけてくれたのは私と同じ校章のの制服を着た男の子だった。