伯爵令嬢
伯爵令嬢カルーナとは、三年の付き合いがあった。とても仲の良い関係とは呼べない。何故ならわたくしの幼馴染を奪おうとしていたのだから。
それからは険悪になる一方で疎遠になっていた。なのに、この謎のお屋敷で再会するなんてね。
カルーナは、可愛らしい赤いドレスに身を包んでいた。不機嫌そうにわたくしを睨み、状況把握に努めていた。
「教えて、ソフィ。このお屋敷は何なのです! お庭には高い壁……あれは何なのですか」
「わたくしも気づいたらこの場所にいたの。だから、よく分からないわ」
「そう。……とにかく、状況から察するに閉じ込められたって事ですね。でも、最低限の生活は保証されているようですし……監禁なのか軟禁なのかも理解しがたいですね」
ギリッと歯ぎしりするカルーナは落ち着かない様子だった。一方のジークムントは静かに紅茶を淹れていた。
「どうぞ、カルーナ様」
「ありがとう、ジークムント」
「え……まって、カルーナ。ジークムントの事を知っているの?」
「ええ、北の扉はわたしの居た部屋なのです。そこで意識を取り戻した時にジークムントとは会っているのですよ。けれど、わたしは一人で考えたくて部屋に閉じこもっていたのです」
そっか、それで北の扉は鍵が掛かっていたのね。となると『東の扉』も誰かいる可能性があるのかも。気になる……。
「ちなみに、東の扉は開けたの?」
「分かりません。今は自分の事で精一杯なので……」
「そう。では、三日間を一緒に過ごすしかないようね」
「らしいですね。でも、三日後に誰が迎えに来るのでしょう?」
「さあ……? ジークムントは何か分からない?」
わたくしが聞くと彼は考える素振りを見せ、けれど首を横に振った。
「お力になれなくて申し訳ありません」
「いえ、いいのよ。……でも、東の扉が気になるから、ノックするか無理やり抉じ開けるか……してみましょう」
二人に確認を取ると、ジークムントは同意。カルーナは青ざめていた。
「危険かもしれませんよ、ソフィ。罠があったらどうするのです」
「……そうね、お屋敷を抜け出せばこの首輪で猛毒を注入されるらしいし。でもね、脱走を試みるわけでもないし、問題はないはずよ」
「……分かりました。確認するだけですよ」
「ええ」
東の扉を確認する事にした。
四人目がいるのかな……?